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夏休みに行く父方の家の近くに、古い神社があった。
朽ちて廃墟に近いのだが、建物が壊れているということはなかった。
参拝する人もなく、周りの住人も放置していた。
そんな中、僕の高校生になる姉が言った。
「あの神社、汚くてかわいそうだね。きれいにしてあげよう」
弟の僕が言うのもなんだが、姉は信心深いわけでも気が優しいわけでもない。
ただ気まぐれなだけだ。
周りの大人に何も言わずに、姉は神社の掃除を始めた。
僕は最初見ていたが、やがて飽きてしまって一人で帰った。
その日姉はなかなか帰ってこず、みんなで探そうと言い始めた時、泥だらけの姿で帰ってきた。
「どうしたの」
の母の問いに姉は「遊んでたの」とだけ言った。
次の日、姉は朝早くから出かけていった。
しばらくして神社に行ってみると、姉がそれこそ必死の形相で本殿そばの雑草を抜いていた。
「姉ちゃん」
声をかけたが返事がない。
近づいて肩をゆすって見ても、反応がない。
ただひたすら草を抜いている。
まるでなにかに取り付かれたようだ。
僕は怖くなって小走りで帰った。
その日も姉は遅くに帰ってきて「遊んでたの」と一言だけ言った。
僕も両親も気づいた。
姉の様子がおかしい。
ご飯を食べている時もそれ以外も心ここにあらずと言った感じで、ぼうとしている。
声をかけてもまともに答えない。
父も母も娘を心配げに見ていた。
次の日も姉は早くに出かけた。
母が僕に聞いた。
「あんた、なんか知らないの」
僕は姉が神社の掃除をしていると言った。
それを聞いた母が父に、父が祖父に言った。
「こりゃいかん」
慌ててそういう祖父を筆頭にみなで神社に行くと、姉は神社の外壁を、それこそ鬼の形相で布でふいていた。
祖父の号令の下、みんなで暴れる姉を家に連れて帰った。
家に帰ると姉は物置のように静かになった。
すると祖父がどこかに連絡を入れた。
次の朝、神社にむかおうとして激しく暴れる姉を、祖父と父と母でおさえこんだ。
そのまま数時間が経った頃、姉が急に大人しくなった。
そしてきょろきょろと周りを見わたし「えっ、私どうしたの。何があったの」と言った。
その時祖父の携帯が鳴った。
相手と話し終えた祖父が言うには、知り合いの土建屋に頼んで、神社を壊してもらったそうだ。
終
朽ちて廃墟に近いのだが、建物が壊れているということはなかった。
参拝する人もなく、周りの住人も放置していた。
そんな中、僕の高校生になる姉が言った。
「あの神社、汚くてかわいそうだね。きれいにしてあげよう」
弟の僕が言うのもなんだが、姉は信心深いわけでも気が優しいわけでもない。
ただ気まぐれなだけだ。
周りの大人に何も言わずに、姉は神社の掃除を始めた。
僕は最初見ていたが、やがて飽きてしまって一人で帰った。
その日姉はなかなか帰ってこず、みんなで探そうと言い始めた時、泥だらけの姿で帰ってきた。
「どうしたの」
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終
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