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目が合ってもなんのリアクションもない。
顔のパーツがなに一つ動くことがない。
まるで人形のようだと正也は思った。
「やっぱりここの人たち、なんか変だわ。ほんと気味が悪いわ」
みまがそう言った。
それにたいして誰も口を開くことはなかったが、反論しなかったと言うことで、みんな想いは同じなのだろう。
「すこし暗くなってきたな」
陽介が言った。
「どうする、次は?」
陽介の問いにみまが答えた。
「とりあえず、寝るところを探さないと」
「車の中しかないんじゃないか」
正也は陽介の言う通りだと思った。
異様な異世界に迷い込んだような状況で、人間味が欠落した見知らぬ村人の家になんか泊まりたくはない。
かと言って野宿では動物や虫がいそうだし、安全とは言えないだろう。
おまけに不衛生だ。
まだ二十歳にもなっていない女の子が二人もいるし。
野宿と言う選択は、村人の家にとまると言うことにも負けないくらいにありえない、と正也は考えた。
「そうね」
「それがいいかもしれないわね」
「それしかないだろうな」
話は決まった。
みまの提案で、とりあえずつぎはその辺りの田畑を調べていると、あたりが真っ暗になった。
民家の窓から明かりが漏れてはいるものの、道には街灯など一つもない。
かなり暗い。歩くには暗すぎる。
「近くに川もあるし、用水路や水のはった田んぼもある。これ以上の捜索はやめて、今日のところは車に戻ろう」
正也がそう言い、みんな車に戻った。
戻った後はまた無言。
みんな疲れているし、特に言うべきことなどない。
楽しく世間話をするような空気も微塵もないのだ。
まだ午後八時前だ。
朝の遅い大学生にとっては、寝るにはまだ早いと言うか、これからお楽しみの時間なのだが、正也はいつしか眠りについてしまっていた。
正也は夢を見た。
正也が夢を見たのは久しぶりだった。
普段は夢などほとんど見ないというのに。
夢の中で正也はなにかに追われていた。
しかし自分を追って来るものの正体。
それははっきりとはしなかった。
正也がわかっていたのは自分を追ってくるものが二ついるということだった。
一つはその姿を完全に見たわけではなく、ほんの一瞬目の隅に現れただけだが、一応人型と思えるなにかだ。
それが数体追ってきていた。
すぐ近くまで追ってきているのに、その姿がよくは見えなかったが、数体の何かに追われていることだけはわかった。
あと一応人型だが、人間ではないことも感じていた。
でももそれがなんなのかは、やはりわからない。
もう一つはこれまたまるでわからないが、とてつもなく大きなもの。
これは全く目で見ることはできなかったが、その膨大な質量だけは感じ取ることができた。
その正体は不明だが、その大きさは半端ではなく、正也はまるで山そのものに追われているかのような気がした。
その上それが生物なのか非生物なのかさえつかみとれないもの。
ただそんなものに追われている実感だけがリアルにあった。
そして夢の中で正也は感じていた。
追いつかれればどちらも命がないと。
相手の正体もわからないのに、それだけは正也にはっきりとわかった。
正也はそれこそ必死で逃げた。
逃げて逃げて逃げまくった。
しかしどちらかなのかはわからないが、二つのうちの一方に追いつかれそうになった。
正也は捕まれば死ぬと思っていた。
死にたくないと必死で逃げた。
でもそれは正也のすぐそこまで来ていた。
もうだめだ。
そこで目が覚めた。
見れば車の中。
他の三人はまだ寝ている。
正也は全身に汗をかいていた。
東の空が少しばかり明るくなっていた。
正也は考えていた。
さっきの夢はなんだったんだろうかと。
普段夢なんてあんまり見ないし、見てもそれについてあれこれ考えたことはなかった。
しょせん夢だ。
たまに見てもいつもおぼろげで実感など全くない。
しかしさっき見た夢、追われている間、とてつもない現実感があったのだ。
まるで現実味のないものに追われていたと言うのに。
身が凍るほどの恐怖も思いっきり味わった。
顔のパーツがなに一つ動くことがない。
まるで人形のようだと正也は思った。
「やっぱりここの人たち、なんか変だわ。ほんと気味が悪いわ」
みまがそう言った。
それにたいして誰も口を開くことはなかったが、反論しなかったと言うことで、みんな想いは同じなのだろう。
「すこし暗くなってきたな」
陽介が言った。
「どうする、次は?」
陽介の問いにみまが答えた。
「とりあえず、寝るところを探さないと」
「車の中しかないんじゃないか」
正也は陽介の言う通りだと思った。
異様な異世界に迷い込んだような状況で、人間味が欠落した見知らぬ村人の家になんか泊まりたくはない。
かと言って野宿では動物や虫がいそうだし、安全とは言えないだろう。
おまけに不衛生だ。
まだ二十歳にもなっていない女の子が二人もいるし。
野宿と言う選択は、村人の家にとまると言うことにも負けないくらいにありえない、と正也は考えた。
「そうね」
「それがいいかもしれないわね」
「それしかないだろうな」
話は決まった。
みまの提案で、とりあえずつぎはその辺りの田畑を調べていると、あたりが真っ暗になった。
民家の窓から明かりが漏れてはいるものの、道には街灯など一つもない。
かなり暗い。歩くには暗すぎる。
「近くに川もあるし、用水路や水のはった田んぼもある。これ以上の捜索はやめて、今日のところは車に戻ろう」
正也がそう言い、みんな車に戻った。
戻った後はまた無言。
みんな疲れているし、特に言うべきことなどない。
楽しく世間話をするような空気も微塵もないのだ。
まだ午後八時前だ。
朝の遅い大学生にとっては、寝るにはまだ早いと言うか、これからお楽しみの時間なのだが、正也はいつしか眠りについてしまっていた。
正也は夢を見た。
正也が夢を見たのは久しぶりだった。
普段は夢などほとんど見ないというのに。
夢の中で正也はなにかに追われていた。
しかし自分を追って来るものの正体。
それははっきりとはしなかった。
正也がわかっていたのは自分を追ってくるものが二ついるということだった。
一つはその姿を完全に見たわけではなく、ほんの一瞬目の隅に現れただけだが、一応人型と思えるなにかだ。
それが数体追ってきていた。
すぐ近くまで追ってきているのに、その姿がよくは見えなかったが、数体の何かに追われていることだけはわかった。
あと一応人型だが、人間ではないことも感じていた。
でももそれがなんなのかは、やはりわからない。
もう一つはこれまたまるでわからないが、とてつもなく大きなもの。
これは全く目で見ることはできなかったが、その膨大な質量だけは感じ取ることができた。
その正体は不明だが、その大きさは半端ではなく、正也はまるで山そのものに追われているかのような気がした。
その上それが生物なのか非生物なのかさえつかみとれないもの。
ただそんなものに追われている実感だけがリアルにあった。
そして夢の中で正也は感じていた。
追いつかれればどちらも命がないと。
相手の正体もわからないのに、それだけは正也にはっきりとわかった。
正也はそれこそ必死で逃げた。
逃げて逃げて逃げまくった。
しかしどちらかなのかはわからないが、二つのうちの一方に追いつかれそうになった。
正也は捕まれば死ぬと思っていた。
死にたくないと必死で逃げた。
でもそれは正也のすぐそこまで来ていた。
もうだめだ。
そこで目が覚めた。
見れば車の中。
他の三人はまだ寝ている。
正也は全身に汗をかいていた。
東の空が少しばかり明るくなっていた。
正也は考えていた。
さっきの夢はなんだったんだろうかと。
普段夢なんてあんまり見ないし、見てもそれについてあれこれ考えたことはなかった。
しょせん夢だ。
たまに見てもいつもおぼろげで実感など全くない。
しかしさっき見た夢、追われている間、とてつもない現実感があったのだ。
まるで現実味のないものに追われていたと言うのに。
身が凍るほどの恐怖も思いっきり味わった。
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