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しかも明らかに異様な空間であるこの村。
その村で見た夢だ。
現実感がありすぎたこともあり、見た夢になにか意味があるのではと考えたのだ。
夢の中で追ってきたのは二つだった。
それははっきりしている。
一つは一応人型らしきもの。
数は数体いたようだが、これがいったいなんなのか。
人でないことはわかったが、それ以上のことがまるでわからない。
その姿かたちも。
しかもそんな訳の分からないものが数体もいるのだ。
そしてもう一つは、とてつもない質量をもつもの。
その大きさは山にも匹敵する。
数は一つと思われるが、そんなとんでもないものにも追われていたのだ。
しかも人型ではないどころか、生物なのかそうでないのか、意志を持つものなのかそうでないのかもわからない。
つまりほとんどなにもわからないのだ。
――ほんと、どういうことだよ。嫌な夢を見てしまった。
気が滅入る。
この村はいるだけで、気が滅入るのだ。
随分と長く考えていると、となりのみまが目を覚ました。
「あっ、正也、おはよう」
「おはよう、みま」
「あんなことがあったと言うのに、すっかり寝てしまったわ。あったと言うより、今も続いているんだけど」
「そうだな、今も続いているな。ところでみま」
「なあに?」
「寝ている時に、なにか夢を見たかい」
「夢? うーん、なんにも見てないわ。でもどうしてそんなことを聞くの?」
「いや、なんでもないよ。ただなんとなく聞いてみただけさ」
「ふーん、変なの」
正也は自分の見た夢のことはみまには話さない方がいいと思った。
ただでさえ日常じゃありえないほど不安な状況なのに、夢なんかの話でみまをさらに不安にはさせたくはない。
みまが自分の髪をくんくんと嗅ぎ出した。
「どうした」
「正也、のど乾いてない、お腹すいてない」
「いや全然、のどは乾かないし、お腹もすいていない」
「昨日たくさん歩き回って、汗もいっぱいかいたわね。今はもうすぐ初夏だし」
「そうだな。随分つかれたし汗もかいた」
「それで、正也もそうだと思うけど、私も昨日の朝にご飯を食べてお茶を飲んでから、一切飲み食いしてないわ。でも全然のども乾かないし、お腹もすかない。そして昨日、たくさん歩き回ってたくさん汗をかいたわ。でも私の髪、全然臭くないのよ。まるで風呂上りみたいに。ほんと、不思議だわ」
みまは自分の長い髪をつかんで、正也の前に出した。
正也が臭いをかいでみると、その髪はいい臭いがした。
汗臭さはまるでない。
「本当だ。これはどういうことだ?」
「歩けば汗もかくし、疲れるわ。眠くもなるし、実際いつもよりも長い時間寝てたわ。でものどは乾かないしお腹もすかない。おまけに風呂に入らなくても身体が臭くならない。これっていったいどういうことなのかしら」
正也は自分の服に触ってみた。
ついさっき汗だくで目覚めたと言うのに、服はすっかり乾いている。
しかも汗臭くもないのだ。
正也は考えた。
考えて考えて。
その間みまは黙って正也を見ていた。
そして正也は一つの結論を出した。
「全てではないが、身体の反応からして、この村では時というか時間の流れが止まっている、あるいはリセットされていると言うことなんじゃないかと思うんだが」
「そうね、私もそう思ったわ。少なくともいくら動いても時間が経っても、のども乾かないしお腹もすかないのはそう言うことではないかとおもうの。でも疲れるし、眠たくもなる。しかし身体はずっと風呂上りみたい。訳が分からないし、その基準も線引きもわからないけど、どこかの部分で時間が止まったりリセットされている。それが今の私たちの体に反映されていると考えた方がいいような気がするわ」
「そうだな。今はそれくらいしか思いつかないけど、それほど間違っているとも思えないな」
「飲み物も食べ物もいらないし、お風呂にも入らなくていい。このある意味サバイバル的な状況の中ではとてもありがたいことだわ。そういえば、昨日の朝からトイレにも行ってないわ」
「俺もだ」
正也がそう言うと、みまが少しだけ笑った。
わずかの笑いだが、正也は少しほっとした。
「うーん」
陽介の声だ。
どうやらようやく目が覚めたようだ。
「うん、朝か。おはよう」
「おはよう」
「おはよう」
いつのまにかさやかも起きていた。
黙ったまま、あたりを見回している。
正也とみまの会話をどこまで聞いていたのかわからないが。
聞かれて困ると言う話ではないのだが、正也はなんとなくさやかには聞いてほしくはないと思った。
「とりあえず、朝だな」
陽介が言う。
「で、また調査するかい?」
「するわよ。当然でしょ」
とみま。
「そうだろうな。俺も早く家に帰りたいから反対はしないが。でも正直に言うと、ちょっと面倒くさいな」
「どう思おうと、一緒に調査してくれるんなら、それでいいわよ」
「はいはい、全くその通りだよな」
「そういえば、私お腹がすいてない」
急にさやかが言った。
「俺もだ」
と陽介。
その村で見た夢だ。
現実感がありすぎたこともあり、見た夢になにか意味があるのではと考えたのだ。
夢の中で追ってきたのは二つだった。
それははっきりしている。
一つは一応人型らしきもの。
数は数体いたようだが、これがいったいなんなのか。
人でないことはわかったが、それ以上のことがまるでわからない。
その姿かたちも。
しかもそんな訳の分からないものが数体もいるのだ。
そしてもう一つは、とてつもない質量をもつもの。
その大きさは山にも匹敵する。
数は一つと思われるが、そんなとんでもないものにも追われていたのだ。
しかも人型ではないどころか、生物なのかそうでないのか、意志を持つものなのかそうでないのかもわからない。
つまりほとんどなにもわからないのだ。
――ほんと、どういうことだよ。嫌な夢を見てしまった。
気が滅入る。
この村はいるだけで、気が滅入るのだ。
随分と長く考えていると、となりのみまが目を覚ました。
「あっ、正也、おはよう」
「おはよう、みま」
「あんなことがあったと言うのに、すっかり寝てしまったわ。あったと言うより、今も続いているんだけど」
「そうだな、今も続いているな。ところでみま」
「なあに?」
「寝ている時に、なにか夢を見たかい」
「夢? うーん、なんにも見てないわ。でもどうしてそんなことを聞くの?」
「いや、なんでもないよ。ただなんとなく聞いてみただけさ」
「ふーん、変なの」
正也は自分の見た夢のことはみまには話さない方がいいと思った。
ただでさえ日常じゃありえないほど不安な状況なのに、夢なんかの話でみまをさらに不安にはさせたくはない。
みまが自分の髪をくんくんと嗅ぎ出した。
「どうした」
「正也、のど乾いてない、お腹すいてない」
「いや全然、のどは乾かないし、お腹もすいていない」
「昨日たくさん歩き回って、汗もいっぱいかいたわね。今はもうすぐ初夏だし」
「そうだな。随分つかれたし汗もかいた」
「それで、正也もそうだと思うけど、私も昨日の朝にご飯を食べてお茶を飲んでから、一切飲み食いしてないわ。でも全然のども乾かないし、お腹もすかない。そして昨日、たくさん歩き回ってたくさん汗をかいたわ。でも私の髪、全然臭くないのよ。まるで風呂上りみたいに。ほんと、不思議だわ」
みまは自分の長い髪をつかんで、正也の前に出した。
正也が臭いをかいでみると、その髪はいい臭いがした。
汗臭さはまるでない。
「本当だ。これはどういうことだ?」
「歩けば汗もかくし、疲れるわ。眠くもなるし、実際いつもよりも長い時間寝てたわ。でものどは乾かないしお腹もすかない。おまけに風呂に入らなくても身体が臭くならない。これっていったいどういうことなのかしら」
正也は自分の服に触ってみた。
ついさっき汗だくで目覚めたと言うのに、服はすっかり乾いている。
しかも汗臭くもないのだ。
正也は考えた。
考えて考えて。
その間みまは黙って正也を見ていた。
そして正也は一つの結論を出した。
「全てではないが、身体の反応からして、この村では時というか時間の流れが止まっている、あるいはリセットされていると言うことなんじゃないかと思うんだが」
「そうね、私もそう思ったわ。少なくともいくら動いても時間が経っても、のども乾かないしお腹もすかないのはそう言うことではないかとおもうの。でも疲れるし、眠たくもなる。しかし身体はずっと風呂上りみたい。訳が分からないし、その基準も線引きもわからないけど、どこかの部分で時間が止まったりリセットされている。それが今の私たちの体に反映されていると考えた方がいいような気がするわ」
「そうだな。今はそれくらいしか思いつかないけど、それほど間違っているとも思えないな」
「飲み物も食べ物もいらないし、お風呂にも入らなくていい。このある意味サバイバル的な状況の中ではとてもありがたいことだわ。そういえば、昨日の朝からトイレにも行ってないわ」
「俺もだ」
正也がそう言うと、みまが少しだけ笑った。
わずかの笑いだが、正也は少しほっとした。
「うーん」
陽介の声だ。
どうやらようやく目が覚めたようだ。
「うん、朝か。おはよう」
「おはよう」
「おはよう」
いつのまにかさやかも起きていた。
黙ったまま、あたりを見回している。
正也とみまの会話をどこまで聞いていたのかわからないが。
聞かれて困ると言う話ではないのだが、正也はなんとなくさやかには聞いてほしくはないと思った。
「とりあえず、朝だな」
陽介が言う。
「で、また調査するかい?」
「するわよ。当然でしょ」
とみま。
「そうだろうな。俺も早く家に帰りたいから反対はしないが。でも正直に言うと、ちょっと面倒くさいな」
「どう思おうと、一緒に調査してくれるんなら、それでいいわよ」
「はいはい、全くその通りだよな」
「そういえば、私お腹がすいてない」
急にさやかが言った。
「俺もだ」
と陽介。
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