深き水の底に沈む

ツヨシ

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みまも正也も普段はわりとしゃべる方なのだが、特に正也はここに来てからどんどん口数が少なくなっている。
そういう精神状態なのだ。
誰もなにも言わないまま、誰も帰るとも言っていないのに、そのまま洞窟に帰った。
帰ってからも、みな無言のままだ。
ただ座っているだけ。
そしてやがて外が暗くなっていき、三人は一言も発することなく眠りについた。
のども乾かないし腹もすかないが、疲れだけはこの身に重くのしかかってくるのだ。
正也は横になった途端、秒で寝てしまった。
夢も見なかった。

またいつもの朝がやって来た。
正也が目覚めると、はるみもみまももう起きていた。
そのまま洞窟の床に座る。
今日はどうしようか、なにをしようかと正也が考えていると、はるみが言った。
「今日も調査するわよ。この村を。昨日お坊さんが言っていたでしょう。バランスが崩れたかもしれないって。いったいどういう風にバランスが崩れたのか、本当にバランスが崩れているのか、それをこの目で確かめるのよ。いいでしょう」
もちろん異論はない。
なぜ起きた時にそのことが頭に浮かばなかったのだろうと、正也は思った。
この異常な環境のために、頭がまともに働いていないのかもしれない。
――いかん、いかん、女子二人がこんなにもしっかりしていると言うのに。
気を引きしめなければならない。
正也はそう思った。

村に入った途端に、川向うに化け物がいるのが見えた。
「あれだけ離れていれば安心だわ」
はるみがそう言い、三人とも化け物を無視して歩く。そのうちに化け物は消えてしまった。
そのまま歩いていると、二体の地蔵と二台の車が並んでいるところに来た。
陽介の車は、これ以上ないほどにぼろぼろだった。
狂った四人の暴力性を示しているかのように。
正也はスポーツカーの方を見て見た。
するとスポーツカーにはキーがついたままだった。
運転手はキーを抜かずに四人で民家の方に行ったのだ。
正也がキーを回すとエンジンがかかった。
ガソリンもまだたっぷりとあるようだ。
陽介の車はもう使えないが、いざという時に、この車が閊えるかもしれないと正也は思った。
そんな時が来ればいいのだがと考えながら、正也は車のキーを抜き、ポケットに入れた。
女子二人はそれを見ていたが、正也の考えを察したのか、なにも言わなかった。
再び歩き出す。
すると進行方向の道の上に、また化け物が姿を見せた。
なにもない空間からいきなり現れたのだ。
しかしそれなりの距離があった。
こちらを見ているようだが、立ち止まって見ていると、これまた消えた。
そのまま下りの山道に着いた。
正也がどうしようかと考えていると、はるみが言った。
「とりあえず、一回村を往復してみましょうか。なんか気になることがあるし」
はるみがユーターンをして歩き出す。
みまが続く。
もちろん正也も。
そのまま歩いていると、川向うにまた化け物が現れた。
はるみがそれを見て小さくなにかをつぶやいたが、正也には何を言っているのかわからなかった。
そのまま化け物を無視して歩いていると、その化け物もやがて消えた。
「一旦洞窟に戻りましょうか」
はるみがそう言うので、その通りにすることにした。
そのまま歩いていると、道の少し先にまた化け物が現れた。
三人で立ち止まって見ていると、はるみがまたつぶやいた。
今度は正也にも聞こえた。はるみは「バランスが崩れるとは、こう言うことなのね」と言ったのだ。
目の先に現れた化け物だが、見ているとそいつも消えた。
そのまま洞窟へと向かう。
洞窟に着くまでに、化け物はもう現れなかった。
中に入る。
そして座った途端にはるみが言った。
「やっぱりバランスが崩れたんだわ」
「どういうことなの?」
みまの問いにはるみが答える。
「私はここに来てある程度時間が経っているし、化け物も何度も見てきたわ。でも一日に二体以上見たのは、あの四体同時に出てきたときが初めてだったわ。もちろんランダムに出てくるから、出てきても私が気がつかないこともあるんだろうけど。あんな短い時間に立て続けに出て来るなんてことは、これまでなかったことだわ」
「しかも今見たのは四体だった」
正也がそう言うと、はるみが言った。
「そう四体よ。あの四人を喰ったのも四体。今日立て続けに出てきたのも四体。と言うことは……」
「ということは……」
みまが言うと、はるみが興奮気味に言った。
「今までは化け物が一体しかいなかったんだわ。それが四人を殺すために、四体に増えたのよ。そして今もそのまま、四体いるんだわ」
「それがバランスが崩れると言うことなのね」
「住職もバランスが崩れるかもしれないと言ってたけど、四体同時に出てきた時点で、もうバランスが崩れていたのね。あの化け物の数が今までの四倍になった。と言うことは、これまでよりも喰われる確率が四倍になったと言うことよ」
正也はめまいがしそうだった。
一体でも充分なくらいの脅威なのに、それが四体に増えているとは。
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