1 / 7
1
しおりを挟む
木梨誠一がそれを初めて見たのは中学生の時だ。
急に金縛りにあった。
金縛りにあったのはその時が初めてだった。
すると真っ暗だったはずの周りがうっすらと明るくなり、そして出てきた。
黒い人の影。
どうやら成人男性のようだが、影だけなのでその容貌はよくわからなかった。
――ひえっ!
怖いが身体が全く動かない。
目も思うように閉じられないのだ。
影は木梨の顔を覗き込んだ。
そしてぶつぶつと何かを言っている。
しかし声が小さすぎて、何を言っているのかわからない。
しばらく影はそうしていたが、不意に消えた。
周りも真っ暗な空間に戻った。
――なんだ、今のは。
木梨は動けるようになっていた。
暑くもないのに木梨は汗だくだった。
それ以来、時折金縛りにあい、影を見るようになった。
影はいつも木梨を覗き込み、何かを言うのだ。
しかし毎回何を言っているのかがわからない。
木梨は怖かったが、誰にも影のとこは言わなかった。
母一人、子一人。
木梨は母子家庭だった。
父は木梨が生まれてすぐに死んでしまった。
それは事故というよりもほぼ殺人に近い。
父はトラックにひかれた。
ひかれてもまだ生きていた父を、トラックの運転手はわざわざ山の中に運び、放置したのだ。
見つけたのは山菜取りに来ていた親子だった。
検死の結果、山の中に捨てられても父は数日間生きていて、苦しみながら死んだのだそうだ。
出血はほぼなかったが、両手両足骨折に、内臓も損傷していたようだ。
しかしすぐに病院に運べば、助かっていたと言う。
運転手はその後逮捕され、重い罰を受けた。
十四年前のことだが、今でも刑務所にいる。
そういうことがあったので、木梨の家庭には木梨以外は母しかいない。
そんな状況で、母に余計な心配をかけたくなかったのだ。
時折影に悩ませられながらも、木梨は中学を卒業して高校生になった。
そして入学してしばらく経ったある夜のこと。
また金縛りにあった。
辺りがぼんやりと薄明るくなり、そして影が出てきた。
ここまではこれまでと同じだったが、大きく違う点があった。
それは影が一つではなかったということだ。
二人いた。
黒い影が。
そして二人して木梨の顔を覗き込み、何かを言うのだ。
――ひやっ!
一人でも怖いのに、二人だとなおさら怖い。
そんな中でも木梨は、二人はどうやら若い男だということに気がついた。
影だけだが、その動きや雰囲気でそう思ったのだ。
そして間違いなく、木梨に何か言おうとしている。
――いったい何が言いたいんだこいつら。
急に金縛りにあった。
金縛りにあったのはその時が初めてだった。
すると真っ暗だったはずの周りがうっすらと明るくなり、そして出てきた。
黒い人の影。
どうやら成人男性のようだが、影だけなのでその容貌はよくわからなかった。
――ひえっ!
怖いが身体が全く動かない。
目も思うように閉じられないのだ。
影は木梨の顔を覗き込んだ。
そしてぶつぶつと何かを言っている。
しかし声が小さすぎて、何を言っているのかわからない。
しばらく影はそうしていたが、不意に消えた。
周りも真っ暗な空間に戻った。
――なんだ、今のは。
木梨は動けるようになっていた。
暑くもないのに木梨は汗だくだった。
それ以来、時折金縛りにあい、影を見るようになった。
影はいつも木梨を覗き込み、何かを言うのだ。
しかし毎回何を言っているのかがわからない。
木梨は怖かったが、誰にも影のとこは言わなかった。
母一人、子一人。
木梨は母子家庭だった。
父は木梨が生まれてすぐに死んでしまった。
それは事故というよりもほぼ殺人に近い。
父はトラックにひかれた。
ひかれてもまだ生きていた父を、トラックの運転手はわざわざ山の中に運び、放置したのだ。
見つけたのは山菜取りに来ていた親子だった。
検死の結果、山の中に捨てられても父は数日間生きていて、苦しみながら死んだのだそうだ。
出血はほぼなかったが、両手両足骨折に、内臓も損傷していたようだ。
しかしすぐに病院に運べば、助かっていたと言う。
運転手はその後逮捕され、重い罰を受けた。
十四年前のことだが、今でも刑務所にいる。
そういうことがあったので、木梨の家庭には木梨以外は母しかいない。
そんな状況で、母に余計な心配をかけたくなかったのだ。
時折影に悩ませられながらも、木梨は中学を卒業して高校生になった。
そして入学してしばらく経ったある夜のこと。
また金縛りにあった。
辺りがぼんやりと薄明るくなり、そして影が出てきた。
ここまではこれまでと同じだったが、大きく違う点があった。
それは影が一つではなかったということだ。
二人いた。
黒い影が。
そして二人して木梨の顔を覗き込み、何かを言うのだ。
――ひやっ!
一人でも怖いのに、二人だとなおさら怖い。
そんな中でも木梨は、二人はどうやら若い男だということに気がついた。
影だけだが、その動きや雰囲気でそう思ったのだ。
そして間違いなく、木梨に何か言おうとしている。
――いったい何が言いたいんだこいつら。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/25:『がんじつのおおあめ』の章を追加。2026/1/1の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/24:『おおみそか』の章を追加。2025/12/31の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/23:『みこし』の章を追加。2025/12/30の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/22:『かれんだー』の章を追加。2025/12/29の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/21:『おつきさまがみている』の章を追加。2025/12/28の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
静かに壊れていく日常
井浦
ホラー
──違和感から始まる十二の恐怖──
いつも通りの朝。
いつも通りの夜。
けれど、ほんの少しだけ、何かがおかしい。
鳴るはずのないインターホン。
いつもと違う帰り道。
知らない誰かの声。
そんな「違和感」に気づいたとき、もう“元の日常”には戻れない。
現実と幻想の境界が曖昧になる、全十二話の短編集。
一話完結で読める、静かな恐怖をあなたへ。
※表紙は生成AIで作成しております。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる