ルナティック

ツヨシ

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「終わりました」

「で、どうだ」

「まあ、前回といっしょですね。違う点は今回は右手首になにかにつかまれた痕がありました。右肩の間接がはずれ、右肩の周りの筋肉が半分以上引きちぎられたかのようになっています」

「筋肉、がか?」

「ええ、それだけ強い力で振り回されているということですね」

「やはり人力では無理か」

「こんなことができる人間が仮にオリンピックに出て、たとえば砲丸投げでもやったら、世界記録の数倍の距離を投げられると思いますね。砲丸投げの練習なんてしなくても。私の憶測では、世界一腕力がある人間の、十倍以上の筋力がないとこんなことは出来ないですね。ゴリラでもまるで無理です」

「そうか」

「目撃者もまたいないんでしょ」

「ああ、音を聞いた者と、死体を見た者だけだ」

「そうですか。で、またありますかね」

「それはわからん」

「私はあると思いますがね」

「どうして?」

「前回も今回も夜に事件が起こりました。そして前回も今回も、満月なんですよ」

「満月?」

「そう。人が一番狂うと言われている夜です。私の推理が正しければ、次の事件は来月の満月の夜なんじゃないんですかね」

「……」

権藤は何も言わなかった。

そのまま考えていた。
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