ルナティック

ツヨシ

文字の大きさ
上 下
5 / 17

5

しおりを挟む
「そうだ。この事件、今回だけで終わらないだろうからな」

「どうしてそう思うんです?」

「長年のカンだ」

「長年のカン、ですか」

「そうだ」

その後、二人の会話が途切れた。


猟奇的で不可解な事件ではあったが、しばらくすると世間は忘れてしまう。

死んだ男も友人を訪ねた帰りだし、住人には何の被害もなく、大きくひび割れたブロック塀もきれいに直された。

事件は何の進展もなく、マスコミも取り上げなくなった頃、あの事件から一ヵ月後にまた同じことが起こった。

違うのは事件現場が近所ではあるが雨宮の家のすぐ前ではないこと、叩きつけられた男が住宅街の住人であったこと、ブロック塀ではなくてアスファルトに叩きつけられたことだ。

現場は死んだ男の家の前だった。

「タバコを買いに行ってくる」と家を出た直後に大きな音がしたので、夫人がすぐに家を飛び出したが、男はすでにアスファルトにめり込んでいた。

そのとき雨宮は、家から少し離れたところでなにか音がしたような気がしたが、特に気にとめなかった。

そして救急車とパトカーのサイレンで惨劇を感じ取った。

住人はもちろんのこと、マスコミは大騒ぎとなった。

同じ住宅地でどうして死んだのかはわかるが、どうやって殺されたのかが全くわからない事件が連続して起こったからだ。

どう見ても自殺や事故ではないために、完全に殺人事件扱いになっていた。

テレビでどうやったらこんなことができるのかという検証番組も作られたが、呼ばれた教授と言われる人たちは「人間の力では無理」と言うこと以外、新たな見解は一切示さなかった。


検死を終えた検死官のもとに、権藤がやって来た。

「終わったか」
しおりを挟む

処理中です...