時を止めた女

ツヨシ

文字の大きさ
3 / 4

3

しおりを挟む
「おい。待っていたぞ。で、どんなあんばいだ?」

「いろいろと聞いたよ」

「で、彼女の秘密がわかったのか?」

「わかった」

「そうか。それはどんな秘密だ?」

「順を追って説明しよう。彼女がいつも幸せに満ちた顔をしていると言っていたな。それは愛する人との結婚を控えているからだ」

「結婚? 十年前からあの表情だが、ずっと一人暮らしだぞ」

「それはそうだろう。彼女の結婚相手は2020年の夏、つまり十年前に事故で亡くなっている」

「えっ? 十年前に結婚相手が亡くなっているって。意味がわからん」

「結婚相手が亡くなったことは、私が後から調べたことだ。彼女は今でもその男と結婚式をあげるつもりでいる」

「まさか結婚相手が死んだことを知らないとか」

「いや、知っている。だからああなった」

「……やっぱり意味がわからん」

「結婚相手が死んで、よほどショックだったのだろう。だから彼女は時を止めたんだ」

「時を止めた?」

「そう、時を止めた。彼女はこの十年間、結婚式の前で結婚相手がまだ生きている時の時間をずっと繰り返しているんだ」

「それはどういうことだ?」

「だから言ったろう。結婚相手が死んだことで強烈な精神的なショックを受けた。それでそのことをあまりにも強く否定したがために、彼女の意識と記憶はその前の八月で止まってしまったんだ。結婚式は九月の予定だった。意識を二十一歳で止めたがために、この十年間見た目の上では全く年をとっていない」

「そんなことがありうるのか?」

「例がないわけじゃない。ある四十台前半にしか見えない男が結婚した。しかしすぐに死んでしまったそうだ。死因は老衰。なんと四十台前半にしか見えなかった男の実年齢は、九十歳を超えていたんだ。その男の口癖は「俺はいつまでも元気で若い」だったそうだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

契約結婚に初夜は必要ですか?

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
勤めていた会社から突然、契約を切られて失業中の私が再会したのは、前の会社の人間、飛田でした。 このままでは預金がつきてアパートを追い出されそうな私と、会社を変わるので寮を出なければならず食事その他家事が困る飛田。 そんな私たちは利害が一致し、恋愛感情などなく結婚したのだけれど。 ……なぜか結婚初日に、迫られています。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

一夜の男

詩織
恋愛
ドラマとかの出来事かと思ってた。 まさか自分にもこんなことが起きるとは... そして相手の顔を見ることなく逃げたので、知ってる人かも全く知らない人かもわからない。

友達婚~5年もあいつに片想い~

日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は 同僚の大樹に5年も片想いしている 5年前にした 「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」 梨衣は今30歳 その約束を大樹は覚えているのか

6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。 まさかあの彼と、こんな関係になるなんて思いもしない。 今日は同期飲み会だった。 後輩のミスで行けたのは本当に最後。 飲み足りないという私に彼は付き合ってくれた。 彼とは入社当時、部署は違ったが同じ仕事に携わっていた。 きっとあの頃のわたしは、彼が好きだったんだと思う。 けれど仕事で負けたくないなんて私のちっぽけなプライドのせいで、その一線は越えられなかった。 でも、あれから変わった私なら……。 ****** 2021/05/29 公開 ****** 表紙 いもこは妹pixivID:11163077

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

処理中です...