闇の中の黒い闇

ツヨシ

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「情報もなにも、まだなにもつかんでないんでね。近田さんに渡す情報がない」

「ほんとかよ」

「ほんとほんと」

近田は小峠を見ていたが、なにかを思い出したかのように言った。」

「ところであの若いのだが」

「本間君のことか」

「そう、その本間だ。あいつよく刑事になれたな。俺の見るところでは、どう見ても刑事ってがらじゃないぞ」

「確かに。人間性と言うか性格と言うか適正と言うか、そういう部分においてはまったく刑事むきではないな。そういう部分と言ったが、この三つ以外のところが刑事に向いているわけではない。それ以外の全てにおいても、まるで刑事には向いていない。それは認めざるをえないな。ただ一つだけ刑事に向いているところがあるんだ」

「なんだそれは」

「それは企業秘密だけど、近田さんには特別に言っておこうかな」

「もったいぶるな。どうせたいしたことないんだろ」

「それが、かなりたいしたものなんだよな」

「だからそれはなんだ」

「カンだよ。カンが鋭いんだ」

「カンだと」

「普段は頭のねじが何本か抜けているんじゃないかと思うようなことがよくあるんだが、いざというときとか、ここぞというときの本間のカンは、尋常じゃない。俺はオカルトは信じないほうだが、本間といっしょにいると、超能力の存在を信じたくなるくらいだ。それほどまでにあいつのカンはピカいちだよ」

「そうなのか」

「そうだよ」

「ふーん」

小峠は壁にかかっている時計を見た。

「今度はこっちが会議だ。そのうちに退屈すぎて死人がでるぞ」

「寝るなよ」

「寝れるもんなら、寝たいけどね」

小峠は軽く手を上げると、近田が出て来た部屋に入った。


本間は望遠鏡を覗いていたが、やめた。

カーテンで中が見えなくなったからだ。

昼間は母親は仕事で、娘は学校だ。

つまり夕方まではあの部屋には、誰もいない。

夕方娘が帰ってきて、その後母親が帰ってくる。

手にはスーパーのビニール袋を持っているので、仕事が終わった後で買い物をしてきたのだろう。

そしてしばらくすると、カーテンを閉めてしまう。

家の中が見られる時間帯は短い。

しかもその間、母親は台所に立っているときが多いし、娘も居間にはいない場合が多い。

そんな状況にもかかわらず、本間はほぼ丸一日、ここで見張りを続けているのだ。

――ほんと、無駄な時間が多すぎる。

大の大人が寝るには早いような気もするが、本間は寝ることにした。

――休みの日ならけっこう見ることができたかもしれないけど。

本間は今日が月曜日であることを呪った。

――とにかく寝るぞ。

用意した寝部頃に身体を突っこんだ。
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