闇の中の黒い闇

ツヨシ

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大道は、前の事件がもうすぐ片付きそうなので、久々に正木のマンションに顔を出した。

とは言っても正木のところに聞き込みは行きづらいし、長居出来るほどの余裕もない。

次に来るときの予行演習と言ったところである。

――あの部屋とあの部屋とあの部屋か。とにかく周りから攻めるのが先だな。

大道は一通りの見当をつけると外に出た。

車を停めているところに向かおうとしたとき、ふと道を隔てて向かいにあるマンションに目がいった。

――あれは……。

昼間なのに完全にカーテンを閉めている。

それ自体は特別珍しいことではない。

深夜勤務で昼間は寝ている人とか、そうしなければならない事情がある人は、探せばいくらでもいることだろう。

大道が気づいたのは、締め切ったカーテンがわずかながら動いたことだ。

風ではない。

窓は閉まっている。

考えられるとすれば、カーテンの後ろに誰かがいてなにかをしているということだ。

そして決定的なのは、その部屋が正木親子の部屋の真正面にあるということだ。

距離は少しあるが、双眼鏡を使えば正木親子の生活をばっちり覗くことができる位置だ。

大道はカーテンのすき間になにかないかと探したが、肉眼で発見することは出来なかった。

――あんなことをするのは近田か。いや近田は基本一人で行動している。いくら重要ポイントでも、一箇所にとどまるような捜査はほとんどしないはずだ。やったとしたら捜査の大詰めのときだが、今はそのときではないだろう。すると小峠か、その後輩の本間というやつか。

大道は本間がいるとふんだ。

――かなり絞り込んできたな。

うかうかしてはいられないと思った。

一刻も早く前の仕事を切り上げ、このレースに参加しないといけない。


――ん?

正面の誰もいない窓を大写しで覗いていたはずの本間が、気づいた。

視線を感じる方向に目を移すと、そこに大道が立ち止まってこちらを見ていた。

――ありゃ、気づかれたかな。

とは言っても、気づかれようが気づかれまいが、やることはまるで変わらない。

大道が「あそこに覗き魔がいますよ」と騒ぎ立てるとも思えない。

そんなことをしたら、生涯警察署へは出入り禁止になるだろう。

警察からの情報も、全て遮断されるはずだ。

捜査の邪魔をした代償は、どう転んでも軽くはならない。

大道ならそれくらいのことはわかっているはずだ。

――とりあえず、ほっとくか。

本間は再び双眼鏡を覗き込んだ。

相変わらず人っ子一人いない窓が見えた。
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