闇の中の黒い闇

ツヨシ

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「で、おまえどうするんだ」

近田は考えていたが、やがて言った。

「俺は仕事をするぞ」

「ほう」

「なあに、危ないと思ったらすぐに逃げ出すさ。俺だって命は欲しいからな」

「そうか。……ところで何度も言うが、本間は異常なほどにカンが鋭い。おまえは違うだろう。そりゃあ普通の人間よりは修羅場をくぐっている分だけカンも鋭いだろうが、本間とは比べ物にもならない。なのにいつ危なくなるのか、危なくなったのか、わかると言うのかい?」

「わかるはずだ」

「……そうか。ならもうなにも言わん。いい年こいた大人だしな。俺より年上だし。好きにするといいさ」

「ああ。でももしものときのために、おまえには言っておこう」

「何を?」

「俺が怖がるもの嫌がるもの。それは犬だ。小さい頃に、野犬に噛まれて大怪我をおったことがある。それ以来、犬は心底嫌いだ」

「……そうか、わかった。それが遺言にならないように、本気で祈っておくよ」

近田は軽く手を振ると、その場を後にした。

小峠はその後姿を見送った。

小峠は近田の姿が見えなくなると、一人つぶやいた。

「命かけるヤマでもないだろうに。て言うか、命かけるヤマなんて、そんなものないだろうに。なにを一生懸命になってるんだ。まるで……」

小峠はそれ以上口に出すのをためらった。

――まるで、これから死にますって言っているようなもんじゃないか。


大道のスマホが鳴った。見れば近田からだ。

「もしもし」

「おお、俺だ」

「近田さん、どうしたんです。近田さんから電話するなんて、珍しいですね」

「今、いいか」

「いいですけど」

「大事な話は会ってすることにしている。これから会おう」

「いいですよ。どこでですか」

「まずいコーヒーでも飲みながら話そうじゃないか」

「わかりました」

電話は切られた。

「さて」

大道は考えた。

――いったいなんの話だろう?

考えても仕方がない。

行けばわかることだ。

大道は喫茶店に向かった。
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