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しおりを挟む「あの子に関わるのは、それほどまでに危険だということだ。本間は大手を振って正面から逃げた。小峠も上にばれないように、こっそり逃げ出すつもりだ。このヤマに関わっているのは、今や俺一人しかいない。今後も現れることは、おそらくないだろう」
近田はコーヒー一杯を一気に飲み干した。
「うん、やっぱりまずい。で、二人でタッグを組んでやらないかと言う話だよ」
「二人で……ですか」
「そう。俺はもうあの子に人は殺させない。おまえはネタが欲しい。この事件、どこまで本に出来るかは俺にはわからんが、情報は多いに越したことはないだろう」
「……そうですね」
「ただし」
「ただし?」
「もう一度言っておく。あの子は危険だ。しゃれにならないくらいにな。危なくなったら迷わずすぐに逃げろ。わかったな」
「わかりました」
「で、お前の怖いものはなんだ?」
「私の怖いものですか」
「苦手なものでもいい。一番嫌いなやつだ」
大道は、怖いものや苦手なもの、嫌いなものがいくつもあった。
だが特にこれと言えるものは、一つも思い浮かばなかった。
「ん? 怖いものとか、なにもないのか」
「いや、そういうわけではないのですが、特にこれといっては」
「そうか。俺には特にこれと言ったものが二つある。一つは犬だ。子供の頃に噛まれて大怪我していらいだな。それともう一つだが……これは今はやめておこう」
「えっ、なんですか。どうしてやめるんですか?」
「今は、と言っただろう。それ以上聞くな!」
怖い顔だった。大道は素直に従った。
「わかりました」
今度は大道が、残りのコーヒーを一気に飲み干した。
「とにかく、それでいこう。俺はこれから本間を捕まえる。そして児童相談所にも顔を出しておく」
「はあ」
「おまえさんはもう一度、近所に聞き込みをしてくれ。証言は多ければ多いほどいい」
「わかりました」
「これで決まったな。じゃあ今日は一時解散だ。ここは俺が出しとくから」
近田は伝票を持つと、結構な勢いでレジに向かった。
マスターが慌ててレジまで走ってきた。
会計を済ますと、近田はそのまま出て行った。
大道は思った。
――いったいなんであれほどまでに入れ込んでるんだ?
いつもの近田とは明らかに違っていた。
鬼の近田が脱皮して、仏の近田になったかのように思えた。
大道はマンションで再度聞き込みをした。
得られた情報は、正木の娘がここ最近、顔や手足にアザを造っていることが多いということだ。
学校関係者が訪ねてきた、と言った主婦もいた。
しかし知っている限りにおいて母親は「転んだ」とか「机にぶつけた」とか言っていたようだ。
――やはり虐待はあったようだな。
大道は考えた。
近田があんなにも力を入れているのは、虐待がおさまれば、非常識連続殺人事件も終わると思っているからのだろうか、と。
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