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大道が聞いた。
「あの少女は調べないんですか」
近田がにたりと笑った。
ちょっと怖かった。
「俺、おまえさん、小峠、本間。この四人以外であの少女が犯人だと思っている奴はいない。いたとしても、あとはゲンさんくらいのものか。署長だって知らない。おまえさんはどうか知らんが、あとの四人は決して少女が犯人だなんて、言わないだろう。なぜなら、はなから無理だとわかっているからさ。大の大人があれこれやって殺したとしても、あんな殺し方はかなり難しい。なかでも生田と和子は、人間には不可能だと断言できる。それを一人の少女がやったなんてことを裁判で証明するなんて、絶対に無理だろうな。このヤマは、黙っておとなしく見守るしかないんだよ」
「そうですか」
「それに虐待がなくなったんだから、非常識連続殺人事件も、もうおさまるだろうし。そのうち全てのヤマが迷宮入りになって、それで全部終りさ」
「そうですね」
近田は嬉しそうだった。
やはり少女に同情的なのだろう。
大道にはそう見えた。
その理由まではわからないが。
同情すべき点があるとは言え、あの子は何人もの人間を殺しているのだから。
予想していたこととは言え、大道は一応調べてみた。
和子をよく知る人物から、同様の証言を取ることが出来た。
和子は水を極端に嫌っていたということを。
幼い頃は、風呂に入るのも嫌がっていたそうだ。
徹底的に水を避けていたので、逆に溺れたという経験はなかったようだ。
おそらく生まれもってのものなのだろう。
学校の水泳の授業でさえ、なにかしらの理由をつけて、一度も参加しなかったと言う。
――自分の最も嫌いなものに殺される……か。
殺すという行為の中に、最上級の嫌がらせが加わっている。
はたしてどれだけ憎めば、そんなことが出来るのだろうか。
大道は幼い少女の心の闇を考えずにはいられなかった。
父親と母親の両方から理不尽な仕打ちを受けていた、少女の闇の中を。
しばらくして近田から連絡があった。
好子の様子を見に行かないかと言うのだ。
大道は正直「なにをいまさら」と思ったが、近田との今後の関係を考慮して、表面上は快く承諾した。
児童保護施設は、外から見ると総合病院のように見えた。
中に入ると近田が入口付近で待っていた。
「よお」
受付をすまし、そのあたりを歩く。
外から見ると病院のようだったが、中に入ると病院そのものだった。
「ここが好子の部屋だ」
近田に続き、大道も中を覗いた。
四畳ほどの広さだろうか。
廊下が無駄に広い分だけ、部屋はよけいに小さく見えた。
テーブルとベッドと椅子。
小さな洋服ダンスにこれまた小さな収納。
それがこの部屋の全てだった。
好子はいなかった。
「あの少女は調べないんですか」
近田がにたりと笑った。
ちょっと怖かった。
「俺、おまえさん、小峠、本間。この四人以外であの少女が犯人だと思っている奴はいない。いたとしても、あとはゲンさんくらいのものか。署長だって知らない。おまえさんはどうか知らんが、あとの四人は決して少女が犯人だなんて、言わないだろう。なぜなら、はなから無理だとわかっているからさ。大の大人があれこれやって殺したとしても、あんな殺し方はかなり難しい。なかでも生田と和子は、人間には不可能だと断言できる。それを一人の少女がやったなんてことを裁判で証明するなんて、絶対に無理だろうな。このヤマは、黙っておとなしく見守るしかないんだよ」
「そうですか」
「それに虐待がなくなったんだから、非常識連続殺人事件も、もうおさまるだろうし。そのうち全てのヤマが迷宮入りになって、それで全部終りさ」
「そうですね」
近田は嬉しそうだった。
やはり少女に同情的なのだろう。
大道にはそう見えた。
その理由まではわからないが。
同情すべき点があるとは言え、あの子は何人もの人間を殺しているのだから。
予想していたこととは言え、大道は一応調べてみた。
和子をよく知る人物から、同様の証言を取ることが出来た。
和子は水を極端に嫌っていたということを。
幼い頃は、風呂に入るのも嫌がっていたそうだ。
徹底的に水を避けていたので、逆に溺れたという経験はなかったようだ。
おそらく生まれもってのものなのだろう。
学校の水泳の授業でさえ、なにかしらの理由をつけて、一度も参加しなかったと言う。
――自分の最も嫌いなものに殺される……か。
殺すという行為の中に、最上級の嫌がらせが加わっている。
はたしてどれだけ憎めば、そんなことが出来るのだろうか。
大道は幼い少女の心の闇を考えずにはいられなかった。
父親と母親の両方から理不尽な仕打ちを受けていた、少女の闇の中を。
しばらくして近田から連絡があった。
好子の様子を見に行かないかと言うのだ。
大道は正直「なにをいまさら」と思ったが、近田との今後の関係を考慮して、表面上は快く承諾した。
児童保護施設は、外から見ると総合病院のように見えた。
中に入ると近田が入口付近で待っていた。
「よお」
受付をすまし、そのあたりを歩く。
外から見ると病院のようだったが、中に入ると病院そのものだった。
「ここが好子の部屋だ」
近田に続き、大道も中を覗いた。
四畳ほどの広さだろうか。
廊下が無駄に広い分だけ、部屋はよけいに小さく見えた。
テーブルとベッドと椅子。
小さな洋服ダンスにこれまた小さな収納。
それがこの部屋の全てだった。
好子はいなかった。
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