闇の中の黒い闇

ツヨシ

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近田が言った。

「学校が終わってからは、みんなの交流の時間だそうだ。平たく言えば、みんなで遊んで仲良くなりましょう、ってところかな。この先にあるゆうぎ場にいるそうだ」

ゆうぎ場と呼ばれる場所には、すぐに着いた。

結構広いところで、幼稚園児ぐらいの子供から、小学校三年生くらいの子供まで、十人ほどの子供がそこにいた。

数人で固まっていたり、一人で積み木を積んでいたり、それぞれ思い思いの遊びを楽しんでいるようだ。

若い男性職員が一人いて、子供たちの相手をしている。

その中に好子はいた。

部屋の一番隅に一人で座り、じっとしていた。

顔はこちらのほうを向いているが、その目は相変わらすどこにも焦点が合ってなかった。

二人で見ていると、子供の相手をしていた職員が声をかけてきた。

「ご見学ですか」

近田が答える。

「ああ、知り合いの子がいるもんでな」

近田の視線は好子に注がれていた。

それを見た職員が、一瞬ではあるがあからさまに嫌な顔をした。

近田が聞いた。

「あの子は、ここで楽しくやっているいか?」

男性職員が、必要以上に大きな声で答えた。

「はい。私は子供が大好きですから、大丈夫ですよ」

――ん?

大道は、はっきりとした違和感を覚えた。

近田が言った。

「そうか、それはよかった」

「はい、私は子供が大好きですから」


しばらく様子を見た後、保護施設を後にした。

近田が言った。

「なあ、あの若い奴だけど」

「なんですか」

「少しおかしくないか」

「おかしいですね」

「俺が聞いたのは、正木の娘のことだ。なのに自分は子供が大好きですだとか、二度も言いやがった。こっちはそんなこと、一言も聞いていないのにな」

大道は、好子を見たときの男の顔を思い出した。

明らかに嫌そうな顔、それも憎悪をそこにふくんだ顔だった。

「本当の子供好きは、聞かれもしないのに子供が好きだなんて、言わないはずなんだがなあ。あいつ本当に子供がすきなのか?」

「いや、違うでしょう」

「そうだろうな」

大道は考えた。

ああいったタイプの人間は珍しくない。

本当の自分とは違う自分を演じている。

と言うよりも、違う自分を本当の自分と勘違いしているのだ。

頭が悪いのに頭がいいと勘違いしているやつ。

淫乱なのに、自分は清純だと勘違いしているやつ。

嘘つきなのに、自分は正直者だと勘違いしているやつ。

どうやったらそんな勘違いが出来るのか、不思議なほどの人間を大道はこれまでに何人も見てきた。
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