闇の中の黒い闇

ツヨシ

文字の大きさ
43 / 47

43

しおりを挟む
なにをどう感じたかと言えば説明は難しい。が、確かに感じたのだ。

自分の目の前に、なにかが四方八方から集まっている。

そう強く感じた。

しかし実際になにかが集まっているのを、目で見ているわけではない。

そんなものはなにも見えないのだ。

なにも見えないが、見えているとき以上の確信が近田にはあった。

――なんなんだ、いったい。

そしてそれが自分の目の前の空間に集まりきったことを、近田は感じ取った。

その時、それが突然現れた。

一人の少女。正木好子。

近田の目の前に、正木好子が立っていた。

――……。

近田はなにか言おうとしたが、口は半開きのままでなにも言葉を発せなかった。

ただ吸い込まれるように好子を見ていた。

――これは……。

近田は気づいた。

今目の前にいる好子。

ぼんやりとではなく、はっきりと目で捉えることが出来る。

にもかかわらず、少女は現実感とか実在感と言ったものが、不自然なほどに薄かった。

それはまるで透明なスクリーンに映し出される映像のようだった。

その映像が言った。

「もうしつこいわね、おじさん」

どこにでもいる、ありきたりな少女の声だった。

「しつこいから、引っ張り出しちゃう」

「引っ張り出す?」

「そう、ぴゅっとね」

「ぴゅっ?」

好子はいかにも面倒くさいといった顔をした。

「いい、おじさん。みんなそうだけど、頭の中には真っ黒いものがあるの。そしてその真っ黒いものの中に、小さくてもっともっと真っ黒いものがあるの。真っ黒の中にある真っ黒。ものすごく黒いもの。それを引っ張り出すの」

「……真っ黒いもの?」

「そう。真っ黒くて黒いもの。それを引っ張り出すと、終わるの」

「終わる?」

「そう。終わっちゃうの。引っ張り出された人がね」

「……」

「それでなにもかもおしまい」

「……」

近田はなにも言えなかった。

ただ少女を見ていた、

その時、好子が近田の額の辺りに手を伸ばすと、なにかを引っ張り出すような仕草をした。

すると目の前に、それは突然現れた。

近田にとっては馴染みがありすぎる者。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

処理中です...