44 / 47
44
しおりを挟む
近田の母親だった。
ただその母親は、近田の知る母親よりも数段大きかった。
不自然なほど背を丸めているのに、その丸めた背中が天井まで達していた。
その大きな身体には、更に大きな顔がついていた。
顔だけでその大きさは、1メートル以上はゆうにあるだろう。
そして人間ではありえないほどの大きな目で、近田を射抜いていた。
左右の握られた二つの拳も、アンバランスなほどに大きい。
それは近田の頭よりも大きかった。
近田に過去の恐怖がよみがえっていた。
近田は幼い頃から母親にひどい虐待を受けていた。
親が子供を殴るのは当たり前だった時代。
家庭内暴力だの児童虐待など、言葉すらなかった時代だったが、それでも近所や学校で話題になるほど、母親の虐待は際立っていた。
父親は妻の子供に対する暴力に関して、徹底的に無関心を貫いていた。
虐待は近田が十歳になるまで続いた。
十歳のときに母が死に、それがようやく止まった。
原因は階段からの転落死。
と、警察を含めて世間ではそう思われていた。
しかし実際はそうではないことを近田は知っていた。
その日、近田を何度も蹴り倒し、満足して階段を下りようとした母親を、近田が後ろから突き飛ばしたのだ。
とっさにとった行動だった。
殺すつもりなど全くなかった。
しかし母親は階段を物凄い勢いで落ち、そのまま死んでしまった。
虐待から開放された喜び。虐待し続けた母親にたいする憎悪。
それとともに母親を殺してしまった恐怖と罪悪感が入り混じり、近田の人格を形成した。
いつの間にか警察官になり、気がつけばたたき上げの刑事となっていた。
悪い奴には容赦はなかった。
徹底的にしめあげた。
そこには憎悪しかなかったのだ。
ただその母親は、近田の知る母親よりも数段大きかった。
不自然なほど背を丸めているのに、その丸めた背中が天井まで達していた。
その大きな身体には、更に大きな顔がついていた。
顔だけでその大きさは、1メートル以上はゆうにあるだろう。
そして人間ではありえないほどの大きな目で、近田を射抜いていた。
左右の握られた二つの拳も、アンバランスなほどに大きい。
それは近田の頭よりも大きかった。
近田に過去の恐怖がよみがえっていた。
近田は幼い頃から母親にひどい虐待を受けていた。
親が子供を殴るのは当たり前だった時代。
家庭内暴力だの児童虐待など、言葉すらなかった時代だったが、それでも近所や学校で話題になるほど、母親の虐待は際立っていた。
父親は妻の子供に対する暴力に関して、徹底的に無関心を貫いていた。
虐待は近田が十歳になるまで続いた。
十歳のときに母が死に、それがようやく止まった。
原因は階段からの転落死。
と、警察を含めて世間ではそう思われていた。
しかし実際はそうではないことを近田は知っていた。
その日、近田を何度も蹴り倒し、満足して階段を下りようとした母親を、近田が後ろから突き飛ばしたのだ。
とっさにとった行動だった。
殺すつもりなど全くなかった。
しかし母親は階段を物凄い勢いで落ち、そのまま死んでしまった。
虐待から開放された喜び。虐待し続けた母親にたいする憎悪。
それとともに母親を殺してしまった恐怖と罪悪感が入り混じり、近田の人格を形成した。
いつの間にか警察官になり、気がつけばたたき上げの刑事となっていた。
悪い奴には容赦はなかった。
徹底的にしめあげた。
そこには憎悪しかなかったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる