失われた一年

ツヨシ

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その長さに俺は驚いた。

俺からすれば、気を失ってから目が覚めるまでに、それほどの時間が経っているように思えなかったからだ。

まるで会社の休み時間にちょっと眠ったような、そんな感覚だったのだから。

とにかく実家に連絡すると、母と話すことが出来た。

興奮した母は一方的にしゃべり会話があまりなりたたなかったが、それでも俺には捜索願が出されていたことがわかった。

母は父と一緒に迎えにいくと言っているが、東京からここまでは半日はかかる。

今は朝だが、着くのは夕方以降になりそうだ。

仕方がないので俺は、狭い派出所で待たせてもらうことにした。

両親がつくまでに新たにわかったことがある。

目覚めたときはそこまで気がまるでまわらなかったが、俺は黒髪短髪だったにもかかわらず、長髪で金髪になっていることに気付いた。

おしゃれには興味がないタイプなのに、耳、口、鼻などに十箇所以上の穴があけられていて、そこにピアスがあった。

スマホを見ると、知っている番号以外に知らない番号が三つほど登録されていて、その登録名は「ば」「ぺ」「ん」だった。

警察官立会いのもと、その三つに連絡をしてみたが、全て「この番号は現在つかわれておりません」と言う機械的なアナウンスが流れるに留まった。

ついでにいえば服も、十代のヤンキーが着るような服を着ていた。

悪趣味を意図的に極めたような。

俺は意識を失っている間に、三十歳になったと言うのに。
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