失われた一年

ツヨシ

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どうりで警察官が最初に俺を見たとき、あからさまに変な顔をしたわけだ。


夜の帳が下りようとするころ、両親が到着した。

母親は泣いて俺に抱きついてきた。

おいおい俺はもう三十になったんだぜ。


警察、親族、そして俺と、いろいろとあの手この手で調べることは調べたのだが、俺がこの一年間なにをやっていたのかは、全くわからなかった。

最後にあった友人に話を聞くと、彼はその顔に少しばかりの怯えの色を見せながら言った。

「だってお前、俺の目の前に座っていたのに、いきなり消えたんだぜ」


あくまで蛇足ながら、俺がいた東北の町は、この一年間日本中の話題をさらい続けていた。

なにせ人口たかだか数万人の町で、一年間に九十件以上もの殺人事件が起きていたのだから。

もう少しで百の大台に乗るところだった。

それも全て鍵のかかった一軒家やマンション、アパートやホテルで発生しており、日本犯罪史上例のない、連続密室殺人事件として連日連夜マスコミに取り上げ続けられていた。

犯人が室内に侵入した方法及び外に出た方法が全く解明されておらず、オフレコながらある警察関係者が

「それはまるで室内に瞬間移動し、そして出てきたかのような状況だった」

と言ったという。

犯人は未だにその見当すらついていなかった。

それでこれが大事なことなのだが、犯行は俺が消えたその日の夜にはじまっており、俺が東京に帰ってきたからはあれほど続いた殺人事件がぴたりとやんだのだが、これって俺、関係ないよね。


       終
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