小さな王

ツヨシ

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――なんだあの島は。
ドーム型と言うか、まんじゅうを薄くしたものと言うか。
島の形も普通ではないが、それ以上に異様なのがここから見ても島の草木がすべて枯れているように見えることだ。
草木が枯れると言うことは、そうなる原因が島にあると言うことを示している。
――近づくと危険なのかもしれない。
桐谷は念のために持ってきたカメラ付きの小型ドローンを飛ばした。
ドローンを操作しながらモニターで映像を見る。
島はだいたい直径が二百メートルくらいの円形だ。
そして島の草木はやはりすべて枯れてるようだ。
カモメだろうか。
白骨化した鳥の死骸がある。
――うん、あれは。
ドローンの先になにかが見えた。
そこにドローンを飛ばす。
それは服を着た人間の像に見えた。
石で出来た。
それが島の傾斜にへばりついているのだ。
――なんでこんなものが、こんなところに……。
さらにドローンを近づける。
そして桐谷は気づいた。
石像の男の顔。
それがさくやの恋人の友樹にそっくりであることに。
――ええっ?
妹と一緒に行方不明になった男の石像が島に取り付いている。
これはいったいどういうことなのか。
誰がこんなものを造ってここに置いたのか。
考えているうちに、桐谷の頭の中に恐ろしい考えが浮かんできた。
――人間が石化した?
いやいやそんなことがあるはずもない。
神話の世界でしか聞いたことのない話だ。
桐谷はしばらく石像を眺めていたが、いくら見てもなにもわからないので再び島の中にドローンを飛ばした。
くまなく島を見る。
枯れた草木。
そして二匹目の鳥の死骸を見た。
――なにかないのか。
すると見つけた。
死の世界の中で唯一動くもの。
蛇だ。
頭をもたげて島の中をゆっくりと進んでいる。
その頭には王冠とも見える斑紋がある。
その長さは目測で二十センチ余りくらいだろうか。
小さな蛇だ。
――この蛇はいったい……。
全ての草木が枯れている島。
そして鳥の死骸が二体。
妹の恋人にそっくりな石像。
そして小さな蛇。
これら全てを結び付けるもの。
桐谷には思い当たるものが一つしかなかった。
――いや、まさか、そんなことがあるはずがない……。
でももしそうだとしたなら、そのありえないことが現実にあったとしたら、準備が必要だ。
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