天井の赤い染み

ツヨシ

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――あとは足だけだな。

俺はぼんやりとそう思った。


さらに次の日、その日休みだった俺が部屋でごろごろしていると、なんだか周りが騒がしくなった。

気付けばいつの間にか救急車やパトカーが停まっている。

それに大勢の野次馬もいた。

――なんだろう?

部屋を出てうろうろしていると、大家を見つけて話しかけた。

「どうしたんですか?」

「ああ。402号室から異臭がすると言うので見てみたら、そこの中西さんがベッドの上で死んでいたんですよ」

402号室といえば俺の真上の部屋だ。

でも俺の部屋では特に異臭などはしなかったが。

「異臭がすると言い出したのは、隣の403号室の人です。たとえ死体があっても、階が違えばそんなには臭わないでしょうね」

俺は天井の染みのことを思い出し、大家に声をかけた。

「ちょっと来てください」

「どうしたんですか?」

「いいから。来ればわかります」

怪訝そうな大家を部屋に入れ、天井を指差した。

「あれ、何に見えます?」

大家は即答した。

「足のない人間に見えますね」 

「やっぱり。上の階で人が死んだと言いましたね。その死体から流れた体液かなんかが染みこんで、こんな染みをつくったんじゃないですか?」

大家は大きく首を横に振った。

「いえいえ。中西さんはベッドの上で死んでたんですよ。死んでから数日しか経ってないし。真夏だから腐敗は早かったですが、死体から流れた体液なんて、ベッドを少し汚しただけです。あの部屋の床でさえ汚れていません。ましてや下の階の天上にこんな染みをつくるなんてことは、ありえませんよ」

「じゃあ、あれはなんですか?」

「いや……それは」

大家にもわからないらしい。

そして夜に見たところ、足のなかった染みに、右足が生えていた。

俺は急いで大家の部屋に行き、このマンションを出てゆくことを告げた。


        終
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