竜チューバー・アズナ

kuro-yo

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地元サウルス

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〈夜明け前、薄明かりの山中、沈みかけの月が水面に映る大きな湖のほとり、地面に置かれたランタンの灯りに照らされ、毛布にくるまった二人の人物が見える〉

〈囁き声で話し始めるアズナ〉

 皆さん、おはようございます。

 毎度お馴染み、竜チューバーの、アズナです。

 今日も生配信でお送りします。

 今、アズナは地元市民の憩いの場、地元湖のほとりに来ています。

 地元の皆さんはご存知かと思いますが、この湖には地元の方々からジッシーと呼ばれる恐竜が今も住み着いていると言う伝説がありまして、町興しのシンボルにもなっています。あそこに見える遊泳禁止の看板にも、ジッシーの想像図が描かれていますね。

 それで今回は、そのジッシー伝説を確かめるために、夜明け前からこうして湖のほとりで待ち構えています。

 えー、それでは、今回のゲストの方をご紹介します。

 地元で七代続く写真館の跡取りで、八代目のスズキユウコさんです。

「zzz…」

 スズキユウコさん?

「…はっ。どうも、スズキユウコです。今朝は大好きなアズナさんにお誘い頂き、感無量です。…あのあの、頬擦りしてもいいですか、痛たたた…」

〈言うが早いか、いきなりアズナに頬擦りするスズキユウコ〉

〈ほっぺたが血だらけになるユウコとその血が頬に着くアズナ〉

 だだだ大丈夫ですか!?

 私の肌は滑らかに見えて、実は細かい鱗がついてますので、頬擦りしたら怪我しますよ!?

〈と言いながら救急箱を取り出し、丁寧に応急処置をするアズナ〉

「ああっ、アズナさんに手当てしてもらえるなんて、感激ですっ!もうドキドキが止まりません!」

〈頬に貼ったガーゼから血が滲み出るユウコ〉

 心拍数が上がると血も止まりませんからほどほどにお願いしますねー

〈と棒読みするアズナ〉

 …えっと、それでは、スズキユウコさんにジッシーのお話を伺っていきたいと思います。

 スズキユウコさんの写真館はジッシーと深い関わりがあると伺いましたが、詳しく教えて頂けますか?

「はい。実は地元で最初にジッシーを見たのが、うちの写真館の五代目なんです。」

 そうなんですか。それはいつ頃の事ですか?

「五代目がまだ子供だった頃と言いますから、百年ほど前の事ですか。」

 百年前ですか!

 ちょうどアズナが地元に移住した頃ですね!

「え、アズナさん、おいくつなんですか?」

 やだ~、竜人に歳を訊くのは失礼ですよ~、な~んて。

 竜人は寿命が長いですから。アズナが地元に移住した頃はまだ社会人なりたてで、右も左もわかりませんでしたね~。

 …それはともかく、写真館の五代目が最初の目撃者という事は、ひょっとして写真があったりするんですか?

「実はそうなんです!これがその写真です。」

〈と言って、手に持っていた写真たてをカメラに向けるユウコ〉

 あ、確かに水面に反射する日の光をバックに、恐竜のようなシルエットが写ってますね!

 水中から頭を出したところでしょうか。背中と尻尾も水面から出ていますね。

 すごいです!

 どうやって撮影されたのでしょうか?

「五代目が湖に昇る日の出を撮ろうと、夜明け前から準備をしていたら、湖の方から不意に、ばしゃばしゃという水音が聞こえてきたので、反射的にそちらにカメラを向けてシャッターを切った、と伝わってます。」

 では、ほかにも写真があるのですか?

「生憎、現在我が家に伝わっている写真はこの一枚きりです。」

 そうなのですか。それは残念ですね。

 …ところで、こんなすごい写真が撮れたんですから、地元は当時大騒ぎになっててもおかしくないと思うんですが、ジッシーが騒がれ始めたのはもっとずっと後の事でしたよね?

「はい。実は、五代目は誰にもこの写真の事を告げずにいたんです。」

 では、この写真はどうやって日の目を見たのですか?

「この写真が見つかったのは五代目が亡くなった後の事です。一枚だけプリントして、肌身離さず持ち歩いてたようですよ。よほどお気に入りだったんですね。それで、五代目のお葬式の時、参列者に五代目の元クラスメートの方がいらっしゃって、この写真にまつわるエピソードを一つ教えてくれたそうです。」

 それは興味深いですね。どんなお話ですか?

「クラスメートに写真を見られ、『何これ!?』と問い詰められて、『地元湖を泳ぐ竜…』と答えたというんですね。ただ、その時は皆、嘘だと思って信じていなかったそうです。」

 そうだったんですか。

 面白いお話をありがとうございました。

 さて、そろそろ問題の夜明けが近付いてきました。

〈湖面に朝日が差し込む〉

 まぶしいですね。

 この景色を見ていると、思い出す事があります。

「是非教えて下さい。興味があります!」

 早朝、そうですね、これくらいの時刻に、アズナは良くここで泳いでましたよ。三、四十年位前に遊泳禁止になってしまいましたので、もう泳ぎませんが。

「三、四十年前というと、うちの五代目が亡くなった頃ですね。」

 その頃は今と違って、髪…というか鱗も長くしてましたので、泳ぐと、こう、顔や体に張り付いちゃったりして。

「そうなんですか。…今、見られないのが、ちょっと残念です…。」

 あ、写真があるんですよ!

〈と言って、鞄からスマホを取り出してユウコに見せるアズナ〉

 なんか偶然撮影しちゃったとかで、記念にもらったんですよ。

〈自分が手にしている写真とアズナに見せられた写真を見比べて、固まるユウコ〉

 あの、スズキさん、どうなさいました?

 あ、あれ?

 どうして泣いてるんですか!?

 スズキさん?

 ねぇ、スズキさん?スズキさ~ん?…

〈おあとがよろしいようで…〉

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