小さな魔王様の小さな奮闘記

kuro-yo

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番外編:小さな魔王様の小さな日常

小さな魔王様の小さな贈り物(後日譚)

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「やっとみつけたのじゃー!これが鍵なのじゃー!」

 聖国の神殿地下の物置の中で、マリア姫が、全身埃まみれになりつつ、姫の小さな手には大きな鍵を握った右手を頭上に掲げ、自慢気に言った。

 先日の(姫が主張するところの)宝探しのあと、掘り出した(姫が主張するところの)タイムカプセルはアーネストとリカルドの、二人の護衛騎士二頭のケンタウロスによって聖国に運ばれた。

 肝心の鍵の在り処は、マリア姫が分からないと言うので、鍵が見つかるまで魔王も聖国に滞在する事になった。ちなみに、ケイトは魔国でお留守番である。渋るケイトは、王国の人気カフェのケーキ食べ放題で手を打った。

 そして、マリア姫は魔王とともに、宝箱の鍵を求めて神殿中を探検…もとい、調査したのだった。そして最後に行き着いたのが、地下の物置である。そして、片付けと称して散らかしまくった末に、ようやく鍵は見つかった。

「早速タイムカプセルを開けるのじゃー!」
「その前に姫、湯浴みをしてください。それからお着替えも。全身、埃だらけですよ。」
「そんな事はあとで良いのじゃー!妾は早くミルスに見せたいのじゃー!」
「アーネストの言う通りなのじゃ、マリア。余も湯殿に参る故、二人でともに湯浴みしようぞ。それなら良かろう?」
「…ミ、ミルスがそう言うなら、し、仕方ないのじゃ…」

 神殿の侍女達に連れられて湯殿に入って行く姫と魔王の後ろ姿を見ながら、リカルドが呟いた。

「何だかんだで姫は嬉しそうだなぁ。いっそしばらく魔王陛下を貸しといてもらえまいかなぁ、アーネスト。」
「ケイト殿が拗ねるからそれはやめてくれ。」
「…そういうアーネストはいつまで魔国に留まるつもりなのだ?」
「…それを今言うか、リカルド。あの通りいまだミリシア殿は華奢だからな、成長を見届けるまでは護衛騎士としてお側にてお仕えする。」
「…そりゃ事実上、魔国に骨をうずめるという事だなぁ。」
「…まぁそうなるやもしれん。」

 姫達が湯浴みしている間に、宝箱と鍵は念入りに清拭、消毒された後、姫の私室に運ばれた。そして着替えを済ませた姫と魔王は姫の私室で寛いでいた。

「寛いでいる場合ではなかったのじゃー!タイムカプセルを開けるのじゃー!」
「そうじゃったな。余も楽しみじゃ。」
「…中身はミルスだけに見せたいのじゃー!二人きりにしてくれなのじゃー!」

 姫は侍女達に目配せして人払いした。

 姫は言った。

「…二人きりだから、普通にしゃべろうか、ミルス。」
「はい。姫様がお望みでしたら。」

 二人は席を立って、揃って宝箱の錠の前で膝立ちになった。

「じゃ、開けるよ!」

 マリア姫が鍵を鍵穴に差し込み、軽くくるりと回した。かちりと軽い音がして錠が外れ、気密が緩んだためか空気が出入りする音が短くしゅっと鳴った。

 姫が鍵穴にささったままの鍵から手を話すと、宝箱の蓋は小刻みにかたんかたんという音とともにゆっくりと勝手に開き始めた。

 蓋が開ききってから、二人が箱のなかを覗き込むと、中にはさらに内蓋があり、それを二人がかりで外すと、大量の詰め物がふくらんでむくむくと溢れてきた。

「へー、これが発泡スライム」

 魔王の知識として知ってはいたが、見るのは初めてのミリシアが呟いた。

「という事は三千年前のタイムカプセル…」
「そう。魔王様に見つからないように埋めるの、大変だったんだから。」

 言いながら姫は、詰め物まみれの箱に両腕と頭を突っ込み、菓子折りほどの大きさの細工の美しい小さな箱を取り出した。

「それは!」

 それは、かつて…三千年以上前に、魔王が聖女に贈ったティアラが納められた箱だった。

 魔王の王冠と対になっており、王冠の方は魔国の博物館に納められている。

「どうよ。懐かしいでしょ!」

 そして箱を開けてティアラを取り出すと、姫は恭しく、それをミリシアの頭に載せた。

「まさかあなたがこんな小さな女の子に降臨するなんてねー。」

 魔王は目の端に涙を少し浮かべ、姫の手をとって言った。

「聖女様も、ね。」

 二人はしばし、見つめあった。

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