8 / 8
番外編:小さな魔王様の小さな日常
小さな魔王様の小さな贈り物(後日譚)
しおりを挟む「やっとみつけたのじゃー!これが鍵なのじゃー!」
聖国の神殿地下の物置の中で、マリア姫が、全身埃まみれになりつつ、姫の小さな手には大きな鍵を握った右手を頭上に掲げ、自慢気に言った。
先日の(姫が主張するところの)宝探しのあと、掘り出した(姫が主張するところの)タイムカプセルはアーネストとリカルドの、二人の護衛騎士によって聖国に運ばれた。
肝心の鍵の在り処は、マリア姫が分からないと言うので、鍵が見つかるまで魔王も聖国に滞在する事になった。ちなみに、ケイトは魔国でお留守番である。渋るケイトは、王国の人気カフェのケーキ食べ放題で手を打った。
そして、マリア姫は魔王とともに、宝箱の鍵を求めて神殿中を探検…もとい、調査したのだった。そして最後に行き着いたのが、地下の物置である。そして、片付けと称して散らかしまくった末に、ようやく鍵は見つかった。
「早速タイムカプセルを開けるのじゃー!」
「その前に姫、湯浴みをしてください。それからお着替えも。全身、埃だらけですよ。」
「そんな事はあとで良いのじゃー!妾は早くミルスに見せたいのじゃー!」
「アーネストの言う通りなのじゃ、マリア。余も湯殿に参る故、二人でともに湯浴みしようぞ。それなら良かろう?」
「…ミ、ミルスがそう言うなら、し、仕方ないのじゃ…」
神殿の侍女達に連れられて湯殿に入って行く姫と魔王の後ろ姿を見ながら、リカルドが呟いた。
「何だかんだで姫は嬉しそうだなぁ。いっそしばらく魔王陛下を貸しといてもらえまいかなぁ、アーネスト。」
「ケイト殿が拗ねるからそれはやめてくれ。」
「…そういうアーネストはいつまで魔国に留まるつもりなのだ?」
「…それを今言うか、リカルド。あの通りいまだミリシア殿は華奢だからな、成長を見届けるまでは護衛騎士としてお側にてお仕えする。」
「…そりゃ事実上、魔国に骨を埋めるという事だなぁ。」
「…まぁそうなるやもしれん。」
姫達が湯浴みしている間に、宝箱と鍵は念入りに清拭、消毒された後、姫の私室に運ばれた。そして着替えを済ませた姫と魔王は姫の私室で寛いでいた。
「寛いでいる場合ではなかったのじゃー!タイムカプセルを開けるのじゃー!」
「そうじゃったな。余も楽しみじゃ。」
「…中身はミルスだけに見せたいのじゃー!二人きりにしてくれなのじゃー!」
姫は侍女達に目配せして人払いした。
姫は言った。
「…二人きりだから、普通にしゃべろうか、ミルス。」
「はい。姫様がお望みでしたら。」
二人は席を立って、揃って宝箱の錠の前で膝立ちになった。
「じゃ、開けるよ!」
マリア姫が鍵を鍵穴に差し込み、軽くくるりと回した。かちりと軽い音がして錠が外れ、気密が緩んだためか空気が出入りする音が短くしゅっと鳴った。
姫が鍵穴にささったままの鍵から手を話すと、宝箱の蓋は小刻みにかたんかたんという音とともにゆっくりと勝手に開き始めた。
蓋が開ききってから、二人が箱のなかを覗き込むと、中にはさらに内蓋があり、それを二人がかりで外すと、大量の詰め物がふくらんでむくむくと溢れてきた。
「へー、これが発泡スライム」
魔王の知識として知ってはいたが、見るのは初めてのミリシアが呟いた。
「という事は三千年前のタイムカプセル…」
「そう。魔王様に見つからないように埋めるの、大変だったんだから。」
言いながら姫は、詰め物まみれの箱に両腕と頭を突っ込み、菓子折りほどの大きさの細工の美しい小さな箱を取り出した。
「それは!」
それは、かつて…三千年以上前に、魔王が聖女に贈ったティアラが納められた箱だった。
魔王の王冠と対になっており、王冠の方は魔国の博物館に納められている。
「どうよ。懐かしいでしょ!」
そして箱を開けてティアラを取り出すと、姫は恭しく、それをミリシアの頭に載せた。
「まさかあなたがこんな小さな女の子に降臨するなんてねー。」
魔王は目の端に涙を少し浮かべ、姫の手をとって言った。
「聖女様も、ね。」
二人はしばし、見つめあった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
「次点の聖女」
手嶋ゆき
恋愛
何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。
私は「次点の聖女」と呼ばれていた。
約一万文字強で完結します。
小説家になろう様にも掲載しています。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
異世界召喚された巫女は異世界と引き換えに日本に帰還する
白雪の雫
ファンタジー
何となく思い付いた話なので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合展開です。
聖女として召喚された巫女にして退魔師なヒロインが、今回の召喚に関わった人間を除いた命を使って元の世界へと戻る話です。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
【完結】聖女の私を処刑できると思いました?ふふ、残念でした♪
鈴菜
恋愛
あらゆる傷と病を癒やし、呪いを祓う能力を持つリュミエラは聖女として崇められ、来年の春には第一王子と結婚する筈だった。
「偽聖女リュミエラ、お前を処刑する!」
だが、そんな未来は突然崩壊する。王子が真実の愛に目覚め、リュミエラは聖女の力を失い、代わりに妹が真の聖女として現れたのだ。
濡れ衣を着せられ、あれよあれよと処刑台に立たされたリュミエラは絶対絶命かに思われたが…
「残念でした♪処刑なんてされてあげません。」
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる