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§1
魔王と勇者と聖女と賢者
しおりを挟む幾度も転生を繰り返してきた魔王と勇者(または聖女)。
「…いい加減疲れてきたな。たまには異世界に転生したいな。」
勇者に剣で体を貫かれながら、魔王はぽそりと呟いた。
「…え、魔王も転生するのか?」
魔王の鉤爪で体を切り裂かれた勇者が驚いてそう言った。
「…なんだ、勇者も転生を繰り返しとるのか?」
「奇遇だな。」「いや多分宿命だろ。」
勇者が剣を引き抜き背中から床に倒れ込むと、魔王もまた膝をついて床に突っ伏した。
「…この分では聖女も転生しとるかも知らんな。」
「聖女って私の事なんだが。」
「え?」
「転生するたびに勇者だったり聖女だったりする。ああ、賢者だった事もあったな。」
「賢者!あの時の!ああ友よ!」
「魔王と仲良く暮らせたのは賢者の時だけだったな。」
「勇者よ、次の転生では…余と………ともに…」
「…それも………一興…」
こうして魔王と勇者の二人は、異世界に双子の姉妹として転生するのだった。
~
「むぅ。私と聖女でこの世界を牛耳るつもりだったのに。」
「魔王さん、冗談でもあまり物騒な事を仰ってはいけませんわ。」
「…。」
三姉弟で、そろって教会の庭先でティータイムを楽しんでいたら、双子姉妹が二人の前世の話を始めた。
この世界に魔法は存在しない。
にも関わらず、双子の二人は魔法を使う事ができた。異世界の魂が宿った二人は元いた世界の魔法が使えるらしい。
俺?
俺、セイトの前世の世界には魔法がないからか、残念ながら俺には魔法を使えない。
…ちょっと楽しみにしてたのに。
「セイトも今年で七歳。」
「いよいよお披露目ですわよね。」
「…それを思うと今から気が重いです…」
この世界では聖母や聖人はアイドルのようなものだ。決して病を癒したり奇跡を起こしたりするわけではない。ただただ、教会への求心力としてのみ存在するのである。
「セイトのお披露目が終われば、母上も肩の荷が降りるだろう。」
「そうですね。聖母様のお役目はセイトが引き継ぐのですから。」
「母様は聖母ではなくなるのですか?」
「お役御免だな。」
「普通の女の…子?…に戻るのですね。」
「アリー?そこは疑問符じゃなくて断言して欲しかったわ。」
「母上」「聖母様」「母様」
焼きあがったばかりの手製のクッキーを盆に載せて、聖母マルナリアが子供達三人の座るテーブルにやって来て、私も混ぜてと言いながら席についた。
「母様の聖母のお仕事というのは、どのようなものなのですか?」
「そうね。まずはとにかく聖人を産む事ね。」
「いきなり生々しい話ですね…」
「あら、大事な事よ。…でも、生まれたのはエリーとアリー…、お姉ちゃん達二人だったのよね。それで一度は教会を追い出されそうになったのだけど。」
「私達が乳飲み子のうちは教会に居てもいいという事になったのだな。」
「でも、聖母様のお腹にはまだセイトが居たでしょう?」
「そう、ずっと下り物がなかったから、ひょっとしてもう一人いるのでは、本当は三つ子だったのでは、という事になってね。それでその子が生まれるまでは教会に居ていい事になったのよ。それがセイトね。」
うーん、安穏と胎児でいる間に、外ではそんな事になっていたとは。
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