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第四章
4-21 クレームします!
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俺は、ディートリヒとナズナを琥珀亭に帰し二人で話し合ってもらうこととし、俺一人カルムさんの店に行くこととした。
「カルムさんに会いたい。」
俺の表情を見たボディガードさん、すぐに店に入りカルムさんの部屋まで案内する。
「これはニノマエ様、再度お越しいただけるとは思いませんでした。」
「こちらも一日に二度来るとは思いませんでしたよ。
さて、回りくどい話は避け単刀直入に言います。
何故、ナズナを俺に護衛として付けたんですか?」
俺はカルムさんを直視する。
その表情を見て悟ったのだろう。
「やはりニノマエ様ですね。
そうです。ただの好意ではございません。
私の存在についてもナズナから少しお聞きされたのではないかと思いますし、懐中時計の件もありますので、隠し立てする必要もありませんから。」
「では、何故、ナズナを購入した時に説明してくれなかったのですか?」
「それは、周囲に私の影がおらず、正直な話ができなかっただけです。
カーレル、居るか。」
(は、ここに。)
影のように出てきた男性は、いかにも暗殺者か忍者のような黒ずくめの服を着ていた。
「ここに居ます者はナズナの父、カーレルでございます。」
(ニノマエ様、お初にお目にかかります。)
ご丁寧にあいさつされた。
「うん。こちらこそ初めまして。で、このヒトと正直な話との関連性は?」
「カーレルは暗殺者です。こやつが傍に居ない時は腹を割って話すことを控えております。
先ずは私の本当の職業からお話しします。
私はこの国のエドワルド国王から密命を帯びた斥候でございます。
次に、何故ニノマエ様に関わるのかと申し上げますと、貴方が“渡り人”であるからです。
ニノマエ様は、レルネ、ディートリヒ、伯爵家奥方様、そしてメリアドール様と、貴族の方々に“渡り人”であることを告げられております。
それとスタンピードでの戦略魔法、あの情報が国外に流出すれば確実に他国の脅威となります。
今後、ニノマエ様の力を利用しようとする輩が増え、ニノマエ様の身に危険が及びます。」
「それでビクビク過ごさないためにも護衛を付けるということですか?」
「その通りです。」
「では、ナズナの気持ちは如何ですか?」
「ここに居るカーレルと同じく妖狐族ですから、護衛という命令にさえ従えば良いと思いますが。」
「カルムさん、俺はそこが気に入らないんです。」
俺は少し切れかけていた。
「確かに俺の身は守られるだろうよ。でも、ナズナはどうなんだ?
俺の身代わりになって殉職することがナズナにとって正義なのか?
俺はそうは思わない。
妖狐族にとってそれが正義であれば守ってもらわなくて結構。俺とディートリヒの二人で死ぬよ。
それでお終い『ジ・エンド』それだけだ。
それにな、カルムさんの考えには俺は賛同できない。むしろ反対だ。
あんたは『妖狐族だから護衛という命令に従えば良い』と言った。
それは、暗に妖狐族を見下していることだ。
俺は奴隷とか獣人だとかエルフとかドワーフとか種族なんて関係ない。
みんなが同じ場所、同じ時間を生きているんだ。
そこに身分なんて関係ない。如何に王様だろうとメリアドール様であろうと、誰と誰が上だとか言って優劣を競い合ったり、ヒトを見下したりする奴や、上の者に媚びへつらう奴を見ると反吐が出る、それくらい大嫌いなんだ。
多分、トーレスも絡んでいるんだろ?なら、彼にも言っとけよ。
俺はこの国を守ろうとか、国のためにどうこうしようとは思わない。
俺が渡したモノも、あくまで自分が信頼できるものを見つける手段であるだけだ。
それを政治に使うなら使っても良い。
だが、俺を政治に巻き込むな。俺を政治の餌にするな。
政治に使うというなら、時計の対価を持ってこい!それを手切れとする。
会ったこともない国王様だかエドなんとかさんかは知らないが、向こうさんが好意で何かをしてくることは、こちらにとっては迷惑になるって事もあるんだ。」
俺は一気にまくし立てていた。
腹が立つ、ヒトをヒトとして扱わないこと、こちらの命令が絶対でそれ以外は受け付けないこと、これまでの世界と何ら変わりがない。そんな世界を笑顔にすることなんて願い下げだ。
「確かに俺は“渡り人”だ。
その技術や知識は、この世界に無いくらい進んでいる。
でもな、それをすべて晒すことはしない。
それをすれば、この世界が堕落し滅ぶからだ。
俺の言葉が脅しとしてマウント取られているようにも聞こえるかもしれないが、別に俺一人がどうこうしようと、王様にも皆にも関係ない。
なら、ディートリヒと二人で静かに山奥にでも入って暮らすことにするよ。
それでいいだろ。」
何故か、カルムさんは涙している。
横に居るカーレルさんもうつむいている。
ヤバい。切れて心の中にあるもの、すべてぶちまけちまった…。
まぁ、ここでカーレルさんとやらに殺されてもいいか…、でもディートリヒと一緒に死にたかったな。
なんて思っている。
「ニノマエ様、私どもは間違いを犯しておりました。」
いきなりカルムさんが土下座をする。
何でだ?
「ニノマエ様が仰るように、私はこのカーレルを自分の部下とし命令をさせておりましたが、部下は部下としての考えもあること。上の命令だけではいけないという事ですね。」
「え、あ、はい。そうです。」
「部下の考えを聞き、一緒に考えていくという事ですね。」
「はい。そのとおりですが…。」
「なんと!ニノマエ様は帝王学を極められておいでになるのか!
そのようなお方に我々は何と愚策な事をしていたのか…。
これは王様とて詫びをいれてもらわなくてはいけません。
そうだ!今からでも遅くはございません。早速王都に行き、王様に謁見し、ニノマエ様の考えを王に諫言していただきましょう。そして王の間違いを正しましょう。」
ナンデコウナッタ…?
考えるところはそこじゃないよ。
俺がこの国を出て行っていいかって事じゃん。俺は静かに暮らしたいだけなんだよ。
「あの、国王とは勘弁してください…。
それに帝王学とかは知りません。正直そんなことはどうでも良いことです。
ええと、話を戻しますと、なんだっけ?
あぁ、そうそう、ナズナさんの事です。
彼女を護衛につけるというお話しであれば返品するって事です。
でも、ナズナさん本人が何をしたいのかを尊重してあげてください。
それだけです。」
紆余曲折したが、言いたい事は言えた。
さて、帰ろうか、と思った時、もう一人が話し始めた。
「カルム様、よろしいですか。
我々妖狐族は末代までカルム様に忠誠を誓っております。
それは盟約に基づいておりますが、これまでは盟約と命令をはき違えておったようです。
さらに我々妖狐族も、カルム様の手足となることだけで満足しておったようです。
今一度、我らとの関係をご確認していただき、我ら自らが考える力を与えていただきたいと存じます。」
「そうだな、カーレルよ。
お主らの考えを組んだうえで、より良き体制に持っていこう。」
なんか、手と手を取り合って泣いているよ…。
「で、ナズナさんの事はどうなるんでしょうかね…。」
「それはナズナさん自身で考えます。それが一番でしょう。」
なんか、カルムさんとカーレルさんが真剣に話し始めている。
放置され始めたので、琥珀亭に帰ることにした…。
「カルムさんに会いたい。」
俺の表情を見たボディガードさん、すぐに店に入りカルムさんの部屋まで案内する。
「これはニノマエ様、再度お越しいただけるとは思いませんでした。」
「こちらも一日に二度来るとは思いませんでしたよ。
さて、回りくどい話は避け単刀直入に言います。
何故、ナズナを俺に護衛として付けたんですか?」
俺はカルムさんを直視する。
その表情を見て悟ったのだろう。
「やはりニノマエ様ですね。
そうです。ただの好意ではございません。
私の存在についてもナズナから少しお聞きされたのではないかと思いますし、懐中時計の件もありますので、隠し立てする必要もありませんから。」
「では、何故、ナズナを購入した時に説明してくれなかったのですか?」
「それは、周囲に私の影がおらず、正直な話ができなかっただけです。
カーレル、居るか。」
(は、ここに。)
影のように出てきた男性は、いかにも暗殺者か忍者のような黒ずくめの服を着ていた。
「ここに居ます者はナズナの父、カーレルでございます。」
(ニノマエ様、お初にお目にかかります。)
ご丁寧にあいさつされた。
「うん。こちらこそ初めまして。で、このヒトと正直な話との関連性は?」
「カーレルは暗殺者です。こやつが傍に居ない時は腹を割って話すことを控えております。
先ずは私の本当の職業からお話しします。
私はこの国のエドワルド国王から密命を帯びた斥候でございます。
次に、何故ニノマエ様に関わるのかと申し上げますと、貴方が“渡り人”であるからです。
ニノマエ様は、レルネ、ディートリヒ、伯爵家奥方様、そしてメリアドール様と、貴族の方々に“渡り人”であることを告げられております。
それとスタンピードでの戦略魔法、あの情報が国外に流出すれば確実に他国の脅威となります。
今後、ニノマエ様の力を利用しようとする輩が増え、ニノマエ様の身に危険が及びます。」
「それでビクビク過ごさないためにも護衛を付けるということですか?」
「その通りです。」
「では、ナズナの気持ちは如何ですか?」
「ここに居るカーレルと同じく妖狐族ですから、護衛という命令にさえ従えば良いと思いますが。」
「カルムさん、俺はそこが気に入らないんです。」
俺は少し切れかけていた。
「確かに俺の身は守られるだろうよ。でも、ナズナはどうなんだ?
俺の身代わりになって殉職することがナズナにとって正義なのか?
俺はそうは思わない。
妖狐族にとってそれが正義であれば守ってもらわなくて結構。俺とディートリヒの二人で死ぬよ。
それでお終い『ジ・エンド』それだけだ。
それにな、カルムさんの考えには俺は賛同できない。むしろ反対だ。
あんたは『妖狐族だから護衛という命令に従えば良い』と言った。
それは、暗に妖狐族を見下していることだ。
俺は奴隷とか獣人だとかエルフとかドワーフとか種族なんて関係ない。
みんなが同じ場所、同じ時間を生きているんだ。
そこに身分なんて関係ない。如何に王様だろうとメリアドール様であろうと、誰と誰が上だとか言って優劣を競い合ったり、ヒトを見下したりする奴や、上の者に媚びへつらう奴を見ると反吐が出る、それくらい大嫌いなんだ。
多分、トーレスも絡んでいるんだろ?なら、彼にも言っとけよ。
俺はこの国を守ろうとか、国のためにどうこうしようとは思わない。
俺が渡したモノも、あくまで自分が信頼できるものを見つける手段であるだけだ。
それを政治に使うなら使っても良い。
だが、俺を政治に巻き込むな。俺を政治の餌にするな。
政治に使うというなら、時計の対価を持ってこい!それを手切れとする。
会ったこともない国王様だかエドなんとかさんかは知らないが、向こうさんが好意で何かをしてくることは、こちらにとっては迷惑になるって事もあるんだ。」
俺は一気にまくし立てていた。
腹が立つ、ヒトをヒトとして扱わないこと、こちらの命令が絶対でそれ以外は受け付けないこと、これまでの世界と何ら変わりがない。そんな世界を笑顔にすることなんて願い下げだ。
「確かに俺は“渡り人”だ。
その技術や知識は、この世界に無いくらい進んでいる。
でもな、それをすべて晒すことはしない。
それをすれば、この世界が堕落し滅ぶからだ。
俺の言葉が脅しとしてマウント取られているようにも聞こえるかもしれないが、別に俺一人がどうこうしようと、王様にも皆にも関係ない。
なら、ディートリヒと二人で静かに山奥にでも入って暮らすことにするよ。
それでいいだろ。」
何故か、カルムさんは涙している。
横に居るカーレルさんもうつむいている。
ヤバい。切れて心の中にあるもの、すべてぶちまけちまった…。
まぁ、ここでカーレルさんとやらに殺されてもいいか…、でもディートリヒと一緒に死にたかったな。
なんて思っている。
「ニノマエ様、私どもは間違いを犯しておりました。」
いきなりカルムさんが土下座をする。
何でだ?
「ニノマエ様が仰るように、私はこのカーレルを自分の部下とし命令をさせておりましたが、部下は部下としての考えもあること。上の命令だけではいけないという事ですね。」
「え、あ、はい。そうです。」
「部下の考えを聞き、一緒に考えていくという事ですね。」
「はい。そのとおりですが…。」
「なんと!ニノマエ様は帝王学を極められておいでになるのか!
そのようなお方に我々は何と愚策な事をしていたのか…。
これは王様とて詫びをいれてもらわなくてはいけません。
そうだ!今からでも遅くはございません。早速王都に行き、王様に謁見し、ニノマエ様の考えを王に諫言していただきましょう。そして王の間違いを正しましょう。」
ナンデコウナッタ…?
考えるところはそこじゃないよ。
俺がこの国を出て行っていいかって事じゃん。俺は静かに暮らしたいだけなんだよ。
「あの、国王とは勘弁してください…。
それに帝王学とかは知りません。正直そんなことはどうでも良いことです。
ええと、話を戻しますと、なんだっけ?
あぁ、そうそう、ナズナさんの事です。
彼女を護衛につけるというお話しであれば返品するって事です。
でも、ナズナさん本人が何をしたいのかを尊重してあげてください。
それだけです。」
紆余曲折したが、言いたい事は言えた。
さて、帰ろうか、と思った時、もう一人が話し始めた。
「カルム様、よろしいですか。
我々妖狐族は末代までカルム様に忠誠を誓っております。
それは盟約に基づいておりますが、これまでは盟約と命令をはき違えておったようです。
さらに我々妖狐族も、カルム様の手足となることだけで満足しておったようです。
今一度、我らとの関係をご確認していただき、我ら自らが考える力を与えていただきたいと存じます。」
「そうだな、カーレルよ。
お主らの考えを組んだうえで、より良き体制に持っていこう。」
なんか、手と手を取り合って泣いているよ…。
「で、ナズナさんの事はどうなるんでしょうかね…。」
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