地方公務員のおっさん、異世界へ出張する?

白眉

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第六章

6-15 現状を突き付ける

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「あんたは、妹の為とか思いながら、実は自分も弱いことに気づいていたんじゃないか?
 だから、それをごまかすために、妹を口実にした…。
 俺たちには、そう見える。
実はな、ここに居る俺たちも、訳アリの集まりなんだよ。
そういった奴が集まり、腹割って話すことで、信頼が生まれるようになり、今ではお互いがお互いの動きまで分かるようになってきたんだ。
それが、つい最近の事だ。
なぁ、ディートリヒ、ナズナ。」

「はい、カズ様。」
「お館様、耳が痛い話です。」

「皆、最初は自分の思う事をしていこうとがむしゃらだったよ。
でもな、望んでいないことや恩義背がましい事をされても、邪魔で面倒なだけなんだ。
 それよりも、皆が一周りを見て何をすべきなのかが分かれば、やれることはいっぱいあるもんだ。」

「そうは言っても、闘いに明け暮れた私たちです…。すぐには変えられません…。」
「すぐに変わる必要なんてない。徐々にでいいんだ。
 そして信頼を積み重ねていくことが必要だと思う。」

 俺はお茶を飲み干し、次なる階層に入る準備をする。

「ベリル、スピネル。もし、君たちが命を救った代償として何かしたいと思っているなら、そんな事をする必要はない。だから負い目を感じることではない。
 『借りた仁義は返すのが礼儀、貸した仁義は忘れるのが漢』だからな。
 けど、これからも俺たちと一緒に生きていきたいと真に思う時が来るなら、その時に告げてくれ。
 ディートリヒ、ナズナ、じゃぁ、サクッとボス倒して帰ろうか。」
「はい(はい)。」

 俺たちは休憩を終え、15階層のボス部屋に向かう。

「戦術はどうする?」
「カズ様がこの間のようにするのであれば瞬殺ですが、それでは私たちの経験にもなりません。
 ですので、周りの敵はカズ様が。中央の敵を私どもが倒すという事ではどうでしょうか。」
「オーク・ロードは固いぞ。」
「とは言え、ナズナさんの武器も新しくなっていますので問題ないかと。」
「ナズナ、行けるか。」
「前回のようなヘマはいたしません。」

 ナズナはマナを通して黒く光っているショーテルを見せてくれる。

「それじゃ、ザコと魔導士、アーチャーは俺が倒すという事でいいか?」
「はい。でもできれば魔導士くらいは残していただいても問題はありません。
 それに、ベリルさんとスピネルさんを守る盾が必要ですから、それはカズ様がお願いします。」
「俺、バリアーしか張れんぞ。」
「それで結構ですわ。」
「分かった。では、射程距離に入って魔銃撃ったら下がるって事で。」
「はい(はい)。」

 15階層に到達し、ボス部屋の前に来る。
これまでの戦闘もナズナのお陰で極力避けて来れた。

「ベリルとスピネルはボス部屋に入ったら、俺の後ろで動くな。ザコを掃討している間に敵がくるかもしれないが、そいつらだけ相手にしてれば良い。決して前に出るな。これが指示だ。守れるか?」
「は、はい(はい)。」
「よし、それじゃ、行きますか!」

 全員にバフがかかる。
 俺は魔銃を5%の出力にし、外側から2発の合計4発を発射。併せて光輪を8つアーチャーに当てるべく準備する。

「よし、いくぞ。」

ボス部屋に入っていく。
ディートリヒが走る。ナズナが消える。それを見て俺が外側に2発ずつ魔銃を撃つ。
周囲に衝撃波が来るがそのまま前進。ベリルらに向かっていく魔物はいない。
すかさず、アーチャー4体に光輪を投げつけ息の根を止める。

 よし、おれの仕事は終わり。
後ろに移動し、バリアーを張る。
後はディートリヒとナズナだ。

 ディートリヒは既に剣劇で魔導士4体を瞬殺し、ロードに向かっている。
お、今回はロードが3体か。動きを止めることができるかがカギだな。
ナズナが一体倒しても2体残るが、どうするだろう。
俺は取り敢えず魔銃の準備をしておく。

 ディートリヒは、ロード一体の攻撃を避け懐に潜り込み、既に急所に一撃を差し込んでいた。
早いな…。
と思うや否や、外側のロードの首が飛ぶ…。
ナズナもすごい。
さて、残りの1体をどうするのかと思いきや、ディートリヒが右腕を、ナズナが左腕を切り取っている。
終わったな…。
二人は仲良く急所に剣を差し込み、ロードは消えた。

「は?! ボスですよね…。」

 ベリルが驚愕している。

「あぁ、ボスだ。」
「何で、あんなに早く動いて、ボスに到達…」
「姉さま違います。先ず周囲の魔物を掃討するのが、あれだけ早くできることが尋常ではないのです。」

 スピネルさん、大正解です。
ボス部屋は周囲の敵を如何に早く掃討できるかによって変わるんです。

「これが俺たちの戦い方だ。
 如何に効率よく倒していくことが可能か。体力もマナも使わず進めていけるのか。
 これらを追求した結果、今の戦い方になったって事だ。
 さて、ベリルさん、スピネルさん。
 君たちがこの中に入って闘うとしたら、何をどうすればいけると思うか?
 まぁ、すぐには考えられないと思うから、先ずはドロップしたモノを回収し、宝箱を開けて帰ろう。」

 宝箱の中は、オーク・ロードの盾でした。外れですかね?
転移石で1階に行き、ダンジョンを出る。
そして、来た道を3時間半かけて帰っていく。
そろそろ馬車が欲しいところだけど、馬を飼うと御者も必要だよな…。馬はダンジョン前に施設があるからそこで任せることはできるが…。

 帰り道、いろいろと話をするも、ベリルとスピネルは終始無言だ。
ナズナの時と一緒だな。
まぁ、これまでの生き方を全否定するような戦い方を見れば、そうなるかもしれない。
でも、生き残るためには必要な事であり、それを効率的に動かすには、今はこれが一番だ。

「カズ様、今日は小川でお風呂は入らないのですか?」

 ディーさん、こんな時に…。
 でも、そう言えば、ベリルとスピネルはクリーンをかけただけだよな…。

「ディーさんとナズナは良いけど、あの二人をどうするつもりなんだい?」
「え、一緒に入りますけど。」
「あの…、浴槽がそんなに大きくないですよ。」
「あ、そうでしたね。では、2回に分けて入りますか?」
「2回とは?」
「先ずは私とカズ様とベリルさん。次はカズ様とナズナさんとスピネルさん。」
「何で俺が2回入ることになるんでしょうか…。」
「それはカズ様だからです。」
「それと、彼女たちは奴隷じゃないですよ。俺の指示に従わなくても良いと思いますが…。」
「そこは、私とナズナが説得します。」
「いえ、説得と言っても…。やはり知り合って2,3日のヒトとは…。」

 ヤバい。このままだと押し切られる…。

「なぁ、ディーさん、俺は昨日屋上の風呂に入ったから、今日は中のお風呂に入りたいんだよね。」
「あ、そうですね。では、屋内のお風呂にみんなで入りましょう。」

 あかん…、結論を持ち越しただけで何も変わらなかった…。

「ベリルとスピネルはそれで良いのかね…。」
「良くも悪くも、既にカズ様が所有されていますので。」
「俺、所有なんてしていないよ…。」

「いえ、治療と武具の供給、その他もろもろで金銭奴隷として扱われても良いかと思います。」
「それだと、彼女たちが余計引け目を感じるよ。」
「では…、」
「何もしないのが一番だよ。彼女たちから心を開いてもらうのが一番だよ。」
「そんなものでしょうか…。」
「そんなものだよ。」

 夕方に街に着いた。
市場に寄り、穀物や食材を選びながら家に戻る。
すぐにお風呂を、という声もあったが、皆のお腹が可愛く鳴っていたので、今日はオーク肉とブルの肉をひき肉にしてハンバーグにしようかと思う。
そこで、力のある竜人族の出番だ。

「ベリル、スピネル、少し手伝ってほしいんだけど。」
「はい(はい)…。」

まだ元気がないよね…。
それじゃ、少し元気づけてあげましょうか。
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