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あれから何度もタブレットで動画サイトへとアクセスした。
アップされた動画はかなりの数の再生がされ、コメント欄ではいろんな憶測が飛び交っていた。
他のサイトも見てみると最大限まで引き延ばされた晃成の姿が載せられている。お気に入りの黄色いショッピングバックだけが華やかに光る。ぼやけた緑は長ネギだ。
数歩先も見えないくらいの吹雪の中だからこの程度の写真で済んだ。
これでは個人を特定されることはないけど、性能のいいカメラならしっかり写されてしまったかもしれない。
速報と打った動画も流れていた。
『今回も発見ならず』とドーンとした文字の後に、続く、と出る。まだまだ探しに来るつもりらしい。
まずいな、と晃成は唇をつまみ上げた。
結界を強くすると言っていた通り、連日猛吹雪が続き視界がまともきかないなか、彼らは諦めるつもりがないらしい。
こんな雪深い山に入り込むなんて命知らずが過ぎる。
雪山を舐めていたら命にかかわることを彼らは知らないのか。目の前でいくつもの命の炎が消えていくのを味わって初めて知る恐怖。
どうしたものかと腕組みをしていたら、ひょっこりと雪華が肩に顎を乗せてのぞきこんできた。
「まだやってんのかあ」
その声の温度のなさに慣れているはずの晃成でさえひゅっと息が上がった。
自分のテリトリーに我が物顔で侵入してくる彼らに不快そうに眉をひそめた。温情をかけてもらっているのも知らず、欲望の為だけに荒らす男たちの顔をじっと見つめている。
「そろそろうんざりしてきたな……」
低く唸る。
「誘い込んで殺してしまおうか。たくさん死ねば理解するだろう……そのほうが簡単だな」
感情を伴わない呟きに晃成はフルフルと首を振った。
細に一言伝えればすぐに実行されることは目に見えていた。
冷たさは眠るように命を奪う。あっけないほど簡単に。
静かに忍び寄り自分に何が起きたのかわからないまま永遠に目を覚まさない。
「それは……ダメです」
晃成は振りかえり、雪華の腕を掴んだ。
何度も首を振り「殺しちゃだめです」と続ける。
雪華は首を傾げた。
「なぜ? 邪魔なものは排除すればいいだけだ」
本気でわからないというように不思議そうに晃成を見る。
命を大切にしなければという価値観は人間だけのものなのか?
伝わらないもどかしさに胸がしめつけられる。
「どんな理由があっても生きているものを簡単に殺してはいけないんです」
見つめるブルーの瞳に光はなく、晃成の背を嫌な汗が流れていく。もともと人ではない雪華にとって命とはそこまで尊重されるものではないのかもしれない。
その手の中で凍え亡くなる生き物は無力で生きる価値のないものなのか。
小さく儚い命。だけど何の気まぐれかこうして晃成を生かしている。優しさが一匙でもあればきっと届く。
「お願いします。今度から周りに気をつける。あんな風に撮られたりしないから、殺すのはやめてください」
雪華は何も言わずじっと晃成を見つめ続けた。ゆっくりと首を傾げ考え込むように黙った。やがてふ、と息を吐いた。
「俺はお前に甘いな」
その顔は晃成が見慣れたいつもの雪華のもので、胸をなでおろした。
普段のジャージ姿から想像つかないが、彼の言葉一つ、動き一つで運命が動く。
「これが最後だ」
アップされた動画はかなりの数の再生がされ、コメント欄ではいろんな憶測が飛び交っていた。
他のサイトも見てみると最大限まで引き延ばされた晃成の姿が載せられている。お気に入りの黄色いショッピングバックだけが華やかに光る。ぼやけた緑は長ネギだ。
数歩先も見えないくらいの吹雪の中だからこの程度の写真で済んだ。
これでは個人を特定されることはないけど、性能のいいカメラならしっかり写されてしまったかもしれない。
速報と打った動画も流れていた。
『今回も発見ならず』とドーンとした文字の後に、続く、と出る。まだまだ探しに来るつもりらしい。
まずいな、と晃成は唇をつまみ上げた。
結界を強くすると言っていた通り、連日猛吹雪が続き視界がまともきかないなか、彼らは諦めるつもりがないらしい。
こんな雪深い山に入り込むなんて命知らずが過ぎる。
雪山を舐めていたら命にかかわることを彼らは知らないのか。目の前でいくつもの命の炎が消えていくのを味わって初めて知る恐怖。
どうしたものかと腕組みをしていたら、ひょっこりと雪華が肩に顎を乗せてのぞきこんできた。
「まだやってんのかあ」
その声の温度のなさに慣れているはずの晃成でさえひゅっと息が上がった。
自分のテリトリーに我が物顔で侵入してくる彼らに不快そうに眉をひそめた。温情をかけてもらっているのも知らず、欲望の為だけに荒らす男たちの顔をじっと見つめている。
「そろそろうんざりしてきたな……」
低く唸る。
「誘い込んで殺してしまおうか。たくさん死ねば理解するだろう……そのほうが簡単だな」
感情を伴わない呟きに晃成はフルフルと首を振った。
細に一言伝えればすぐに実行されることは目に見えていた。
冷たさは眠るように命を奪う。あっけないほど簡単に。
静かに忍び寄り自分に何が起きたのかわからないまま永遠に目を覚まさない。
「それは……ダメです」
晃成は振りかえり、雪華の腕を掴んだ。
何度も首を振り「殺しちゃだめです」と続ける。
雪華は首を傾げた。
「なぜ? 邪魔なものは排除すればいいだけだ」
本気でわからないというように不思議そうに晃成を見る。
命を大切にしなければという価値観は人間だけのものなのか?
伝わらないもどかしさに胸がしめつけられる。
「どんな理由があっても生きているものを簡単に殺してはいけないんです」
見つめるブルーの瞳に光はなく、晃成の背を嫌な汗が流れていく。もともと人ではない雪華にとって命とはそこまで尊重されるものではないのかもしれない。
その手の中で凍え亡くなる生き物は無力で生きる価値のないものなのか。
小さく儚い命。だけど何の気まぐれかこうして晃成を生かしている。優しさが一匙でもあればきっと届く。
「お願いします。今度から周りに気をつける。あんな風に撮られたりしないから、殺すのはやめてください」
雪華は何も言わずじっと晃成を見つめ続けた。ゆっくりと首を傾げ考え込むように黙った。やがてふ、と息を吐いた。
「俺はお前に甘いな」
その顔は晃成が見慣れたいつもの雪華のもので、胸をなでおろした。
普段のジャージ姿から想像つかないが、彼の言葉一つ、動き一つで運命が動く。
「これが最後だ」
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