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第一章 First love
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ファンです♡と太一を追いかけてくる彼らとは違って先輩には下手にかかわらない方がいい気がした。
好意がないから、なおさらだ。
気を持たせたり思いを深くされる前に手を打たないと、のちのち厄介なことになりそうだった。
だけど先輩は立ち上がり蜜の腕をギュっと掴んだ。
「一緒に走ってくれるよね?」
「いや、先輩無理をしない方がいいですよ」
「大丈夫!」
止めるのも聞かずヒョコヒョコと足を引きずりながら蜜の隣を並走しようとする。
「こんなところで会えるなんて、ラッキーだったな。これって運命かもしれないよね」
隣で太一がブンブンと首を振っている。
「や・め・と・け」と音に出さず警告してくれるけど、蜜にはどうしていいのかわからない。
間違いなく足を痛めている先輩はこれ以上走ることはできないだろう。もう無理はできないはずだ。
だけどすがる先輩を断って置いていくのはさすがにひどくないか。
困る蜜に後ろから走ってきた人が声をかけたのはその時だった。
今度は何だと振り返ると、そこには周防がいた。
「おーい、大丈夫か? なんかあった?」
「先生!」
ホッとしてしまった。
周防が来てくれたらなんとかなると思ってしまう。安堵が顔に出たのだろう、周防は安心させるようにゆっくりと近づいてきた。
「どうした~?」
「先輩が足を痛くしたみたいで」
「でも無理しようとしてるから、なあ」
太一と口々に説明すると周防はしゃがんで先輩の足の状態を確認し「あ~これは痛そうだなあ」と言った。
「腫れてきてるし。普段運動なんてしてないだろ」
「え、はい、そうですけど……」
「負担がかかりすぎたのかもな。棄権した方がいい」
「でも」
名残惜しそうに蜜を見る。
蜜は頷いて周防の言葉を肯定した。
「そうです、無理しない方がいいですよ。棄権してください」
「それがいいと思います」
蜜の心配を受け取った先輩は感極まったように涙を浮かべた。それにはみんながギョっとする。
「わかった。蜜くんにこれ以上心配かけるわけにはいかないもんね。優しくしてくれて、嬉しい」
「や、そういう……」
面食らう蜜に周防は頷いた。
「ここはおれが対応するからもう行っていいよ。大丈夫だから」
ヒラヒラっと手を振って先を促した。
「こういう時のために先生っていうのはいるんだからさ。だからお前らはさっさと走る」
「うげ!」
できればここで一緒に棄権したいところだが。
「蜜くん!」
先輩は潤んだ瞳で蜜を見つめ、ハグをしようと腕を広げた。
「君にエールを送るよ!」
だけど遮るように周防は先輩の足を固定し動かないようにしてしまった。そして周防の背中に隠されるように距離があく。
「おいおい動くなよ、今救護班呼ぶから大人しくしろって」
「ちょ、邪魔……」
思わず本音を漏らす先輩を抑えながら、周防は先生の笑顔を浮かべた。
「これ以上悪化させないように座っててな」
早くいけ、と後ろ手に合図を送る。
それを見て蜜と太一は再び走り出した。
好意がないから、なおさらだ。
気を持たせたり思いを深くされる前に手を打たないと、のちのち厄介なことになりそうだった。
だけど先輩は立ち上がり蜜の腕をギュっと掴んだ。
「一緒に走ってくれるよね?」
「いや、先輩無理をしない方がいいですよ」
「大丈夫!」
止めるのも聞かずヒョコヒョコと足を引きずりながら蜜の隣を並走しようとする。
「こんなところで会えるなんて、ラッキーだったな。これって運命かもしれないよね」
隣で太一がブンブンと首を振っている。
「や・め・と・け」と音に出さず警告してくれるけど、蜜にはどうしていいのかわからない。
間違いなく足を痛めている先輩はこれ以上走ることはできないだろう。もう無理はできないはずだ。
だけどすがる先輩を断って置いていくのはさすがにひどくないか。
困る蜜に後ろから走ってきた人が声をかけたのはその時だった。
今度は何だと振り返ると、そこには周防がいた。
「おーい、大丈夫か? なんかあった?」
「先生!」
ホッとしてしまった。
周防が来てくれたらなんとかなると思ってしまう。安堵が顔に出たのだろう、周防は安心させるようにゆっくりと近づいてきた。
「どうした~?」
「先輩が足を痛くしたみたいで」
「でも無理しようとしてるから、なあ」
太一と口々に説明すると周防はしゃがんで先輩の足の状態を確認し「あ~これは痛そうだなあ」と言った。
「腫れてきてるし。普段運動なんてしてないだろ」
「え、はい、そうですけど……」
「負担がかかりすぎたのかもな。棄権した方がいい」
「でも」
名残惜しそうに蜜を見る。
蜜は頷いて周防の言葉を肯定した。
「そうです、無理しない方がいいですよ。棄権してください」
「それがいいと思います」
蜜の心配を受け取った先輩は感極まったように涙を浮かべた。それにはみんながギョっとする。
「わかった。蜜くんにこれ以上心配かけるわけにはいかないもんね。優しくしてくれて、嬉しい」
「や、そういう……」
面食らう蜜に周防は頷いた。
「ここはおれが対応するからもう行っていいよ。大丈夫だから」
ヒラヒラっと手を振って先を促した。
「こういう時のために先生っていうのはいるんだからさ。だからお前らはさっさと走る」
「うげ!」
できればここで一緒に棄権したいところだが。
「蜜くん!」
先輩は潤んだ瞳で蜜を見つめ、ハグをしようと腕を広げた。
「君にエールを送るよ!」
だけど遮るように周防は先輩の足を固定し動かないようにしてしまった。そして周防の背中に隠されるように距離があく。
「おいおい動くなよ、今救護班呼ぶから大人しくしろって」
「ちょ、邪魔……」
思わず本音を漏らす先輩を抑えながら、周防は先生の笑顔を浮かべた。
「これ以上悪化させないように座っててな」
早くいけ、と後ろ手に合図を送る。
それを見て蜜と太一は再び走り出した。
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