滅びの国のアリス

√月

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ocean

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店をでて、北の方へ向かって行く道で、私は少年といろんな話をした。
彼は小学生くらいの年齢ぽくて、犬っぽい顔をしていた。

「ねぇ、君、名前は?」

「僕はハイン。お姉さんは?」


「私は有清。苗字は…いいか。」

名前を言うと、ハインは眼を丸くした。

「有清…女神様の名前もアリスなんだよ。偶然、なのかな。顔もよく似てるし…」

なるほど、そういうことか。

「残念だけど、私はみんなの知ってるアリスじゃないんだよ。私と一緒に旅してる子も最初は私とアリスを間違えちゃってね。」

ふーん…と、ハインは一旦黙り込んだ。

あ、そういえば、ラビを置いてきてしまった。また後で合流できるだろうか。少し不安だが、街に行けば誰かが私達のことを伝えてくれるだろう。

「ハイン、お婆さんって、どんな人なの?」

そう聞くと、ハインは待ってましたと言わんばかりに眼を輝かせ話し始めたた。

「お婆さん…カレンって名前なんだけど、本当に凄いんだ!カレンは神様とおしゃべりが出来るんだ。守護霊の力ってゆーらしいんだけど、一回見せてもらったことがあって…」

ハインはひたすら、彼女について喋り続けた。

カレンのいう名のお婆さんは、守護霊を通じて神様と会話をすることが出来るらしく、アリスの居場所もそれで知っているらしい。いわば預言者、神の使いとも言うべきか。だが、預言など誰も信じず、神様さえ信じていないらしい。この世界に必要なのは神ではなく女神、アリスらしい。

「でも、神様はいるんだよ。アリスは元々人間なんだ。神様が、それぞれのワンダーランドからアリスに見合う人を選んで女神にしてるんだよ。」

だから神様はいるんだ!とハインが熱弁していると、視界に、小さな影がぼんやりと映ってきた。

「あ。あれがカレンの家だよ。おーーい!カレン!」

ハインが走り出したので、私もつられるように走る。
それにしても、ここの空気はなんとも重い。さっきまでの街と違って、暗くて霧が立ち込めている。まるで何か出そうな…

「お嬢ちゃん…みないかおだねぇ。」

「きゃああっ!」

突如目の前に現れた人に、私は驚いて後ろに倒れてしまった。霧のせいでなにも見えてなかった。まさか人がいるなんて…

「有清!どうしたの?……あ、カレン!」

ハインが嬉しそうにその人に抱きついた。この人がカレン?霧が濃いせいで、まだ顔がはっきりと見えない。

「おやおやハイン、またここに来たのかい?…しかもお客さん付きで。」

そう言うと、カレンは私の方に向き直って、じっと見つめてきた。

「ふぅん…またおかしな子を連れてきたもんだねぇ。いいよ、二人とも家に入れてあげよう。話はそこでしようかねぇ、異世界のお嬢さん?」

「え?なんで知って…」

私の言葉を聞かずにカレンはハインを連れて進んでいくので、私も後ろからついて行った。

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