47 / 47
優しい人・最終話
しおりを挟む手切れ金…
頭にはそれしか浮かばない。
封筒の分厚さを見て、手に取り重さを感じ、そして中を見てやはり思った通りで…。
千佳史の耳を、志賀の父親の言葉は素通りし、脳を絶望が埋め尽くした。
さっき、父親の言葉に頬を紅潮させて感涙を流した滝の顔が、一瞬にして変わり、色を失う。
篤仁には滝の心が、口になどしなくても手に取るように解った。
篤仁は瞬間的に爆発した。
「アンタなぁ!今、俺らの写真見て言うた言葉は何やったんや?!こんなもん…こんな金なんか、よう平気で滝さんに渡すのォ!!慰謝料やったら桁がちゃうわい!手切れ金やったら、滝さんやのうて、俺が貰とく!!親子の縁、切ったるわ!帰ろ、滝さん!」
ソファから立ち上がった篤仁は、滝の手を掴んだ。
「志賀っ!そんなんアカン!アカン…ッ…俺は、ええ…から」
篤仁の剣幕に、滝がたじろぐ。
「ちょ…ちょう、待て。座れ、篤仁。…滝くん、違うよ?篤仁、違うんや。…これは、そんな金とちゃう。勘違いするようなことして悪かった。謝る。先に言うべきやった。封筒にまだ、入っとるやろ?手紙と…何か小さいの、見てくれる?」
真っ青な顔の滝に、必死で優しく父親が話しかける姿を見て、篤仁の怒りは少し静まる。
「……ほんなら…滝さん?見れる?大丈夫?俺が見よか?」
中を見て、センターテーブルに置いた封筒を見つめる滝に声をかけた。
篤仁の父の話しに、頷きながらも、まだ全然固いままの表情の滝は、それでも、篤仁の申し出に首を振り、白い封筒に震える手を伸ばし、中に入っていた手紙を開いて読み出した。
篤仁と父親が見守る中、滝の顔が歪む。
涙が溢れて零れ、その頬を幾筋もの涙が伝っては、細く少し尖った顎からポトポトと落ちて、滝のスラックスに落ちた。
引きつけを起こしはしないかと心配になるような嗚咽を漏らしながら手紙を読む滝に、篤仁も父親も、触れることも
「大丈夫?」
と、声をかけることも何故か出来なかった。
激しく嗚咽しながらも、手紙を読みながら何度も頷く、その姿はまるで、もうここにはいない母と、滝が、会話しているように見えたから…
全てを読み終えた様子の滝は、手の甲や掌で頬と顎を拭き、封筒の中を覗いて、中の物をコロンと出して、ギュッと握って、わぁ…と泣き出した。
激しく嗚咽する滝の横に座ってその肩を抱き
「読んでもええ?」
と篤仁が聞くと、滝は、ハッ…ハッ……と嗚咽を収め、必死で声を出そうとしたが、出来ないと諦めたのか、何度も頷いて了承の意思を示した。
父を見ると、こちらも感極まった表情で頷いた。
━━━━━━
滝様。
不躾をお許し下さいませ。
私は、以前、あなた様のお顔にバッグを投げ、怪我を負わせました志賀篤仁の母、貴子でございます。
何から申し上げれば良いのか解りません。
あの時の私は気が違っておりました。
いきなり、探偵を名乗る方から、篤仁が男性と同棲していると告げられたショックで、心に悪魔が入り込んだのでしょう。
あんな酷いことをしておきながら、血を流すあなた様を救おうともせず、その場を辞したこと、悔やみます。
あの時、あなた様が、篤仁とは関係ないのだ、ただの先輩後輩だ、と仰られたのに、聞く耳を持てず…。
滝様。
私は、過日、膵臓癌の宣告を受けました。
主人は予後はいいのだ、と言い張りますが、それは嘘です。
私の命はもう、残りわずか。
これから私が書く事は、どうか、死にかけの戯言と、読み流して頂ければと思います。
あれから、暫くして、篤仁が戻り、萌花さんと結婚致しました。
ですが、本人達は元より、私共も、向こうのご両親も、何か噛み合わぬ不自然を感じずにはいられない結婚生活を送っております。
もちろん、幸せでないとは言いません。
萌花さんは素晴らしい女性で、篤仁には勿体ないほど。
よく気がついて、我儘で子供のままの篤仁の世話を、私より上手にやいてくれています。
滝様は、萌花さんともお知り合いだとか…。
先日、彼女が滝様は本当に心の綺麗な、優しい方だと、篤仁は多分、滝様を想っていると私に教えました。
それでも、自分は篤仁を諦められず、こうして居座っています、と笑っていました。
もちろん私は、そんなことはない、篤仁の心にはあなた一人よ、と言い切りました。
でも、その夜、主人は私にバレているとは知らないのですが、彼が隠し持っている探偵さんから持ち込まれた写真を眺めていると、どうしても篤仁の想い人は、滝様だと思えてきて、それは確信に変わりました。
あなた様の美しさはもちろん、そのお姿の全てから滲み出る優しさが、あなた様を知らない私にさえ伝わってきて、まるで、観音様を見るようでした。
一人目の子供で、男子。
私は篤仁を厳しく躾ました。
1日中、ガミガミと怒っていたかも知れません。
その反動か、篤仁は一時期、食べ物でも、動物でも、遊びでも、どんな物やことについても
「好きなのは?」
と聞かれると
「優しい人」
と答えていた時期がありました。
「好きな色は?」
「優しい人」
「好きな場所ある?」
「優しい人」
「何するのが好き?」
「優しい人」
といった感じです。
幼稚園に入るか入らない歳頃でした。
その時の私は、あろうことか、篤仁の発達障害を疑い悩みました。
でも、ある日、寝かしつけに行くと、ちょうど篤仁が、1冊の絵本を枕の下に入れるのを見て
「そんなとこに本なんか入れたらあかんよ?頭痛い、なるよ?」
と、取り出すと、それは、私が読んであげたことのある《やさしいひと》という絵本でした。
何を聞いても
「優しい人」
と答える息子。
怒ってばかりの母親に
「優しくして。僕は優しい人が好きや」
というメッセージだったというのに、私は、発達障害を疑った。
申し訳なくて
「こんなお母さんでごめん」
と、篤仁を抱きしめて泣いて謝りました。
篤仁本人の記憶にあるかどうかは解りませんが、あなた様の写真を見て
「優しい人、優しい人」
と、言っていた幼い日の篤仁を思い出して泣けました。
私は、下らない常識に囚われ、とんでもないことをしでかしてしまったのかも知れない。
篤仁の人生を、滝様の人生を、萌花さんの人生をも狂わせてしまったのかも知れません…
今となってはもう、取り返しのつかないことでございますが、本当に、愚かな母でございました。
神様も呆れて、早々に私の人生を切り上げ、上に参りましたら、この馬鹿者とお叱りになるおつもりなのでしょう。
最後になりましたが、同封した金員は、私が姉と旅行に行く為、積み立てていたものです。
これで足りない場合は、主人からの婚約指輪も入れておきましたので、これをお金に替えて頂きたく…
別紙に記しました形成外科が、評判がよく、時間の経過した裂傷でも、魔法のように綺麗に治す、ということでした。
実際に、私が医院の場所まで参りまして、出てこられる患者様を捕まえては、どんな感じかお聞きしたので、間違いはないと思います。
ある方は、交通事故で、錆びた鉄板で酷い裂傷を受けられた、ということで、ケロイドのようになって3年経過した傷を、何もなかったように治してもらった、ということでした。
滝様。
私があなた様に働いた無礼と暴行の罪が消えるとは思いません。
ですがどうか、せめて、美しいお顔に傷をお残しくださいませぬよう、と、お祈りすることだけはお許し下さいませ…
そしていつか、篤仁に会って、綺麗に治ったお顔を見せてやってもらえませんか?
勝手なことばかりを申し上げました。
余命幾ばくもないと思いますと、人間、厚かましくなってどんなことでも言えるものですね。
滝様、どうかどうか、健やかでいてください。
あなた様の人生が、幸せに輝くようにと、心より願っております。
志賀貴子
━━━━━━
癌に蝕まれた体で、何軒もの形成外科で、出てくる人、出てくる人に
「ちょっとすみません」
と、お辞儀をしながら話しかけ、聞き回る母が見えるようだ。
「おふくろ……おふくろ、ありがとうな……ごめんな、俺…」
千佳史の肩を抱いたまま、泣きじゃくる篤仁の頭を、父親がガシッと握るようにして撫でる。
昔から、篤仁の習い事一つでも、全ての場所を訪ね、見て、聞き回って納得行くまで徹底して探し、確実な所に決める母だった。
「母さんはな、解っとったんや。お前の気持ち。でも、あんまりにも悪うて、口に出せんかったんやろう…」
「気にしとったんや…それは…知っと…知っとった……あの人、どうしてはるやろか…傷、残ったやろか…って気にしとった…」
頷く父の目にも涙が光る。
「滝くん。どうかそれを…受け取ってやってもらえませんか?そんでね、傷、綺麗に治して、妻に…見せてやってくれんだろうか?」
もう、言葉など言えない滝は、ただ何度も頷いている。
「報告…しよか、おふくろに…な、親父」
「おお、そやな。滝…ああ、ちょっと滝くん、言うのもな…千佳史くん…」
「…はぃ……」
滝がやっと、声を出した。
日本間に移動し、父が仏壇を開く。
篤仁と滝は、母の前に2人で並んで座った。
―ああ…目は…お母さんなんや……
そこにはあの日、鬼のような顔で自分を見た女性とは思えない、愛にあふれた母親がいた。
志賀は、この人に守られていたから、こんなに無邪気で奔放な可愛い男になったのだ……
「あ…」
写真の中で微笑むその人は、志賀にそっくりの垂れ目に片笑窪。
「何?」
志賀が問いかけてくる。
「片笑窪…」
「ああ、そうやね。篤仁と母さんは片笑窪が出来る。私と娘にはないんやけどね」
後ろに座った志賀の父親が笑う。
「篤仁、お前の伴侶をお母さんに紹介せえ」
父親が志賀を促す。
「おう…。滝さん、こっち。前」
志賀が千佳史の両肩を抱いて、母親の写真の前に出す。
「おふくろ、滝さん連れて来たで?萌花が、気が済んだ、って。自由になりたい、って。…あいつ、俺の心、お見通しで婚姻届、出してなかったんや…。俺、滝さんにプロポーズした。滝さん、俺と結婚してくれたで?ずっと一緒におってくれる、って。哲ちゃん兄ちゃんとこでな、ペアのネックレス、作ってもうた。見て?これ、2つ、合わせたらハートやねん。……見てくれよ、おふくろ…滝さん、相変わらず綺麗やろ?今日、はな…滝さん、スーツや……一段と…ええやろ?……滝さんも何か、言うたって?」
頷いて息を吸う。
「滝…千佳史です……」
胸が詰まる……
「滝さん……?」
キュッ…と、肩を抱いてくれている手に力が入る。
振り返れば、大好きな大好きな笑顔。
写真のお母さんと同じ場所の片笑窪……
「大…谷…形成外科…行って来ます……ほんとに…ありがとう……ございます…綺麗になったら…また、見せに…来ます……俺…幸せです……あなたの篤仁さん、の…お陰で、幸せに……なりました……」
「これな、これがその《やさしいひと》や。お母さんの大事な物を入れてある箱の中に、ほら、こんなに綺麗に包んでな…」
父親が、綺麗な桃色の紙で包んだ小さな薄い絵本を取り出した。
小さな丸い顔に、にっこりと笑った顔のイラスト。
1頁、1頁、その顔と一言が書いてある。
『やさしいひと いつもわらって いてくれる
やさしいひと ぼくをつつんで わらってる
やさしいひと なにがあっても やさしくて
やさしいひと じぶんのことは あとまわし
やさしいひと いつもそこに いてくれる
やさしいひと ぼくもいつか やさしいひと』
「川柳や……」
「あ!そっか!」
志賀が大きな声を出した。
「何や?」
「え?」
志賀の父も千佳史も大声を上げた志賀を見た。
「いや、滝さん。俺《千流》のHPに川柳あげたでしょ?会いに行った、前の日に」
「あ!…ああ、やっぱりあれ…」
「うん、あれね。あれ、書くとき、書こう!って思ってから1週間くらい考えてなかなか浮かばんくて…でも、最初の、優し人、っていうのは、ずっと頭の中にあって、紙に〝優し人〟って書いたまま、考え込んでたんよ。そっか、そうや!…これ、この絵本の内容が、忘れとったけど、記憶に残っとったんやわ」
「そっか……」
千佳史は《やさしいひと》の絵本をじっと見つめ、もう1度、1頁から捲って声に出してみる。
「優しい人 いつも笑って いてくれる…。優しい人 僕を包んで 笑ってる…。優しい人 何があっても 優しくて…。優しい人 自分のことは 後回し…。優しい人 いつもそこに いてくれる…。優しい人 僕もいつか 優しい人…」
「優しい…人…」
呟く。
「そ。優しい人」
志賀がにっこり微笑んで抱きしめてくれた。
その上から、志賀の父親が2人を抱いた。
「この人もな、優しい人やったんや」
愛おしそうに写真の妻を見る瞳。
「ああ、そや」
志賀が頷き、千佳史も頷いた。
愛する人と、その父親の温もりを全身で受け止めながら、千佳史は、写真の中で笑う優しい人を見つめ、微笑み返した。
それから、すぐに大谷形成外科で形成術を受け、瞼は文字通りの元通り、怪我などなかったかのように消えてしまった。
「元々綺麗けど、もっと綺麗なったー!」
志賀が喜んで、そこにキスして舐めまくるから、逆にそれで腫れるかと心配するくらいで。
そして1年後━━━
相変わらず天真爛漫な志賀が傍に居て。
千佳史は《千流》に通い、日々、みんなの悩みに付き合って、泣いたり笑ったり…。
一つ、加わったことは…
「お義母さん、来たよ~。〝おかあさん 今日は百合の 花ですよ〟てな~」
昼間は仕事の篤仁は誘わず、毎月命日に、鼻歌まじりに義母の墓を掃除し、花を換えること―。
ーfinー
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
タトゥーの甘い檻
マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代)
どのお話も単体でお楽しみいただけます。
「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」
真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。
それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。
「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。
アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。
ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。
愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。
「……お前のわがままには、最後まで付き合う」
針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。
執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
happy dead end
瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」
シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
この冬を超えたら恋でいい
天気
BL
夜の街で、凪は人生の底にいた。
古いアパートに帰る途中、父の残した借金の取り立てに絡まれ、逃げ場を失う。
そこに現れたのは、大手企業の社長・鷹宮だった。
偶然の救い。年齢も立場も違う二人は、その夜を境に交わることになる。
事情を多く語らない凪は、不幸が当たり前のように身にまとい、誰かに頼ることを知らない。
一方の鷹宮は、完璧な成功者として生きてきた男だった。
危険から守るため、鷹宮は凪を一時的に自宅へ迎え入れる。
冬の同居生活の中で、凪は少しずつ日常を取り戻していく。
大学へ通い、温かい食事をし、夜を一人で怯えずに眠る。
しかし、守られることに慣れない凪は、距離が近づくほどに自分から一歩引いてしまう。
それは、失うことを恐れる、健気で不器用な選択だった。
一方、鷹宮は気づいてしまう。
凪が笑うだけで、胸が満たされることに。
そんな自分の感情から凪を守るつもりで引いた距離が、
凪を遠ざけてしまう。
近づきたい。
けれど、踏み込めば壊してしまうかもしれない。
互いを思うほど、すれ違いは深くなる。
2人はこの冬を越えることができるのかーー
【完結】君の穿ったインソムニア
古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。
純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。
「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」
陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる