おかえりなさい、シンデレラ(改訂版)

daisysacky

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第2章 君は誰?

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「キミは…キミの名前は…シ…シ…」
 あれだけ探し求めていたはずの人の名が…
どうしてなのだか、ちっとも出て来ない。
(ボクは一体、どうしたというのだろう?)
ボケてしまったのか?
まさか、記憶喪失?
スッポリと、あの美しい女性のことを…
あの快活な瞳も、軽い身のこなしも、カモシカのようなほっそりと
した足も、アスリートのように駆け抜ける、すばしっこさも、
声もすべて…思い出せないことに、気が付いた。
(おかしいのは…このボクだ!)
 そう気が付くと、王子はガクゼンとする。
それでもまだ、その記憶の断片にしがみつくように、
「ね、あの時のこと、覚えてない?
 じゃあ、昨日のことも?」
すがりつくような目で、その年若い少女に聞いた。

 確かに昨日は…あの奇妙な老婆に連れられて(魔法使いだったそうだ)
彼女のことを、迎えに行ったのは、かろうじて覚えている。
むしろ、それだけはウソではない、と信じていた。
 光りの輪の中から、現れた彼女を見て、とっさに
(これは、あの人ではない!)
反射的に、気付いたのだ。
一瞬光の中に、かすかに透けるように…あの人の姿が見えたはずなのに…
なぜなのか、
どうしてなのか、
その人はこちらには来ないで、光の中に溶け込んで消えてしまったのだ。
まるで、霧が晴れるように…
光りが消えて、残されたのは、今目の前にいる、この女の子だ。
 だが…悲しいことに、肝心のあの人の顏が思い出せない。
(なぜなんだ?)
時間がたてば、たつほどに…残された面影が、自分の記憶から消えていく。
頭に浮かぶのは、のっぺらぼうになった、女性の姿なのだった。

「キミって、あの時の人じゃないよね?
 君って、だれ?」
なおもあきらめきれずに、その女の子に聞くと、ようやくすっぽりと
かぶっていた掛け布団を、あごの下まで下げると、彼女は大きく目を
見開く。
「あなたって、もしかして…王子様なの?」
ひどく驚いた顔をして、そう聞く。
(一国の王子の顏を、知らないの?)
王子はそれにも、驚いていた。

 そうして彼女は、幼い頃によく読んでもらっていた、絵本を思い出す。
(あれは、なんだった?
 王子様とお姫様の話だ…
 12時の鐘?舞踏会?
 もしかして、これって…)
 黙り込んで考えていると、ようやく王子がじぃっとこちらを見ているのに
気が付いた。
「そうだけど…キミは?」
怪しむように、おそるおそる聞いてみる。
すると彼女は、とんでもないことを口にする。
「私はあの…シンデレラじゃないわ。
 私の名は…信子よ!」

 シンデレラ? 
 そう、シンデレラだ!
ようやく王子は、自分の間違いに、気付くのだった。
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