おかえりなさい、シンデレラ(改訂版)

daisysacky

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第6章 あの子は身代わりプリンセス

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 これでも城下を視察しに行くと、女たちの熱い視線を感じて
いたものだが…
それも気のせいだったのか、と王子は少しばかりガッカリとする。
さらに大臣の息子から、自分のことを
『憧れの王子、プリンスチャーミング』と謳われているのだ、と
聞かされていたのだが、それも実はウソだったのか…とも思う。
 これでは、形無しだ。
 とんだ、ドンファンだな、とひどくガッカリするけれども、
もしかしたら彼女が単に、恥ずかしがり屋なのではないか…
と、急にそんな考えが、頭をもたげてきた。
(なんとこの姫は…奥ゆかしくて、可愛い人なのだろう)
そう思うと、あの夢の中で見た、エネルギッシュで、はつらつとした
女性とは違うけれども、それでもいいのではないか、と思えて来る。
(何と単純なのだろう)
そう思うけれども。
あの女性が、かもしかだとしたら、この人は、野に咲くスミレのような、
可憐な人なのだ…と、王子は微笑ましく思うのだ。

 そうして王子は、彼女の側に近付くと、
「キミを、何と呼んだらいいの?」
さり気ない調子で聞く。
「いつまでも、キミと呼んでちゃあ、ダメだろ?」
王子の言葉に、彼女の目が、ようやく反応してこちらを向いた。
そんなことなど、考えてもいなかったようで、彼女は少し
頭をかしげる。
そうして思いきったように、口を開くと
「信子」とつぶやく。
「えっ?」
するとまっすぐに、王子を見上げると
「信子!信子と呼んでください」
今度はハッキリと、そう告げた。
「ノブコ…」
驚いたように、目を見張ると、王子は口の中で、何度も小さく
つぶやいた。

 ノブコ…シンコ…?
 いや、違う。
 あの人の名前は、そんな名前ではない。
頭の中では、そう思うけれども、目の前にいるこの少女は、はにかみながらも
じっと彼のことを見ている。
「そう…信子ね?
 信子ちゃんでいい?」
すると信子は少し考え
「家族は私の事、ノブちゃんと読んでいました」
今度はキッパリとそう言う。
「ノブ…?」
まだ考え込む王子に気付くと、あわてて信子は
「じゃあ…のんちゃんでいいです」
そう言いながらも、ぱぁっと顔を赤らめる。
「そう、わかった」
王子は、思わずひと目でポッとするくらい、爽やかな笑顔を浮かべる。
真珠のように、きれいに粒のそろった、真っ白な歯を見せると…
急に信子は恥ずかしそうに、コクコクとうなづいた。
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