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第15章 ラストチャンスは突然に?

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「お腹、空いた?
 今晩、何か食べたいもの、ある?」
 助手席から、カスミさんが振り返る。
信子は頭を振って、
「別に、何も…」
遠慮がちにうつむく。
まだ落ち着かなくて、信子は胸がいっぱいなので…
食欲など、まるでわかないのだ。
 そんな信子を見やると、
「だけど、何だかうれしいわ!
 新しい妹が出来たみたいで!」
はしゃぐように、明るい声で言う。

 シューヘイはまっすぐ、前を向いて、ハンドルを握っている。
静かな車内で、ただカスミさんの声だけが、にぎやかに響いてくる。
カーステレオのボリュームを落としていて、やけにその話し声が響く。
「なんだか、ホント、久し振り!
 この前、エミちゃんがいなくなってから…
 少し寂しかったのよねぇ」
むしろ嬉しそうに言うので…
もしかしたら、信子のことを気遣っているのか…と、ふと思った。

「ここを使って」
 通された部屋は、小さな和室だった。
「前にね、あなたよりも少し大きな女の子が、使っていた部屋が
 空いているのよ」
もともとは、結婚したルームメイトとシェアしていた、という。
どうりで、1人暮らしにしては大きな部屋なのだが、一時信子が来る直前にも、
人を泊めたり、あの女の子も…住んでいたのだ。
「本当はね、家賃のこともあるから、早くもう少し安い所に、引っ越した方が
 いいんだけどねぇ」
なぜか、言いにくそうにする。
 もしかしたら 何か事情があるのだろうか…と、信子は思う。
だけどもまだ、中学生の信子には、詳しいことはわからないのだ。
「でも、丁度よかったわ!
 部屋が空いていて」
むしろ歓迎ムードなので…
もしかして、ここに来てもよかったのかな、と信子は思うのだった。
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