192 / 250
第18章 パン屋の王子様
1
しおりを挟む
思いがけず、ひょんなことから元の世界に戻り、エラにもようやく
穏やかな時が、訪れたかのように思われた。
宮殿から少し離れた郊外の別荘で、エラは王子とごく少数の使用人
たちと共に、静かな日々を送っていた。
当初は、もうこの地には未練がない、とエラは思っていた。
けれども、昔憧れていた王子との2人きりの生活は、思いの外エラの
心を和ませてくれるものだった。
まぁもっとも…女中頭のマーサに、何かと教育的指導を受けていた。
たとえば、メイドの仕事をするな、だの
メイドの制服を勝手に借りて、掃除をするなだの、
小川で洗濯するな、だの
草むしりをしなくてもいい、だの…
事細かに怒られてばかりでは、いたけれど。
「いいかげん、プリンセスの自覚をもってください」
今朝もお小言を、もらったばかりだ。
それでもエラは、持って生まれた負けん気で、
「あら、どうして?
プリンセスだからといって、してはいけない、という法は、ないはずよ!」
堂々と言い放つと、周囲を困惑させていたのだ。
そんな2人のやり取りも、王子からしてみたら、たわいもないもので、
「またかぁ」
面白そうに、笑って見ている。
「やっぱり君は、不思議な人だなぁ~
君といると、ちっとも退屈しないよ」
ほがらかに歯を見せて笑う。
「今度は君に…乗馬を教えて上げよう」
微笑みながら言うのだった。
するとエラは、澄ました顔をして、
「あら、王子様!
私…馬くらいは、乗れますわ」
キッパリと言い放つ。
そうなのだ…
前に住んでいた森の中の一軒家では、街に行くにも、馬車か馬がなければ
とても不便なのだ。
さらには、お父さんが生きていた時には、一緒によく、森の奥へ
馬に乗って出かけたものだ。
「ほぅ~」
感心したように、王子はため息をもらす。
「君って、すごいんだなぁ。
本当に、何でも出来るんだね!」
「そんなことは、ありません」
あわててエラが言うけれど…
ますます王子は、よけいに彼女に興味を持ったようだ。
「キミのこと…もっとよく、知りたいな」
プレイボーイばりに、エラにささやくのだ。
流し目をする、王子を見返すと、
(うわっ!やっぱり女ったらし?)
エラはスッと身をひるがえすと、出来るだけ王子から体を遠ざけるのだった。
穏やかな時が、訪れたかのように思われた。
宮殿から少し離れた郊外の別荘で、エラは王子とごく少数の使用人
たちと共に、静かな日々を送っていた。
当初は、もうこの地には未練がない、とエラは思っていた。
けれども、昔憧れていた王子との2人きりの生活は、思いの外エラの
心を和ませてくれるものだった。
まぁもっとも…女中頭のマーサに、何かと教育的指導を受けていた。
たとえば、メイドの仕事をするな、だの
メイドの制服を勝手に借りて、掃除をするなだの、
小川で洗濯するな、だの
草むしりをしなくてもいい、だの…
事細かに怒られてばかりでは、いたけれど。
「いいかげん、プリンセスの自覚をもってください」
今朝もお小言を、もらったばかりだ。
それでもエラは、持って生まれた負けん気で、
「あら、どうして?
プリンセスだからといって、してはいけない、という法は、ないはずよ!」
堂々と言い放つと、周囲を困惑させていたのだ。
そんな2人のやり取りも、王子からしてみたら、たわいもないもので、
「またかぁ」
面白そうに、笑って見ている。
「やっぱり君は、不思議な人だなぁ~
君といると、ちっとも退屈しないよ」
ほがらかに歯を見せて笑う。
「今度は君に…乗馬を教えて上げよう」
微笑みながら言うのだった。
するとエラは、澄ました顔をして、
「あら、王子様!
私…馬くらいは、乗れますわ」
キッパリと言い放つ。
そうなのだ…
前に住んでいた森の中の一軒家では、街に行くにも、馬車か馬がなければ
とても不便なのだ。
さらには、お父さんが生きていた時には、一緒によく、森の奥へ
馬に乗って出かけたものだ。
「ほぅ~」
感心したように、王子はため息をもらす。
「君って、すごいんだなぁ。
本当に、何でも出来るんだね!」
「そんなことは、ありません」
あわててエラが言うけれど…
ますます王子は、よけいに彼女に興味を持ったようだ。
「キミのこと…もっとよく、知りたいな」
プレイボーイばりに、エラにささやくのだ。
流し目をする、王子を見返すと、
(うわっ!やっぱり女ったらし?)
エラはスッと身をひるがえすと、出来るだけ王子から体を遠ざけるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
義務ですもの。
あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
王妃候補に選ばれましたが、全く興味の無い私は野次馬に徹しようと思います
真理亜
恋愛
ここセントール王国には一風変わった習慣がある。
それは王太子の婚約者、ひいては未来の王妃となるべく女性を決める際、何人かの選ばれし令嬢達を一同に集めて合宿のようなものを行い、合宿中の振る舞いや人間関係に対する対応などを見極めて判断を下すというものである。
要は選考試験のようなものだが、かといってこれといった課題を出されるという訳では無い。あくまでも令嬢達の普段の行動を観察し、記録し、判定を下すというシステムになっている。
そんな選ばれた令嬢達が集まる中、一人だけ場違いな令嬢が居た。彼女は他の候補者達の観察に徹しているのだ。どうしてそんなことをしているのかと尋ねられたその令嬢は、
「お構い無く。私は王妃の座なんか微塵も興味有りませんので。ここには野次馬として来ました」
と言い放ったのだった。
少し長くなって来たので短編から長編に変更しました。
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
悪役令嬢の逆襲
すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る!
前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。
素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!
伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦
未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?!
痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。
一体私が何をしたというのよーっ!
驚愕の異世界転生、始まり始まり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる