おかえりなさい、シンデレラ(改訂版)

daisysacky

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第18章 パン屋の王子様

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 思いがけず、ひょんなことから元の世界に戻り、エラにもようやく
穏やかな時が、訪れたかのように思われた。
宮殿から少し離れた郊外の別荘で、エラは王子とごく少数の使用人
たちと共に、静かな日々を送っていた。
 当初は、もうこの地には未練がない、とエラは思っていた。
けれども、昔憧れていた王子との2人きりの生活は、思いの外エラの
心を和ませてくれるものだった。
 まぁもっとも…女中頭のマーサに、何かと教育的指導を受けていた。
たとえば、メイドの仕事をするな、だの
メイドの制服を勝手に借りて、掃除をするなだの、
小川で洗濯するな、だの
草むしりをしなくてもいい、だの…
事細かに怒られてばかりでは、いたけれど。

「いいかげん、プリンセスの自覚をもってください」
 今朝もお小言を、もらったばかりだ。
それでもエラは、持って生まれた負けん気で、
「あら、どうして?
 プリンセスだからといって、してはいけない、という法は、ないはずよ!」
堂々と言い放つと、周囲を困惑させていたのだ。
 そんな2人のやり取りも、王子からしてみたら、たわいもないもので、
「またかぁ」
面白そうに、笑って見ている。
「やっぱり君は、不思議な人だなぁ~
 君といると、ちっとも退屈しないよ」
ほがらかに歯を見せて笑う。
「今度は君に…乗馬を教えて上げよう」
微笑みながら言うのだった。
するとエラは、澄ました顔をして、
「あら、王子様!
 私…馬くらいは、乗れますわ」
キッパリと言い放つ。

 そうなのだ…
前に住んでいた森の中の一軒家では、街に行くにも、馬車か馬がなければ
とても不便なのだ。
さらには、お父さんが生きていた時には、一緒によく、森の奥へ
馬に乗って出かけたものだ。
「ほぅ~」
感心したように、王子はため息をもらす。
「君って、すごいんだなぁ。
 本当に、何でも出来るんだね!」
「そんなことは、ありません」
あわててエラが言うけれど…
ますます王子は、よけいに彼女に興味を持ったようだ。
「キミのこと…もっとよく、知りたいな」
プレイボーイばりに、エラにささやくのだ。
流し目をする、王子を見返すと、
(うわっ!やっぱり女ったらし?)
エラはスッと身をひるがえすと、出来るだけ王子から体を遠ざけるのだった。
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