おかえりなさい、シンデレラ(改訂版)

daisysacky

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第18章 パン屋の王子様

   13

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「ハッ!」
 ピシリと馬にムチをあてると、ハンスは馬車のスピードを上げる。
「夜になったら、ならず者が増えるから、なるべく早く行くよ」
前を向いたまま、ハンスが手綱を握る。
「えっ、でも、お店は?」
「大丈夫、オフクロにまかせているから!
 何だったら、今日は休みにしたっていい」
ニコリとしながら言う彼の顏が、なぜだかとても、たくましく見えた…
彼女はポッと顔を赤くして、
「ありがとう」
小さな声でつぶやく。
頼もしいなぁ~と、アナスタシアは目を潤ませて、このパン屋の王子を
見詰めた。
彼がいれば、怖くても大丈夫…
そんな風に、思えたのだった。

「よう、ハンス!
 そのベッピンさんは、どこのお嬢さんだ?」
 しぶしぶながら、アナスタシアの同行を許したハンスだったが…
知り合いの行きつけの居酒屋が、この近くにある、というので、
とにかく訪れてみることになった。
まだ昼間だというのに…すでに店は開いていた。
「おまえ、仕事は?
 まだ、昼間だぞぉ~」
自分のことはさておいて、ケラケラとからかうように、男は言う。
(どんな知り合い?)
思わず眉をしかめて、ハンスの背後に隠れるようにして、
アナスタシアは後ろに回り込んだ。
 さすがに夜ではないので、お客さんもまばらだ。
ちょっといかつい顔の中年の男とか、陰のある顔立ちの男が、
暗闇に隠れるようにして、ビールジョッキを傾けている。
「なんだい、お嬢さん!
 アンタももしかして…イケル口かい?」
そう言うと、ジロジロと彼女をのぞき込んだ。
彼女はハンスのシャツを、ギュッと握り締め、しっかりと彼の背中に
しがみつく。
それを見ると、男は
「おやおや~ずいぶんと、おあついねぇ」
ゲラゲラと笑いながら、口笛を吹く。
ハンスは1つ咳払いをすると、
「今日は飲みに来たんじゃあないんだ」
キッパリと、男に向かって宣言した。
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