御手洗さんの言うことには…

１８５

ソータローのこと…１６４

「えっ？」
「何を言っているの？」
　先生とはいえ、そんなデタラメ…
誰が信じると思うのか？
宗太郎は、思わず声を漏らす。
しぃっ！
清子は宗太郎に向かって、唇に指を当てる。
あわてて宗太郎が口を閉ざすと、二人の会話に耳を傾ける。

「なんで、そんなことがわかるんだ？」
　狼狽した表情をして、オジサンは先生を見つめる。
「そんなの、聞かなくてもわかる！
　あんたを見ていたら」
そう言うと、チラッと宗太郎たちの方を向くと、ニヤリと笑う。
（まさか…当てずっぽう？）
　本当は、何も知らないのか？
　単なる偶然？
　それとも、でっち上げ？
どちらにしろ、先生は何かを知っているようだ。
「やっぱりおまえ…何かしたんだろ」
オジサンは、体裁などかなぐり捨てて、ジロリと先生をにらみつける。
「もしかして、あれは、おまえのせいだろ」
「何のことだ？」
宗太郎にはよくわからないけれど、先生はひょうひょうとした顔を
している。
（先生ってば、ホント、タヌキだなぁ）
これが本当の、先生なのか？
それならば、いつも自分たちの前で見せる顔は、あくまでも建前上の
ものだったのか？
「やだなぁ」
先生は、宗太郎の表情に気が付くと、
「あっ、私は、今君たちが想像しているような、腹黒いヤツじゃあ
　ないからな！」
あわてて弁解するように、付け足した。