ラストダンスはあなたと…

daisysacky

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第3章  新しい訪問者

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「お客様が、来られました」
 高岸というベテランのホテルマンが、オーナーである彼に向かって
声をかけた。
たとえ表には出ていなくても、ホテル内の出来事に関しては、
逐一報告するように、と彼に厳命されていたからだ。
 だが彼にはもちろん、わかっていた。
なぜなら疑り深い彼は、自室のモニタールームから、細かくチェックを
していたからだ。
 
 だがそんなことは、おくびにも出さずに、
「ほう、そうか」
言葉少なめに、そうつぶやいた。
「また…物見高い輩が、偵察にきたのか」
苦々しく付け加える。
中年の女は、居住まいを正すと
「申し訳ありません」と深く頭を垂れる。
 このオーナーは気分屋で、気難しいたちである、と周知しているので、
さして驚きもせず、細心の注意を払って接しているのだ。
それにも気付いているので、
(まさに、はれ物に触れるとは、このことだな)と男は顔をしかめた。

 いつだってそうだ。
自分の周りにいる人間は…この自分のことを、恐れおののいているのだ。
彼は周りの人間のことを、ことごとく嫌悪した。
子供のころからいた、最近亡くなった執事以外は…
自分の家庭教師を含め、この目の前のベテランの従業員に対しても。
「わかった、今後のことは、君にまかせた。
 くれぐれも、余計なことをさせないよう…
 目を光らせてくれ」
重々しく、目の前の女に命じる。

 部屋の中は、昼間でも、遮光カーテンをピッチリと閉ざし、
外の世界を完全にシャットアウトしている。
真っ暗な中でも、それでもまだ足りない、と彼は思うのだ。
蚊1匹たりとも、アリでさえ…
彼のテリトリーに、踏み入れてはいけないのだ。
ここは彼の最後の砦…
ここにみだりに踏み入れることは、何人たりとも許されないのだ…

「ところで、新人の教育の方は、進んでいるのかね?」
彼は鋭い視線を、この忠実なるしもべに向けた。
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