ラストダンスはあなたと…

daisysacky

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第13章  今宵一夜だけは…

   12

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  半分体を預けた状態で、ドスンと彼がボートに倒れ込んだので、
珠紀はあわてて、体をどけた。
お尻を強く打つくらいで済んだのだけれど、その時思い切り
武雄にぶつかったので
「ご、ごめんなさい!」
かすかに声が震えた。
勢いがあまったのか、彼の顔半分を覆っていた仮面が、ハラリと下に落ちた。
思わず間近に、彼の素顔がさらされる…
何だか見てはいけないものを見た気がして…
珠紀はあわてて、目をそらす。
「あっ」
男はあわてて、珠紀から体を離すと、ボートの底に落ちた仮面を、
急いで付け直した。

 見ないように、気を付けていたつもりでも、いきなり真正面に
その顔を、見てしまった。
何だかとてもいけないことをしてしまった…みたいで呆然とする。
さらにはまだ心臓が、大きな鼓動を響かせている。
 仮面の下の顔の上半分は、どす黒い色に変色していて、
引きつれたような、ヤケドの痕が、生々しく残っていた。
 さすがにもう直っているとはいえ、その生々しさが、
心に違和感を覚える。
もう直っているとはいえ、その恐ろしさが…
いかにその時の状況が、逼迫したものだったが、
珠紀はあらためて、その生々しさに、痛みを感じた。

 実は珠紀はすでに、気付いていた。
武雄がこの傷跡のことを、かなり気に病んでいたことを…
本当言うと、怖いのだ…
だけど彼に、「気にすることは、ないよ!」
と教えてあげたいのだ。
一瞬言葉を失う珠紀を見ると、
「やっぱり」と彼はため息をつく。
「いいよ、気をつかわなくても」
またも口を曲げて言うのを…
「そんなこと…ない」
かろうじて珠紀が言うけれど、それでも視点を微妙にずらして
いるのに、気付いているのか…
ニヒルな笑顔を浮かべると、すぐに顔をスッポリと
覆いつくす。
(どうして、私…うまく言えないのだろう…)
歯がゆい思いで、珠紀はうつむいてしまった。


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