桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第15章  いのち短し 恋せよ乙女?

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  先日杏子が待子に向かって
「本当にまだ、ここにいるの?」と聞いてきたけれども…
自分はここの住人のことが好きなのだ、とレイコさんを見ていて、
ふいにそう思った。
「ね、あれから…マイコまた、勝手に窓から入って来たりしない?」
ニヤリとして、レイコさんが聞く。
一瞬、なんのこと、と思ったけれど、すぐに気付き、
「えっ?ううん!それはもうないわ」と答える。
 もともとここの住人は、好奇心が旺盛なので、放っとくと勝手に
人の部屋をのぞき込むし、プライバシーが著しく欠如しているのが困りものだ。
 そういえばまた、奇妙な男性が、この家の近辺をうろついているのを
見かけたなぁと、ふいに思い出した。


  洗濯物をようやく干し終わると、そろそろ学校へ行こうか…と、
レイコさんと別れた。
支度をして、階段を下りて行くと…丁度廊下を出た辺りで、
靴を履こうとしている、佐伯さんと出くわした。
「あら、これから学校?」
そういえば、このところ…あまり彼女を見かけないので、どうしたのかなぁと
気になっていたのだ。
するとパッと後ろを振り向くと
「あら、風野さんも?」と、その手を止める。
待子はトトトと階段を下りて行くと、佐伯さんに近付く。
佐伯さんは、トートバッグを肩にかけると、立ち上がって待子を待ち構えた。
「このところ見かけないけど…どうしてたの?」
思わず声をかけると、フッと表情を変え
「うん、ちょっとねぇ~色々あって…」
困ったように佐伯さんは、言葉を濁す。
なぜだか理由はわからないけれど、言いたくなさそうに、
ふぃっと目をそらす。
気になるけれど、それ以上は追究してはいけない気がした。
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