桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第 16章  転がる石のように…

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「あっ、もしかして!」
 ところが予想外に、マイコは大きな声を上げる。
「あれでしょ?追っかけ!」
「追っかけ?」
えっ、と待子は目を丸くする。
あれを…追っかけとでもいうのだろうか…?
「あのぉ」と上目遣いでマイコを見ると、
「ストーカーじゃないんですか?」
おそるおそる口にする。
聞き返す待子に、マイコはニヤリとすると
「そうとも言う~」とヘラリと笑った。
「あの子ね、コンビニでバイトしてるんでしょ?」
「いや、スーパーと言ってました」
「スーパーのレジ?」
「いや、品出し」
「あっ、そうなの?」
 ずいぶん適当だなぁ~と思っていると、マイコは急に興味を失ったようで…
先ほどまで、キラリと光っていた瞳も、若干つまらなそうに、目をそらす。
「そ」と言うと
「ま、いいかぁ」
幾分さめた目で、待子を見ると、ふいに思い出したように、
「あの子って、いい意味でも、悪い意味でも目立つでしょ?
 だからやっぱり…男の人が、寄って来るんじゃあないの?」
サラリとそう言うと、サッサと門を潜り抜ける。

 待子もあわてて自転車を押して、その後を続く。
やけにあっさりと言うマイコに…
まさか、人気者の佐伯さんに、やきもち?と思う待子だが、
自転車置き場に、足を踏み入れると…
まるで逃げるようにして、何者かが走り抜ける姿が、チラリと
目の端に写った。
(えっ)
待子は立ち止まり、
(まさか、あの男?)
イナヅマのように、一瞬頭の中でひらめく。
たしか、あのストーカー男も、この家を知っていたはずだ、と。
「マイコさん!さっき誰かがいた!」
短く叫ぶと、
「えっ、誰が?」
のん気な顔をして、自転車置き場から離れた。

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