桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第 16章  転がる石のように…

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  見えていないの?
待子は不思議に思う。
そういえばこの人も…ストーカーで苦労していた、と聞いている。
「ほらぁ、佐伯さんの」と幾分強めに言うと、マイコははっと顔を上げた。
「そういえば…佐伯さんは?」
「ひよりちゃんのところです」
今さら聞くか、と思うけれど、マイコは気にする気配もない。
「なら、安心ね!」
そう言うと、あわててさっきまでいた通りまで走る。
門を抜け、一段飛ばしで、階段を通り抜けると、すっかり静けさに
包まれる。
「もう いない」
「逃げたのね」
2人はあわてて、辺りを見回した。
「用心して!たぶん相手は…そう簡単には、あきらめないわよ」
さっきまでののんきな雰囲気はどこかへ消えてしまったようで、
マイコは真剣な顔で言う。
「あ、大家さんには?」
「もちろん…言った方がいいわね」
「みんなに言う?」
「そうねぇ」
マイコはもったいぶった言い方で、真面目な顔になる。
「まずは、レイコさんに言った方が」
お互いに顔を見合わせ、そしてうなづきあう。
「きっと、また来るわよ!
 何をするか、わからないから…注意しておかないとね」

 レイコさんは、この下宿屋が出来てからの古株だ。
この人の、ここに与える影響は、かなり計り知れないものなのだ。
マイコはそそくさと、携帯を取り出すと、歩きながらどこかへ
かけ始めた。
そうして母屋の方へ向かうと…
今度は、大家さんの息子が、通りで立ち尽くしている。
そうして母屋へ向かうと…
今度は先客が1人いる。
見覚えのある人だ…とじぃっと見ていると…
どうやら2階を見上げているようだ。
待子はまさか、この人がさっきの人か…と思い、
「こんなトコで、何をしているんですか!」
思わず鋭い声を発した。

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