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Scene11  シンデレラは時を越えて

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「お疲れ様」
 そんなエラを見て、礼美はやさしく声をかけました。
「ねぇ、どうする?このまま、他の人のステージを見る?」
 プログラムは、まだ中盤…
他の団体の発表があります。
だけどエラには、用事が残っています。
黙って、静かに頭を振ると、
「今日は他にも、しないといけないことがあるの」
こちらの顔をのぞき込む礼美に、それだけを伝えました。
 少し意外なものを見るように、礼美は驚いた顔をしたけれど、
「わかったわ!終わった後、みんなでご飯を食べに行くけど、
 エミちゃんも、いらっしゃい」
 エラはどうしようか…と、少し迷ったけれど、
「行けたら行くわ」とだけ答えます。
 本当は、このままみんなと合流して、のんびりおしゃべりを
楽しみたいけれど。
ここで気を抜いたら、いけないのです。
これからまだ、しないといけないことが待っています。
エラはようやく浮ついた気持ちを引き締めようと、大きく息を吐くと…
「あとで、信子ちゃんと話がしたいんだけど」とだけ伝えました。

 礼美には、あらかじめ伝えてあります。
今日はカスミの家には帰らずに、信子と一緒に過ごしたいのだ、と。
詳しく話すかどうか、迷いましたが、まだそこまで話していません。
これから始まる、エラだけの秘密の本番に向けて…
まずはどうしても、しなければならないことがあるのです。
荷物を1つ、礼美に預けると、身軽になったエラは、1人
カスミの家とは反対方向へと、足を向けました。
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