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Scene12  シンデレラはガラスの靴をはいて

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  否応なしに、車はどんどん森の中を進んで行きます。
次第に闇が濃くなり、別世界に迷い込んだようです…
「ねぇ、この道で合ってるの?」
 中々それらしいものが見えないので、少し不安になったのか、
カスミは横にいるシューヘイの方を見ます。

 それと時を同じくしてようやく、ポワッと唐突に、真っ暗な闇の中に、
ヘッドライトの光の輪に、トンネルの姿を映し出しました。
「あったぁ~トンネルだぁ」
 若干不安だったので、かなり難しい顔をしていたシューヘイでしたが、
一気に表情を緩めます。
「ねぇ、今、何時?」
 ようやく我に返ったように、シューヘイは助手席のカスミに聞きます。
「まだ11時よ」
腕時計を見ると、カスミは答えます。
「電波が…弱いみたい」
ポケットから携帯を取り出すと、液晶画面が圏外であることを、
確かめて、軽くエラに見せました。
「山の中だからなぁ」
少し不安そうに、シューヘイがつぶやきます。
すると後部座席から、大家さんがヒョイと顔をのぞかせると、
「それは、磁場も影響しているのかもね」
割り込むように、声をかけました。

 ようやくたどり着いたトンネルは…少し古びたトンネルで…
というよりも、今も機能しているかどうかも、わからないような
錆びれた雰囲気なのです。
人里離れた場所にあるので、誰も立ち寄らないような…
えっ、こんなところに、トンネルがあるの、というような…
加えて言うなら、幽霊が出ても、おかしくないような、
そんな雰囲気もかもしだしていました。
映画のセットと言われれば、気付かないような、そんな一種独特な
場所なのです。

「ここ?」
トンネルの全容があらわになると、エラが思わずつぶやきます。
不安そうにあたりを見まわすと、
本当に、こんなところが、あの場所につながっているのだろうか…と
疑わずにはいられません。
「そうね、確かにここね!」
大家さんがあっさりとこう言うと、シューヘイは手前の脇道で、車を静かに
止めました。
もちろん、暗くてなんにも見えないので、ヘッドライトはつけっぱなしです。
おもむろに後部座席を振り返ると、
「ね、ちょっとだけ、いいかな?」
エラの方に視線を向けて、言いました。
初めは、みんなに言っているのだとばかり思っていたので、
なんだろう…とさして気にせず、野次馬根性でしたが、さらに
「話があるんだけど…」
今度はまっすぐに、エラに話しかけるので、やっと
「えっ?私?」
驚いて聞き返しました。




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