ちょっと待ってよ、シンデレラ

daisysacky

文字の大きさ
370 / 370
Scene13  ガラスの靴を、シンデレラ

   2

しおりを挟む
  遠くにかすかに、鐘の音が聞こえてきます。
窓の外を見ると、あの日と同じ、月のきれいな夜です。

「さぁ、寝なさい!
 話の続きは、また明日!」
 そう言うと、母親は女の子の枕元に、いつものように女の子の
お気に入りの、クマのぬいぐるみを置きます。
女の子がそれを抱きしめるのを見ると、
「さぁ、おやすみなさい。お姫様!」
それから灯りを消して、子供部屋のドアを閉めました。

 静かに自分の部屋へと戻ると、そっとクローゼットに近付きます。
今晩は、女の子の父親は飼えりが遅いので、2人だけの夜です。
寝室には、月明かりが差し込んでいて、レースのカーテンを
揺らします。
こんな日に月を見ていると、あの日の出来事を思い出すのです。
 クローゼットを開くと、服がギッシリと積み込まれていて、
その下の段に、手を突っ込むます。
普段使いのトートバッグにエコバックが、詰め込まれている中に混じって
色あせた、かなり年代ものの、古いトートバッグを取り出します。
すっかり黄ばんでしまい、いつもはしまい込んで、忘れられた
そのバッグ…
それを取り出すと、中にぐいっと手を入れます。

 もう自分は…シンデレラでもないし、もちろん信子でもない…
娘に聞かれて、久しぶりに、あの子はどうしているのだろう…と、
片割れだった、あの少女のことを思い出すのです。
バッグの中には…ほかに何も入っていません。
底の方に、手を慎重に差し入れると、あの日と同じように、
古い布でくるまれた…塊が、姿を見せました。
その布をゆっくりと、開いていくと…
月明りにキラキラと…まるで宝石のように、ガラスの靴が
光り輝いているのが見えました。

 目の奥には、光の中を走って行く、あの女の子の姿が、
鮮やかによみがえるのです。
光の中に溶け込む瞬間…
あの境界線を越えて、目の前で光の輪が消える瞬間。
あの時、確かにあの女の子が、一瞬、こちらを振り返って、
ニッコリと微笑んだのです。
それはほんの一瞬で、マボロシのように消えたのですが…
それでも光が消える、その瞬間に…
最後の鐘が高らかに鳴り響き…
彼女の耳には、確かにあの女の子の声が聞こえてきたのです。
それは、たったひと言。
「ありがとう」と。
それは、風が梢を揺らすように、かすかな声でした。

 窓際に近寄って、静かにそのガラスの靴を、月にかざしてみます。
あの日のように、再び輝きを取り戻していました。
まるで、長い夢からさめたように…
再び、あの日の夢を見ているように…






               fin

しおりを挟む
感想 5

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(5件)

しばまる
2018.06.21 しばまる


ころころと変わるストーリーとお姫様と思えないエラの性格に惹かれっぱなしです!笑

小説の書き方もナレーションタイプはあまり見ないのでとても勉強になりました。
進展に期待しています!!

2018.06.22 daisysacky

ありがとうございます!
実はまだまだ怒濤の展開を考えているのですが、中々進んでいません。
とんでもない、大どんでん返し&大どんでん返しを考えています。
よろしければ、続けて読んでいただけると、ありがたいです。
どうもありがとうございます!

解除
akk
2018.04.25 akk

不思議なお話で面白いです。
どんな展開になっていくのか予想しながら楽しく読み進めさせていただきます。

2018.04.25 daisysacky

ありがとうございます🎵
これから、全然違うシンデレラストーリーが始まります。
もしも、シンデレラが現れたら、こうなるのかな?と想像しながら書いてます。ラストシーンしか、決めてないので…どうやって進めようかな?とワクワクしながら書いてます❗
ありがとうございます!
今後の展開も、お楽しみに🎵

解除
景綱
2018.04.14 景綱

なるほど、そうきましたか。
この先の展開が気になりますね。
(*^^*)

2018.04.14 daisysacky

そうきました。これから、オリジナルが始まります。
見たこともないシンデレラストーリー、頑張ります

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。 しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。 郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。  そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。 そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。 アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。 そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。