シンデレラの娘たち

第1章 ママの秘密

２２

「台所にでも、いるんじゃない？」
　あまりにも驚いている夫を見て、妻はクスクスと笑う。
「パパってばぁ、ユウに、からかわれているんじゃないの？」
かくれんぼとか？
子供って、そういうものなのよ…
そう言いながら、妻はキッチンをのぞく。

「あら？誰もいない」
　こうこうと電気はついているけれど、流しにも、冷蔵庫の前にも、
キッチンの椅子ところにも…
やはり、我が子の姿はなかった。
「あれっ？」
まるで、キツネにつままれたように、父親は驚いた顔になる。
「テレビを見てるんじゃない？」
「お風呂場は？」
ようやく2人は真顔になり、幼い娘の姿を探し始めた。

「ユウ～どこに隠れているの？出てきなさい」
　中古物件で、比較的まだ新しい小さな家だ。
まだ住宅ローンも払い始めたばかり…
さほど広くはない家の中を、2人は手分けをして、くまなく探す。
　小さな体が入り込むスペース。
クローゼットの中。
お風呂場
（さっきまで、母親が入っていた）
キッチン
リビング
ベランダ
勝手口
玄関
小さな庭…
「まさか…外？」
父親が、つっかけに足を突っ込む。
「いや、部屋にいるんじゃない？」
パパってば！
何をやってるのよ！
きっと、からかわれているのよ…と、母親はまだ本気にせずに、
トントンと階段を上り始めた。