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第6章 魔法の靴
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しおりを挟む彼女は柚の手を取ると、自分のお腹にそっとあてる。
「あっ、動いた!」
目を丸くして、はしゃぐように言う柚を見て、
「この子、あなたに挨拶をしているのね」
にこやかにそう言う。
「赤ちゃんの名前は?」
無邪気に聞く柚に、
「おいおい、それはまだ、早いんじゃあないか?」
思わずジュンヤが、口を挟む。
信子はにっこりと微笑むと
「いいのよ」と柚を見る。
「もう、決めているの」
「え~っ、なぁに?」
じぃっと見上げる柚に向かい、
「エラ」
はっきりとそう言う。
「え~っ、エラなの?ママと一緒だぁ」
柚は嬉しそうに、パチンと手を叩いた。
「へぇ~そうなんだ」
二人の様子を見守っていたジュンヤは、しみじみと噛み
しめている。
すると信子は、
「あなたたち…いつかきっと、この子に会いにいらっしゃいね!
待っているから」
そう言うと、ジュンヤに向かい、ニッコリと微笑む。
ママ…ふいに柚は、母親のことを思い出す。
そうだ、きっと…突然いなくなったら、探しているのかも
しれない…
そんなことに、考えが及ぶと、急に家が恋しくなる。
「どうしたの?」
いきなりおとなしくなる柚に、気が付くと、ジュンヤは
心配そうに、声をかけた。
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