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「この間はどうも、よろしくお願いします」
「あの後、どうでした?」と、聞くと
「そりゃあ、何時間も先輩たちに絡まれて大変だったよ」と、笑ってから続けて言った。
「献立は、決めてから買い物に出ますか?」
「うーん、できればお店に行ってからき決めたい…かな?」
「それは、かまわないけどなぜ? 僕的には合宿=カレーなのかと思ってたけど違うの?」と、彼は不思議そうに聞いてきた。
「カレーでもいいんだけど、ここで採れた食材を使った料理もいいかなと思ったんです。
ここら辺は高原キャベツとか有名なの。
他にも何があるのか少し気になってるの」と、話すと彼は納得した顔で、
「わかった。じゃあ買い出しに行って先にお店をぐるっと調査してから、お茶でもしながら2日分の夕飯の献立決めてしまおうか?」と、車の鍵を開けて出かける準備を始めた。
車だとお店のある地域までは、そんなに遠くもなかった。
とりあえず、店の前に本日の特売を置くようなスーパーではないので、カゴを持たずにちょっとだけ様子を見てみることにした。
店内も外観と同じく軽井沢は別荘地だからか、おしゃれでちょっとお高い印象だ。
合宿の夕飯には予算があるので、どうしたものかなぁと考えていると、スーパーの前でお婆さんと松永くんが話しているのが見えた。
私が声を掛けるより先に、私に気づいて手招きをしてきたので行ってみると、
「ごめんごめん、待たせたね。
今、地元のお婆ちゃんから情報仕入れてきたよ。
食材は朝採れ市場に買いに行こう。
安くて地産の素材がたくさん並んでいるんだって」
「先に市場を回ってメニューを考えて調味料などはスーパーで買うのはどうかな?」と、松永くんは言う。
「予算もあるからそれだと助かる。地元の人に聴き込みとか、すごいね!」
「そんなことないよ。たまたまお婆ちゃんと話してたら市場を勧められたんだ」「行こうか、朝採れ市場だから早く行ったほうがいいと思うんだ」
松永くんは人懐っこい笑顔で、車のドアを開けてくれた。
しれっと車のドアを開けてくれるとか、どこかの国の紳士なのか?
前さんたちをアトリエに迎えに何度も行っているのに気にしてなかった。
この人、実はイケメンだな。でも背はそんなに高くないくて、私と大して変わらないくらい。
こんな私にめちゃくちゃ優しいけど、きっと好みのタイプは自分より背の低い可愛らしい女子だろうなと思う。
前さんたちには申し訳ないけれど、今回の出会いは不発に終わりそうです。
朝採れ市場に着くと、そこには生産者の名前が貼られた野菜がたくさんワゴンに並んでいた。
キャベツ、アスパラ、レタスにカブ、
きのこは色んな種類が並んでいる。
「キャベツは大量に千切りして、トンカツかメンチカツ揚げて、汁物はきのこがたくさん入ったすいとんもいいかも。それだときのこ嫌いな人用に入ってないのも作らないといけないか!」
「もう一日は、簡単キーマカレーにして上にズッキーニやカボチャとかアスパラに目玉焼きとかトッピングしてもいいかなぁ」
「それなら朝、昼の係のメニューとは被らなそうだし、いいんじゃないかな?」
「でも、俺が猫の手になれるのか心配なんだけど大丈夫かな?」と、不安そうな顔の松永くん。
「うん、大丈夫。松永くんはバンドの練習もあるしね。無理しなくても大丈夫です」と、力こぶのポーズをとる。
「トウコさん、すごいね、頼もしい。俺、実家暮らしだから何にもやったことなくて、恥ずかしくなってきた」と、話す彼に首を横に振り、
「一人暮らしだからってのもあるけど、私の場合は食べるのが好きだから作るのも好きってだけ。だから趣味は美味しい店に行っては、そこの味を覚えてくるのとかなんです」
「見て、キャベツがこんなに立派なのに100円!」
「これは買いだね。いくつくらい買えばいいんだろ?」
「うーーん、千切りキャベツだけなら3つ~4つもあれば十分なのかな? 手間かかるからしないけど、こんなに立派ならロールキャベツとかも美味しそう」と、唸っていると松永くんが、
「ロールキャベツといえば、新宿にホワイトソースのロールキャベツの店あるんだよ。知ってる?」と、言った。
「そうなんだ? 私、トマトソースのしか食べたことない。でも、ホワイトソースもすごく美味しそうだね」
「お店の名前なんだっけな? この間、前を通った時に気になってたんだ。まだ入ったことないけど」
「確かに気になるね。え? まだ行ってないんだ?」
「その時はお腹が空いていなかったから、今度行こうかなと思って通り過ぎたんだよ。でも、その後なかなか行けなくてそのままになってる」
「美味しいのかわかんないのか! 松永くんってば、知らないくせに話をするから気になっちゃう」と、言うと少し間をおいて
「今度一緒に行ってみる?」と、松永くんが言った。
どうしよう?
ごく自然にデートに誘われたみたい。
「今度一緒に行ってみる?」頭の中で言われたセリフを反芻する。
胸の鼓動は早鐘を打ち、血管の中を流れていた血液が逆流してしまいそうな感覚だ。
私、免疫なさすぎ。
松永くんは、単に友達として一緒に食べに行こうと誘ってくれただけで、深い意味はないと思うことにしよう。
そうしておかないと、そうじゃなかった時のダメージがデカすぎる。
当日、調子に乗ってデート気取りで出かけたら、待ち合わせ場所に何人かいたりして、松永くんの友達に、
「はじめまして、きみ背高いね。いくつあるの?」なんて聞かれて
「あ、はい…あの168です」なんて答えて、松永くんにまで
「そんなに高いんだ?」とか言われるんだ。恋愛対象外の女としては、そんなイメージしか湧かない。
「無理無理無理、絶対に無理」
「えっ、そんな全力否定しなくても…」松永くんが困ったような顔をしている。
どうしよう誤解されてしまった。
「ちがっ…違うんです。行きたくないって言ったのではなくて…一緒に行くってふたりで?って思ってしまったから…」と、さらに誤解を受ける発言をしてしまう。
「ふたりが苦手なら、友達も誘うよ?」と、松永くんの優しさに申し訳ない気持ちしかない。
「ふたりでお願いします。ご一緒させてください…」
きっと私の顔は真っ赤に違いない。恥ずかしくて、どうにかなりそうだ。
「じゃ、ふたりでね」と、彼は言った。
歩いているうちに2日分のメニューが決まったので、市場とスーパーで材料を揃えて買い物は終わらせた。
スーパーでもお米や油など、まあまあかさばるものを買ったので荷物は袋ではなく、ダンボール箱に詰めた。
夜食、非常食用にカップ麺なども少しは買っておこうかとなり、何箱にもなってしまった。
「車、店の前につけるから、待っててくれる? 箱重いから運ぶの俺やるね。」と、松永くんは駐車場へ走り去っていった。
「完璧過ぎる。彼の悪い所が見つからない」
めちゃくちゃ優しいので、勘違いしちゃいそうになるよ。
でも、彼を好きになるのはやめたほうがいいのかも。
もし彼の彼女になったら、みんなに優しい彼に毎日ヤキモキしちゃうんだろうな。
そんなことを考え、窓越しに駐車場を見ると車が店の前まで移動しているのが見えた。
急いで荷物を一つ抱えて店の外に出ると、車の後部座席のドアを開けていた松永くんが、こちらに気づき、
「待って待って、運ぶから」と駆け寄ってきた。
「いや大丈夫ですよ?」と、言うと松永くんは、
「貸して」と、私の腕から荷物を取り上げ車へ運んでいき、残りの荷物も黙々とひとりで車に詰め込んでいった。
あれ? 怒ってる?
素直にお願いしないといけない場面だったのかな。
やっぱり私はダメだ。見かけだけ変えてみたって中身がこうじゃ、ナナコちゃんにはなれないんだ。
「あの後、どうでした?」と、聞くと
「そりゃあ、何時間も先輩たちに絡まれて大変だったよ」と、笑ってから続けて言った。
「献立は、決めてから買い物に出ますか?」
「うーん、できればお店に行ってからき決めたい…かな?」
「それは、かまわないけどなぜ? 僕的には合宿=カレーなのかと思ってたけど違うの?」と、彼は不思議そうに聞いてきた。
「カレーでもいいんだけど、ここで採れた食材を使った料理もいいかなと思ったんです。
ここら辺は高原キャベツとか有名なの。
他にも何があるのか少し気になってるの」と、話すと彼は納得した顔で、
「わかった。じゃあ買い出しに行って先にお店をぐるっと調査してから、お茶でもしながら2日分の夕飯の献立決めてしまおうか?」と、車の鍵を開けて出かける準備を始めた。
車だとお店のある地域までは、そんなに遠くもなかった。
とりあえず、店の前に本日の特売を置くようなスーパーではないので、カゴを持たずにちょっとだけ様子を見てみることにした。
店内も外観と同じく軽井沢は別荘地だからか、おしゃれでちょっとお高い印象だ。
合宿の夕飯には予算があるので、どうしたものかなぁと考えていると、スーパーの前でお婆さんと松永くんが話しているのが見えた。
私が声を掛けるより先に、私に気づいて手招きをしてきたので行ってみると、
「ごめんごめん、待たせたね。
今、地元のお婆ちゃんから情報仕入れてきたよ。
食材は朝採れ市場に買いに行こう。
安くて地産の素材がたくさん並んでいるんだって」
「先に市場を回ってメニューを考えて調味料などはスーパーで買うのはどうかな?」と、松永くんは言う。
「予算もあるからそれだと助かる。地元の人に聴き込みとか、すごいね!」
「そんなことないよ。たまたまお婆ちゃんと話してたら市場を勧められたんだ」「行こうか、朝採れ市場だから早く行ったほうがいいと思うんだ」
松永くんは人懐っこい笑顔で、車のドアを開けてくれた。
しれっと車のドアを開けてくれるとか、どこかの国の紳士なのか?
前さんたちをアトリエに迎えに何度も行っているのに気にしてなかった。
この人、実はイケメンだな。でも背はそんなに高くないくて、私と大して変わらないくらい。
こんな私にめちゃくちゃ優しいけど、きっと好みのタイプは自分より背の低い可愛らしい女子だろうなと思う。
前さんたちには申し訳ないけれど、今回の出会いは不発に終わりそうです。
朝採れ市場に着くと、そこには生産者の名前が貼られた野菜がたくさんワゴンに並んでいた。
キャベツ、アスパラ、レタスにカブ、
きのこは色んな種類が並んでいる。
「キャベツは大量に千切りして、トンカツかメンチカツ揚げて、汁物はきのこがたくさん入ったすいとんもいいかも。それだときのこ嫌いな人用に入ってないのも作らないといけないか!」
「もう一日は、簡単キーマカレーにして上にズッキーニやカボチャとかアスパラに目玉焼きとかトッピングしてもいいかなぁ」
「それなら朝、昼の係のメニューとは被らなそうだし、いいんじゃないかな?」
「でも、俺が猫の手になれるのか心配なんだけど大丈夫かな?」と、不安そうな顔の松永くん。
「うん、大丈夫。松永くんはバンドの練習もあるしね。無理しなくても大丈夫です」と、力こぶのポーズをとる。
「トウコさん、すごいね、頼もしい。俺、実家暮らしだから何にもやったことなくて、恥ずかしくなってきた」と、話す彼に首を横に振り、
「一人暮らしだからってのもあるけど、私の場合は食べるのが好きだから作るのも好きってだけ。だから趣味は美味しい店に行っては、そこの味を覚えてくるのとかなんです」
「見て、キャベツがこんなに立派なのに100円!」
「これは買いだね。いくつくらい買えばいいんだろ?」
「うーーん、千切りキャベツだけなら3つ~4つもあれば十分なのかな? 手間かかるからしないけど、こんなに立派ならロールキャベツとかも美味しそう」と、唸っていると松永くんが、
「ロールキャベツといえば、新宿にホワイトソースのロールキャベツの店あるんだよ。知ってる?」と、言った。
「そうなんだ? 私、トマトソースのしか食べたことない。でも、ホワイトソースもすごく美味しそうだね」
「お店の名前なんだっけな? この間、前を通った時に気になってたんだ。まだ入ったことないけど」
「確かに気になるね。え? まだ行ってないんだ?」
「その時はお腹が空いていなかったから、今度行こうかなと思って通り過ぎたんだよ。でも、その後なかなか行けなくてそのままになってる」
「美味しいのかわかんないのか! 松永くんってば、知らないくせに話をするから気になっちゃう」と、言うと少し間をおいて
「今度一緒に行ってみる?」と、松永くんが言った。
どうしよう?
ごく自然にデートに誘われたみたい。
「今度一緒に行ってみる?」頭の中で言われたセリフを反芻する。
胸の鼓動は早鐘を打ち、血管の中を流れていた血液が逆流してしまいそうな感覚だ。
私、免疫なさすぎ。
松永くんは、単に友達として一緒に食べに行こうと誘ってくれただけで、深い意味はないと思うことにしよう。
そうしておかないと、そうじゃなかった時のダメージがデカすぎる。
当日、調子に乗ってデート気取りで出かけたら、待ち合わせ場所に何人かいたりして、松永くんの友達に、
「はじめまして、きみ背高いね。いくつあるの?」なんて聞かれて
「あ、はい…あの168です」なんて答えて、松永くんにまで
「そんなに高いんだ?」とか言われるんだ。恋愛対象外の女としては、そんなイメージしか湧かない。
「無理無理無理、絶対に無理」
「えっ、そんな全力否定しなくても…」松永くんが困ったような顔をしている。
どうしよう誤解されてしまった。
「ちがっ…違うんです。行きたくないって言ったのではなくて…一緒に行くってふたりで?って思ってしまったから…」と、さらに誤解を受ける発言をしてしまう。
「ふたりが苦手なら、友達も誘うよ?」と、松永くんの優しさに申し訳ない気持ちしかない。
「ふたりでお願いします。ご一緒させてください…」
きっと私の顔は真っ赤に違いない。恥ずかしくて、どうにかなりそうだ。
「じゃ、ふたりでね」と、彼は言った。
歩いているうちに2日分のメニューが決まったので、市場とスーパーで材料を揃えて買い物は終わらせた。
スーパーでもお米や油など、まあまあかさばるものを買ったので荷物は袋ではなく、ダンボール箱に詰めた。
夜食、非常食用にカップ麺なども少しは買っておこうかとなり、何箱にもなってしまった。
「車、店の前につけるから、待っててくれる? 箱重いから運ぶの俺やるね。」と、松永くんは駐車場へ走り去っていった。
「完璧過ぎる。彼の悪い所が見つからない」
めちゃくちゃ優しいので、勘違いしちゃいそうになるよ。
でも、彼を好きになるのはやめたほうがいいのかも。
もし彼の彼女になったら、みんなに優しい彼に毎日ヤキモキしちゃうんだろうな。
そんなことを考え、窓越しに駐車場を見ると車が店の前まで移動しているのが見えた。
急いで荷物を一つ抱えて店の外に出ると、車の後部座席のドアを開けていた松永くんが、こちらに気づき、
「待って待って、運ぶから」と駆け寄ってきた。
「いや大丈夫ですよ?」と、言うと松永くんは、
「貸して」と、私の腕から荷物を取り上げ車へ運んでいき、残りの荷物も黙々とひとりで車に詰め込んでいった。
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