11 / 25
11
しおりを挟む
「俺、実は夕飯係は立候補したんだ。先輩みたいに料理出来ないのにごめんね。」と、話しだした。
「俺、本当はトウコさんのこと前から知ってたんだ。よく前さんたちをアトリエまで迎えに来てるの見てて、なんかカワイイなぁって思ってた」
「あの日、居酒屋に行ったら、トウコさんも来てるから思い切って話しかけたのに、先輩に絡まれて連れてかれちゃったしね」
「そうしたら、部室に寄ったとき先輩たちがこの合宿のこと話してるのが聞こえてきたんだ。トウコさんが夕飯係やるって聞こえたからもう、車出しするから夕飯係にしてくれって立候補したんだ」
松永くんが
私のこと
好き?
そんなことってあるんだろうか?
私のことを好きだなんて…。
私は私のトラウマに縛られている。
中学のとき、好きだった男子がいた。
下校しようと下駄箱近くまで行ったとき、
「おっ、コンバースのローカットや。これ誰の?」
「女子のとこだけど、こいつサイズでかいな! 俺でも履けるんじゃね?」
「履いてみていいかな?」
「いいわけないだろ? やめとけよ」
私の好きだった男子が他の男子を止めた。すると、
「あー、これ佐藤のだろ? アイツ背デカいし。おまえら、出来てんのか~」
他の男子がからかい始めた。
目立たない靴履いておけばよかった。彼までからかわれてる。最悪だ。
彼は、帰る素振りを見せ、
「そんなんじゃないし、興味ねーよ」と 彼は立ち去っていき、
「本気で怒んなよ~」
友達もあとに続いていった。
中学2年のとき、すでに足のサイズが25センチあった私は、自分の靴を男子が笑っているのを見て以来、自分から誰かを好きになっちゃいけないルールを作っていた。
なので、今回の【トウコ、初カレ作るぞ計画!】も相手を引っ掛けてくるのが目標で、自分から告白するとかはしないつもりだった。
森を風が渡り、私たちふたりのもとに風が届いた。それと同時に、
「俺、背が高くないからトウコさんから見たら恋愛対象外だろうなって半分諦めてたけど、今日一緒にいるうちにどんどん欲が出ちゃってさ。もっとトウコさんのことを知りたいって思うようになっていった」
「トウコさんは俺のこと…恋愛対象として見てくれる?」と、彼は言った。
ふたたび吹いた風は、彼の声を半分掻き消しそうになったが、確かに彼はそう言った。
「おーい、何してんだ?」と、先輩が私たちを探す声が聞こえた。
恥ずかしさで、言葉に詰まった私はその先輩の声に反応してら咄嗟に何も答えず走り出してしまった。
「どうしよう、どうしよう。誰かとつきあいたいと始めたことが、こんなに早く実現するなんて」
松永くんのこともっと知りたい。
優しいのか、感じ悪いのか、すかしてるのか、天然なのか? 私はまだ全然、彼のことを知らない、でも私の中の答えは決まっていた。
【トウコ、初カレ作るぞ計画!】が有言実行となりそうです。
夕飯作りを再開させた私たちは、また隣同士になって作業を続けた。
「……」
「……」
「…………」
当然、逃げた私から切りだすのが礼儀なのはわかっている。でも恥ずかしい。いや、さっきの私の行動は、彼は私に嫌われたと思ってるよね?
傷つけてるはずだし、最低だよね私。
人としてどうかと思うよねと気持ちを固め、ついに勇気を出して話しかけた。
「あの…さっきは逃げてごめんなさい。動揺してしまって…」
「嫌われたんじゃなかったんだ。よかった」
彼はほっとした顔をしていた。
その顔を恐る恐る覗くと、口では不安だったみたいなことを言っていた彼の顔は、全然そんな顔をしていない。
逆にこっちを含み笑いして見てる。
えっ、なんだ? その自信満々な表情は、私に断られるなんて思ってないって顔でしょ、それは?
さっきまで先輩にヤキモチ妬いていたのは誰だったんだ?
「……」
私が松永くんのことを好きになり始めていることに確信をもった彼の顔が、憎らしいし悔しいしで、眉間にシワが寄る。
さらには、
「で、お返事は?」と、詰め寄られる始末だ。
この状況、耐えられない。
ちょっと顔が近いんですけど?
たまらず両手で彼の胸を押し返してかろうじて出した声は、カラッカラな喉のせいでカスレ気味だった。
「お友達以上ってことで」
「お友達以上かぁ、それってキスはオーケーなの?」
松永くんは、ぐいぐい近づけてくる。
「君は、お友達以上恋人未満な人とキスするんですか?」と、全力拒否すると
「じゃあ、いつ昇格できるの?」
まだ食い下がってくる。
「もっとよく知ったら!」
「本当はやな奴かもだし、もっとカッコいい人が現れるかもしれないし…」と、言うと彼が真顔になった。
「……」
いや、それは私も同じだ。私のこと知ったらやな奴でつまんない奴と思うかもしれない。
「それに私だって、降格するかもしれないでしょ?」
悶々としている私の顔を見た松永くんは、私の垂れた横髪を後ろに戻しながら、
「トウコさんが降格するなんてことは、ないよ。俺、ぞっこんだから」
彼は、さらりと欲しい言葉を発してきた。
この人は! これ以上隣にいたら、息をするのを忘れてしまいそう。
「もう、テーブルのとこに行って、お皿にキャベツとフライを盛り付けてラップしていってくれる?」
私は、この場から彼を追い払う用事を無理矢理作った。
私たちは合宿のあと、本当にロールキャベツの店にふたりで行った。
その後も松永くんから食べ歩きとかな誘われるようになり、「降格」はなかったようで、ごく自然な流れでつきあうことになった。
「俺、本当はトウコさんのこと前から知ってたんだ。よく前さんたちをアトリエまで迎えに来てるの見てて、なんかカワイイなぁって思ってた」
「あの日、居酒屋に行ったら、トウコさんも来てるから思い切って話しかけたのに、先輩に絡まれて連れてかれちゃったしね」
「そうしたら、部室に寄ったとき先輩たちがこの合宿のこと話してるのが聞こえてきたんだ。トウコさんが夕飯係やるって聞こえたからもう、車出しするから夕飯係にしてくれって立候補したんだ」
松永くんが
私のこと
好き?
そんなことってあるんだろうか?
私のことを好きだなんて…。
私は私のトラウマに縛られている。
中学のとき、好きだった男子がいた。
下校しようと下駄箱近くまで行ったとき、
「おっ、コンバースのローカットや。これ誰の?」
「女子のとこだけど、こいつサイズでかいな! 俺でも履けるんじゃね?」
「履いてみていいかな?」
「いいわけないだろ? やめとけよ」
私の好きだった男子が他の男子を止めた。すると、
「あー、これ佐藤のだろ? アイツ背デカいし。おまえら、出来てんのか~」
他の男子がからかい始めた。
目立たない靴履いておけばよかった。彼までからかわれてる。最悪だ。
彼は、帰る素振りを見せ、
「そんなんじゃないし、興味ねーよ」と 彼は立ち去っていき、
「本気で怒んなよ~」
友達もあとに続いていった。
中学2年のとき、すでに足のサイズが25センチあった私は、自分の靴を男子が笑っているのを見て以来、自分から誰かを好きになっちゃいけないルールを作っていた。
なので、今回の【トウコ、初カレ作るぞ計画!】も相手を引っ掛けてくるのが目標で、自分から告白するとかはしないつもりだった。
森を風が渡り、私たちふたりのもとに風が届いた。それと同時に、
「俺、背が高くないからトウコさんから見たら恋愛対象外だろうなって半分諦めてたけど、今日一緒にいるうちにどんどん欲が出ちゃってさ。もっとトウコさんのことを知りたいって思うようになっていった」
「トウコさんは俺のこと…恋愛対象として見てくれる?」と、彼は言った。
ふたたび吹いた風は、彼の声を半分掻き消しそうになったが、確かに彼はそう言った。
「おーい、何してんだ?」と、先輩が私たちを探す声が聞こえた。
恥ずかしさで、言葉に詰まった私はその先輩の声に反応してら咄嗟に何も答えず走り出してしまった。
「どうしよう、どうしよう。誰かとつきあいたいと始めたことが、こんなに早く実現するなんて」
松永くんのこともっと知りたい。
優しいのか、感じ悪いのか、すかしてるのか、天然なのか? 私はまだ全然、彼のことを知らない、でも私の中の答えは決まっていた。
【トウコ、初カレ作るぞ計画!】が有言実行となりそうです。
夕飯作りを再開させた私たちは、また隣同士になって作業を続けた。
「……」
「……」
「…………」
当然、逃げた私から切りだすのが礼儀なのはわかっている。でも恥ずかしい。いや、さっきの私の行動は、彼は私に嫌われたと思ってるよね?
傷つけてるはずだし、最低だよね私。
人としてどうかと思うよねと気持ちを固め、ついに勇気を出して話しかけた。
「あの…さっきは逃げてごめんなさい。動揺してしまって…」
「嫌われたんじゃなかったんだ。よかった」
彼はほっとした顔をしていた。
その顔を恐る恐る覗くと、口では不安だったみたいなことを言っていた彼の顔は、全然そんな顔をしていない。
逆にこっちを含み笑いして見てる。
えっ、なんだ? その自信満々な表情は、私に断られるなんて思ってないって顔でしょ、それは?
さっきまで先輩にヤキモチ妬いていたのは誰だったんだ?
「……」
私が松永くんのことを好きになり始めていることに確信をもった彼の顔が、憎らしいし悔しいしで、眉間にシワが寄る。
さらには、
「で、お返事は?」と、詰め寄られる始末だ。
この状況、耐えられない。
ちょっと顔が近いんですけど?
たまらず両手で彼の胸を押し返してかろうじて出した声は、カラッカラな喉のせいでカスレ気味だった。
「お友達以上ってことで」
「お友達以上かぁ、それってキスはオーケーなの?」
松永くんは、ぐいぐい近づけてくる。
「君は、お友達以上恋人未満な人とキスするんですか?」と、全力拒否すると
「じゃあ、いつ昇格できるの?」
まだ食い下がってくる。
「もっとよく知ったら!」
「本当はやな奴かもだし、もっとカッコいい人が現れるかもしれないし…」と、言うと彼が真顔になった。
「……」
いや、それは私も同じだ。私のこと知ったらやな奴でつまんない奴と思うかもしれない。
「それに私だって、降格するかもしれないでしょ?」
悶々としている私の顔を見た松永くんは、私の垂れた横髪を後ろに戻しながら、
「トウコさんが降格するなんてことは、ないよ。俺、ぞっこんだから」
彼は、さらりと欲しい言葉を発してきた。
この人は! これ以上隣にいたら、息をするのを忘れてしまいそう。
「もう、テーブルのとこに行って、お皿にキャベツとフライを盛り付けてラップしていってくれる?」
私は、この場から彼を追い払う用事を無理矢理作った。
私たちは合宿のあと、本当にロールキャベツの店にふたりで行った。
その後も松永くんから食べ歩きとかな誘われるようになり、「降格」はなかったようで、ごく自然な流れでつきあうことになった。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる