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第1章
3話 出逢いの経緯
しおりを挟む12月25日 8:00
目が覚めたマリがリビングに行くと、テグともう1人男性が居た。
「あ、おはよう」
「お、おはよう」
「この人、俺のマネージャー」
「あ…どうも」
「どうも。話は先ほどテグさんから聞きました」
「話って…?」
「隣に住まれるって事です。今日、必要な物を一緒に買いに行きましょう」
「えっ…」
「家具や電化製品は明日中に届くから、他に必要な物をマネージャーと一緒に買いに行って。俺は行けないから」
「え…でも…いいんですか?」
「僕は支払いと足になるだけですから…」
「気にせず行っておいで」
「…はっ、はい…」
「じゃ、ウク、後は頼んだぞ」
「わかった」
「テグ…ど、どこに行くの⁈」
「雑誌の撮影が入ってるから行って来る。夜、帰ったらマリのとこ行くね」
テグはマリとマネージャーを置いて行ってしまった。
何か…気まずい雰囲気…
この人がテグのマネージャーさん…
まだ若そう…
何でタメ口で話してたんだろ…
「マリさん、1時間後に出ましょう。僕の事は気にせずに出掛ける準備をして下さい」
しまった…スッピンだった…
「はっ、はい。わかりました」
「歯ブラシやメイク類は洗面台に置いています。テグから頼まれて用意しました」
「ありがとうございます」
1時間後、マネージャーの運転でデパートに行った。
ある程度、必要な物を買って車に戻った。
「もっとたくさん買ってよかったんですよ。支払いはどうせテグのカードだし」
「い、いえ…充分です」
「じゃ、マンションに戻りますよ」
「あの…1つ聞いていいですか?」
「どうぞ」
「本当にテグのマネージャーですか?」
「そうですよ。あー、僕がタメ口でテグに話してるから?」
「は、はい…」
「テグとは同級生なんです。昔から仲が良くて」
「そうなんですか‼︎だからなんですね」
「仕事関係の人達の前ではちゃんと敬語で話しますよ」
「アハハ…ですよね」
「ところで…昨日から付き合ってるんでしょ?テグと」
「は、はい」
「詳しい事は聞いてないけど、どうやってテグと知り合ったんですか?」
「そ…それは…」
何て言ったらいいの…?
「言いたくなかったらいいですよ…ただ、日本の方とどうやって知り合ったのか気になったから。日本のどちらですか?」
「福岡です…」
「本当⁈僕、親の仕事の関係で少しだけ福岡に住んでた事があるんですよ」
「えーっ‼︎そうなんですか⁈」
「今は祖母が1人で福岡に住んでます」
「え?お婆様が?」
「僕、日本と韓国のハーフなんです」
「えーっ、そうなんですねー‼︎」
「ばあちゃんに久々会いたいな~」
「お婆ちゃんっ子なんですね」
「まぁ…。マリさんって、芸能人と付き合うのは初めてですか?」
「えっ、はっ、はい」
「大変ですよ。絶対にバレない様にしないといけないし、特にテグは売れてるから」
「わかってます。大丈夫です」
限られた期間の付き合いだから…
マンションまで送り届けるとマリに部屋の鍵を渡し、マネージャーは帰って行った。
玄関を開けて中に入ると、家具や電化製品が設置されてあった。
ここまでしてくれたんだ…
それに、こんな広い部屋…
3ヶ月なのに、何だか申し訳ないな…
そう思いながらマリは片付けを始めた。
19:30
チャイムが鳴り、マリが玄関を開けるとテグが立っていた。
「テ、テグ」
マリの心臓はバクバクしている。
「どう?少しは片付いた?」
「う、うん」
「夕食はまだだよね?」
「あ…うん」
「チキンとケーキ買って来たから、俺ん家で一緒に食べよ」
「ケーキ?」
「今日、クリスマスでしょ」
あ…そっか。
テグと過ごせるなんて幸せ…
2人は隣のテグの家へ行った。
「はい」
「あ、ありがとう」
テグはマリにチキンを取って渡した。
目の前で食べるの緊張するし恥ずかしいな…
早く慣れないとな…
「今日どうだった?ゆっくり買い物出来た?」
「うん…ありがとう。それに家具なんかも揃えてくれて」
「何か欲しいのあったら遠慮なく言ってね。俺、一緒に買い物行けないから…」
「うん」
マリはファンとして、テグに聞きたい事がたくさんあった。
「あのっ…テグ…」
「何?」
「好きな…食べ物は何?」
「好きな食べ物?そうだな~肉かな~」
そうなんだ…お肉か…♡
「テグは人気あるからファンレターたくさん来ると思うけど、全部読んでるの?」
「うん。一気に全部読めないから、事務所で時間ある時に読んでるよ」
テグ…やっぱり優しいな…
「休みの日は何してるの?」
「休みの日?今まではジム行ったり運動してたけど、今後はマリと過ごす」
嬉しい♡
嬉し過ぎる♡
「じゃあ…」
「ちょっと待って。俺からも聞いていい?」
「う、うん」
「あの日、飛行機で隣同士になった時、実は怒ってたでしょ?」
「え?隣同士?」
「先月の24日だよ。俺は福岡でのイベントの帰り…マリは福岡からこっちに向かう便で席が隣だったでしょ?俺達が初めて出逢った日だよ」
先月の24日?え…じゃあ、私は1ヶ月前にテグと出逢ってたの?
あのお婆さんと会ったのが12月24日…
私は1ヶ月前にタイムスリップしたって事?
…って事は、1ヶ月前から数えて90日間じゃなくて、80日間って事?
マリの頭は混乱していた。
「マリ?」
「えっ、あっ、うん」
「俺がコーヒーをこぼして、マリの服に思い切りかかったから…内心怒ってたでしょ?」
「怒ったりなんか…してないよ」
そんな事があったんだ…
「本当にぃ?結構派手にかかったんだけど…」
「う、うん」
そうやって出逢ったんだ…
でも、その1ヶ月間で何があったんだろ…
連絡先、交換したのかな…
マリは試しに聞いてみた。
「で、でも、よく一般人の私と番号交換したよね?」
「だって、服汚しちゃったし。それにマリは俺の事を知らなかったから」
え…
私はテグの事を知らない事になってたのか…
「服を弁償させてくれないから、せめて食事だけでもと思って行ったけど…話していくうちに信用出来たし、惹かれていった。まさかマリの方から告白してくるなんて思ってもみなかったよ」
そうだったのか…
ファンだってバレない様にしなきゃ…
マリは気を引き締めた。
「私と付き合ってくれてありがとう」
「こちらこそ。俺、仕事が仕事だからあまり色んなとこ連れて行けないし…コソコソ付き合う感じになるけど、大丈夫?」
「うん、全然平気」
ずっと好きだったテグと一緒に居られるだけで幸せだった。
「よかった。気楽に楽しく付き合って行こう」
「うん」
気楽に…そうだよね…
欲を出さずに軽い気持ちで付き合って行こう…
「それと、一応…クリスマスだからプレゼント」
「え?」
テグはマリの後ろに回り、ネックレスを付けてくれた。
「似合ってる!」
テグからのプレゼント…
「あ、ありがとう」
その日の夜、自分の部屋に帰ったマリは、嬉し過ぎてテグからもらったネックレスを握りしめて眠りについた。
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