真実【完結】

真凛 桃

文字の大きさ
8 / 76

8話 チスンの気持ち

しおりを挟む

月日だけが過ぎていった。
ホンユから何度か誘いがあったが、久美子は毎回断り続けていた。
スジンからの連絡はなかった。


本来なら、今日はチスンとロケ地にいく約束をしていた予定の日。


チスンはこの日、事務所にいて久しぶりにスジンと顔を合わせることになった。

「チスンお疲れ」

「…お疲れ様です」

「ちょっといいか?」

スジンはチスンを別室に連れて行った。

「何ですか?」

「お前、あの日…公園の近くにいただろ?」

「え…」

「久美ちゃんを送って、なぜ戻って来たんだ?」

「それは…」

「大体お前は女を誘ったり、自分からするタイプじゃないのに…どうしたんだ」

「…自分でも分かりません。でも初めからスジンさんと久美子さんがそういう関係だと知っていたら、誘ったりなんか…」

「フラれたよ…」

「え?」

「あの日公園で…フラれた。俺が一方的に想ってただけなんだよ」

「そ、そうだったんですか…」

「久美ちゃんは…お前のことしか頭にないの知らないだろ?」

「…え…」

「お前と会う前から、久美ちゃんはお前のことが好きだったんだよ」

「そ、そんな…」

「だから会わせたくなかったのに。あの日お前が店に来たせいで……まぁ後は、受け入れるか受け入れないか、お前の気持ち次第だからな」

そう言うとスジンは部屋を出て行った。


チスンは家に帰り、久美子と初めて会った日からのことを振り返り、考えていた。

(俺のファンだったんだ…そういうこと一言も言わなかった…喜ばせるだけ喜ばせておいて、最後に俺はひどいこと言って…俺は何をしてるんだ…)

22時を過ぎていたが、チスンは久美子の家まで車を走らせた。

久美子の家に着き、チャイムを鳴らすが反応がない。
携帯も番号を消去したので分からない。

この日はロケ地に行く約束をしてた日だったことを思い出した。

(まさか…)

チスンは再び車を走らせ、ロケ地に向かった。車を飛ばして到着すると久美子のことを探し回った。
すると、チスンは立ち止まった。

(久美子さん…)

誰もいないなか、イルミネーションを見ている久美子がいた。
久美子は1人で来ていたのだ。
チスンが近づいていくと、久美子はチスンに気がついた。

「…チスンさん‼︎どうして⁈」

チスンは何も言わず、久美子にキスをした。

(え…チスンさん…)

「何も気づかずにごめん…」 

「え?」

「好きになったみたい…なんだ」

「え…」

「久美子さんのことが好き」

久美子は驚きのあまり言葉が出なかった。

「こういう仕事をしてるから、誰とも付き合う気はなかったけど、初めてこんな気持ちになった。ごめん…気持ちを抑えきれない」

久美子は黙って聞いている。

「大した男じゃないけど、これだけは自信持って言える。隠し事はしないし、悲しませることは絶対にしない…」

「…チスンさん…」

チスンは何かを決意し、深呼吸をした。

「俺と…」

(まさか…)

「俺と付き合って欲しい」

久美子は嬉しさのあまり泣きながら、迷うことなく頷いた。






































しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

年下男子に追いかけられて極甘求婚されています

あさの紅茶
恋愛
◆結婚破棄され憂さ晴らしのために京都一人旅へ出かけた大野なぎさ(25) 「どいつもこいつもイチャイチャしやがって!ムカつくわー!お前ら全員幸せになりやがれ!」 ◆年下幼なじみで今は京都の大学にいる富田潤(20) 「京都案内しようか?今どこ?」 再会した幼なじみである潤は実は子どもの頃からなぎさのことが好きで、このチャンスを逃すまいと猛アプローチをかける。 「俺はもう子供じゃない。俺についてきて、なぎ」 「そんなこと言って、後悔しても知らないよ?」

エモパレ ―感情が見えるぽっちゃりな私が、オジさま副局長を無自覚なまま搦め捕るまで―

久乃亜
恋愛
前世の記憶を持つぽっちゃり看板娘ハルネは、 人の「感情の色」が視える魔眼『エモパレ』と、持ち前の経営手腕で、実家の香房を切り盛りしていた。 そんなある日、とある事件から、 オジさま――第二調査局副局長、通称「鬼のヴァルグレイ」に命を救われ、 ハルネの理想のオジさま像に、一瞬で恋に落ちる。 けれど、彼がハルネに告げたのは、愛の言葉ではなく ――理不尽な『営業停止』の通告だった!? 納得いかないハルネは、自らの足と異能で犯人を追い詰めることを決意する。 冷徹で無表情な彼だが、なぜかハルネに同行し、過保護なまでに手伝ってくれて……? 「人生2週目」のポジティブぽっちゃり娘と、不器用な冷徹最強騎士が織りなす、 お仕事×捜査×じれじれの初恋溺愛ファンタジー! ※ 第1部(1~3章)完結済み。 毎日投稿中

課長のケーキは甘い包囲網

花里 美佐
恋愛
田崎すみれ 二十二歳 料亭の娘だが、自分は料理が全くできない負い目がある。            えくぼの見える笑顔が可愛い、ケーキが大好きな女子。 × 沢島 誠司 三十三歳 洋菓子メーカー人事総務課長。笑わない鬼課長だった。             実は四年前まで商品開発担当パティシエだった。 大好きな洋菓子メーカーに就職したすみれ。 面接官だった彼が上司となった。 しかも、彼は面接に来る前からすみれを知っていた。 彼女のいつも買うケーキは、彼にとって重要な意味を持っていたからだ。 心に傷を持つヒーローとコンプレックス持ちのヒロインの恋(。・ω・。)ノ♡

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-

プリオネ
恋愛
 せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。  ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。  恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

処理中です...