真実【完結】

真凛 桃

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16話 相手の為

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 ホンユがベッドに寝ている久美子を見守っていると、久美子の携帯が鳴った。
 着信相手はチスンからだったが、代わりにホンユが電話に出る。

「もしもし⁈クミ⁈今どこ⁈」

「…もしもし」

「…だ、誰?」

「ホンユだけど」

「何でお前が.クミは⁈一緒なのか⁈」

「今、病院にいる…」

「病院⁈一体何で⁈」


 ホンユから一通りの内容を聞いたチスンは急いで病院に向かった。

 病院に着いたチスンは、真っ先に久美子の元へ駆け寄る。

「クミ‼︎」 

「先生の話だと、ショックで気絶しただけだから大丈夫だって」

 チスンは久美子の袖をめくり、腕を見る。

「傷が深いから痕が残るみたい」

 その言葉を聞いて、チスンの心配は怒りに変わっていた。

「刺した奴は?お前見たんだろ?何で捕まえなかったんだよ」

「捕まえようとしたけど、久美さんが止めたんだ」

「クミが…何で…」

「あの女、多分お前のファンでストーカーだよ」

「…ああ」

「だから…昔のこともあるし、騒ぎにならないようにお前のことを考えて止めたんだろ…」

「…クミ」

「久美さんの職場まで調べてたり、ナイフ持ち歩いてるなんて異常だよ!まず1番に狙われるのは久美さんなんだぞ。お前また同じこと繰り返すのかよ!」

「…わかってる。ホンユ、俺がいるからもう大丈夫だ。今日はありがとう」

「わかった。けどお前が守れないなら俺が守るからな」

 そう言うとホンユは帰って行った。

 チスンは久美子の手を握り、何度も謝った。

 (俺のせいで…ごめん。クミにまで…)

 しばらくすると久美子が目を覚ました。  

「クミ‼︎」

「…チスン…ここは?」

「病院だよ」

「病院?…あ…そっか…」

 久美子は何があったのか思い出した。

「大丈夫?痛くない?」

「…うん」

「クミ…ごめんね」

「…何でチスンが謝るの?」
 
「…俺のせいで…」
 
「チスン!」

「え?」

「帰りたい…」

「帰りたい?わかった。先生に聞いて来るね」

 医者の許可が下り、2人はマンションに帰った。

 チスンは、血が付いた服を脱がせ久美子の着替えを手伝った。

「ありがとう」

「1週間は安静にするようにって。俺、明日からなるべく早く帰るから」

「うん。ありがとう。明日から仕事どうしよう…」

「仕事?仕事は無理だろ。休まないと!」

「そうだよね…店長に連絡しなきゃ」

「それなら、明日の朝俺が仕事に行く前に店に寄って店長に説明しておくよ」

「…ありがとう」

「クミ…ホンユから聞いたけど、本当にごめん。きっと俺のせいだ」

「何言ってるの?チスンは関係ないよ。お店に来たお客様で私が担当したんだけど、仕上がりが気に食わなかったみたい…私もついムキになってしまって言い合いになったの。でもまさかここまでするなんて…本当に色んな人がいるね…ハハ…」

 久美子は、過去のトラウマがあるチスンにまた同じような事件が起こり、責任感が強いチスンを色々と悩ませるのを避けたかった。

 チスンは、自分の為に嘘をついてる久美子を想うと悔しさと情けなさで心が痛かった。

「もう寝るね」

「うん、おやすみ」

「おやすみなさい」

 チスンは眠っている久美子の腕を見ながら色々と考えていた。

 この傷、一生残るかも知れない…
 刺した女に強い怒りを抱いていた。



 翌朝、チスンは仕事に行く前に美容室に寄った。

「チスンさん‼︎お、おはようございます」

「おはようございます」

「クミちゃん、まだ出勤してないですよ」

「はい。それが…昨日…」

 チスンは昨夜の出来事を店長に話した。
 店長はショックを受けていた。

「ひっ、ひどい!!刺した人は捕まったんですか⁈」

「…いいえ」

「そんな…」

「昨日、クミが担当した人分かりますか?」

「はい、分かりますけど…もしかして…」

「初めて来た人がいますよね?」

「はい。ちょっと変わった感じの人でした」

「受付表とかもらえますか?」

「はい、いいですよ!」

 チスンは自力で探すことを決めたのだ。

「それと、店長さんに頼みがあるんですけど…」

「何ですか?」

「クミが仕事に復帰したら、しばらくクミと一緒に帰ってもらえませんか?」

「心配なんですね。全然大丈夫ですよ!わかりました!」

「ありがとうございます。それとクミには僕が受付表をもらったこと言わないで下さい」

「わかりました」


 チスンはそれから1週間、毎日仕事を急いで終わらせ、早く家に帰っていた。

 久美子も仕事に復帰した。この日仕事を終えて帰ろうとすると、店長は慌てて店を閉め一緒に外に出た。

「しばらく事務仕事は家でするから、一緒に帰ろう!」

「はいっ」

 店長は久美子がマンションに入るのを見届けて帰って行った。


「クミ、おかえり!」

「チスン、帰ってたの?もう大丈夫なのに」

「うん…後で話があるから、とりあえず食事にしよう」

 食事を終え、シャワーを浴びた2人はソファーでのんびり過ごす。

「何?話って…その前に私…1週間我慢してたんだけど…」

「何を?」

「ビール飲みたい‼︎」

「アハハ。いいよっ」

 チスンはビールを開けて久美子に渡す。

「くぅーっっ、美味しーっ」

 美味しそうにビールを飲む久美子を見て、チスンは安心する。

「ところで話って何?」

「あ、それが…俺明日から忙しくなるから。もしかしたら帰って来られない日が多くなるかも知れない…」

「えーっ、そんな…」

「ドラマ撮影も後半に入るから、間に合わせないといけないし、他にも仕事が入ってて。徹夜状態になると思うから、事務所で寝泊まりすることになりそうなんだ…」
 
「…そっかぁ。いつ頃落ち着くの?」

「まだ何とも言えないけど、なるべく長引かないように頑張るよ。時間できる日は会いに来るから」

「…わかった。だけど寂しいな…」

「ごめんね。それとクミにお願いがあるんだけど」

「え、何?」

「仕事が終わったら真っ直ぐ帰って欲しい。店長と飲む時は、家で飲んでくれないかなぁ…」

久美子はチスンが心配してくれているのがよく分かった。

「わかった…そうする」

「ありがとう」

久美子は2本目のビールを飲み始めた。

「チスンは飲まないの?」

「俺は…いいや」

「珍しい~」

「あのー…」

「どうしたの?改まって…」

「クミは1週間ビールを我慢してたみたいだけど…」

「うん…」

「俺も1週間我慢してたことがあるん…ですが」

「何?」


チスンは久美子をお姫様抱っこして、ベッドへ連れて行った。











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